小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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「ピンポーン」と、この場に合わない音がした。
「はい、どちら様ですか?」
いかにも怠そうな声がして、小林はイラっとした。
「警察の者です! 早急に鍵を開けていただきたい!」
「け、警察!? は、はい! 分かりました!」
教師の声の後、すぐに「ウィーン」と音を立ててドアのロックが解除された。
小林は、そのドアを勢いよく開け、美奈のクラス、三年二組へと向かった。

「ガラララララ」
教室のドアが勢いよく開いた。
愛里は何事かと、ドアの方を見た。
「小林さんじゃないですか!」
翔大も不思議に思っているようだ。
小林は周りを見回すと、近くの生徒に
「美奈ちゃんはいるかい?」
と訊いた。
その生徒は
「具合が悪くて帰りましたよ」
と言った。
「よりによってここに居ないのか・・・」
小林は「失礼しました」と言って教室を出ていこうとした。
愛里はそんな小林に「待ってください!」と呼び止めた。
「何だい?」
「美奈に何があったんですか?」
「君達には非常に言いにくいことだが、美奈ちゃんが聖弥君を刺したんだ」
小林はそう言うと、部下に「行くぞ!」と告げ、走り去っていった。
しばらく教室は「嘘だろ・・・」「そんな・・・まさか・・・」などの声が飛び交っていた。

聖弥を殺したい。
聖弥が憎い。
美奈の理性は完全に失われていた。
無意識に「アハハハ」と声に出してしまっている。
もうすぐで聖弥を殺せる。
ついに病室の前まで来た。
ドアを開ける。
驚いた表情をした聖弥がこっちを見た。
呑気なものだ。
これから死ぬというのに覚悟もしてないなんて。
「美奈・・・その手に持っている物って・・・包丁だよな・・・?」
「そうだよ」
美奈はニイーっと笑った。
聖弥の顔が恐怖に満ちていく。
恐れろ。
怖がれ。
もっともっと恐怖を感じろ。
「どうしちまったんだ・・・美奈・・・」
「あんたが悪いのよ・・・」
「は?」
「分からないでしょうね。あなたには。そりゃそうか。そうだよね。自覚してないもんね。とりあえず・・・死んでもらうよ」
美奈は動けない聖弥に向かって包丁を振り上げた。

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