小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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それから、数日が経ち、美奈の裁判が行われた。
結果は、刑法第二百三条により、殺人未遂罪となったが、殺人を思い留まったことと、聖弥の「美奈は完全に改心しました」という証言により、刑罰は免除となった。
だが、傷を負わせたことは事実であることから、治療費は美奈が全額負担することとなった。
一方、聖弥の父は釈放され、自宅へ戻ることとなった。
こうして、この事件は幕を閉じた。

それから、更に数日後。
聖弥の病室に、小林がやってきた。
「あ、小林さん。お久しぶりです」
「お久しぶり。聖弥君、今日は君の保護の件について説明しに来たんだが、少し時間をもらえるかい?」
「ええ。いいですよ」
「私が児童相談所などで色々話し合った結果、君の保護が決まった。児童保護施設か、親戚の家に預けられることになるんだが、聖弥君はその二択だとすると、どちらを選ぶ?」
「・・・僕に親戚はいません。だから、自然と児童保護施設になるかと・・・」
聖弥が残念そうにそう言った直後、ドアの方から「ちょっと待って!!」という声がした。
聖弥と小林がその方を見ると、愛里、美奈、翔大の三人がいた。
「私の家で保護するのはどうですか?学校も同じところに通えて便利ですし・・・」
愛里の必死な姿に聖弥は苦笑しながら
「女の子の家はちょっとね・・・」
と言った。
「ええーーーーー!?」
愛里はとてもがっかりそうだった。
「んじゃ、俺の家でどうですか?これで一年前の仮が返せるってもんだぜ!」
「一年前の仮?」
「忘れたのかよ・・・。イジメから救ってくれたじゃん」
「いや・・・。あれは当たり前のことで・・・」
「いいの!」
「でも、翔大。まだ友達の家で保護出来るか決まったわけじゃないよ」
聖弥がまたも残念そうに言った。
「いや、いいと思うよ。親戚がいない場合、仕方ないんじゃない? 翔大君の保護者が認めてくれれば、大丈夫だと思うよ」
小林はきっぱりとそう言った。
「え!? 本当ですか?」
「うん」
「よっしゃあ!! じゃ、そうしようぜ!! うちの親も聖弥のおかげで俺と仲直りしたようなもんだから、恩を返さないとは言わせないぜ!」
「ありがとう、翔大」
「あーあ。私の家で泊まってくれないのかー」
愛里が笑いながらそう言った。
「私の家でもいいよ」
美奈も笑っていた。
「いや、遠慮しとくぜ・・・」
病室に笑い声が響いた。
四人で笑い合うことは本当に久しぶりなことだった。

こうして、聖弥は翔大の家に住み込むことになり、家族からのストレスは完全に消えた。
数週間後、聖弥の傷はすっかり治り、退院した。
そんな聖弥は、今、学校へ行く準備が終わったところだった。
「翔大、学校行こうぜ」
「おう! それにしても、聖弥にとっては久しぶりの学校だなぁ」
「そうだな。じゃ、行ってきます!」
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい! 気をつけてね!」
聖弥にとっては、「行ってきます」の返事が返ってくるだけでも嬉しかった。
「翔大の母さんはいいねー。行ってらっしゃいって言ってくれるなんてさ」
「そうか? 当たり前じゃね? 聞き飽きたけど」
「俺の家族は言ってくれなかったよ」
「マジか・・・。まあ、これからはそんなことはないさ!」
「そうだな!」
二人の会話ははずみ、いつの間にか学校に着いていた。
聖弥は教室の扉を開けた。
「おはよう、聖弥!」
「おはよう、愛里」
いつもの挨拶が飛び交った。
「いやー、本当に恋人みたいだな!」
「翔大!!!」
「ごめーん」
「いいぞ、翔大、言ってやれー!」
「美奈!!!」
いつもの笑い声が響いた。
聖弥はそんな光景を見て「俺って幸せだな」と思ったのだった。




一章〜Seiya’s story〜 END

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