小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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二章〜Mina’s story〜




あの男のことを思い出すと、今でも憎い。
聖弥に心を救われたとはいえ、トラウマが消えるわけではない。
ここ、熱海市の中学校に来た理由も、あの男から逃げるためだ。
ここに転校してくる前。
私は、長野県大町市の中学校に通っていた。
・・・三年前の入学式の時から、私は既にあの男のターゲットとなっていたのだ。
なぜ運命はあの男と会うようになっていたのだろう。
あの男と会わなければ、私はもっと人生を楽しんでいたはずなのに・・・。

「美奈ーー!!!」
美奈は自分を呼ぶ声がしたので、その声が聞こえる方へ首を向けた。
見ると、小学一年生の頃からずっとクラスが一緒だった友達、笹村瑞穂(ささむらみずほ)が手を振りながらこちらに向かって走ってきているのが分かった。
「ミッズー!!」
瑞穂は小学校の頃から「ミッズー」というあだ名で呼ばれており、美奈も彼女のことをそう呼んでいる。
美奈はそんな瑞穂に手を振り返した。
「今日は入学式だね!美奈と一緒のクラスになれたらいいなー」
「ずっと一緒だったからねー。なれたら運命みたいな?」
「いいねー」
「いいの!?」
「いいじゃん! 居ないよりはよっぽどマシだよ」
「何その私じゃなくてもいい的な発言」
「いやいやいやいや、そんなことないって!」
「そう?」
「うん」
「あ! ミッズー、学校見えてきたよ」
「本当だ!」
二人は学校へ向かって少し走った。
「あ! 美奈、あそこ見て!」
「ん?」
美奈は瑞穂が指差す方向を見た。
そこには、入学者がどこのクラスか書かれてある紙が柱に貼ってあった。
二人は早速自分達がどこのクラスか確認した。
「やった!! 美奈と一緒だー!」
「運命か・・・」
「なにガッカリしてんの?」
「いや・・・別に・・・」
「じゃ、教室行こっか」
「そうだね」
二人は教室へと向かった。

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