小説『ファミリー』
作者:zebiaps(ZEBIAPS小説)

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その頃、翔大は親と喧嘩していた。
「翔大! あれほど聖弥君と遊んじゃいけないって言ったのに何で遊んでるの!」
「何で駄目なんだよ! 母さん!」
「ああいう子と遊んだら不幸が家にうつるじゃないの!」
「不幸なんかうつんないよ! 友達を助けたり、励ましたり、一緒に遊んで笑い合ったりすることの何がいけないんだ!!」
そう言って翔大は家を飛び出した。
「待ちなさい! 翔大!」
そんな母親の声は翔大には届かなかった。
翔大が家を飛び出した直後、家の電話が鳴った。
「はい、尾崎です」
翔大の母はすぐに電話をとった。
「木村ですが、翔大君のお母様ですね?」
「はい、そうです」
電話の相手は聖弥の父だった。
「計画は順調に進んでいますか?」
「ええ。ですが一応訊いておきますけど、聖弥君から友達を引き離して何が面白いんですか?」
「罰ですよ。あの子は悪い子です。それぐらいしてやらないと」
「そうですか・・・。私にはあの子が悪い子には見えませんけど」
「フッフッフ。他人に見せる顔とは随分違うものです」
「そうですか・・・」
「では、計画を続行してください」
彼がそう言った直後、電話が切れた。
『・・・ごめんね、翔大。私だってこんなことしたくないのよ』
翔大の母、尾崎はため息をつくと、美奈の母、大沢に電話をかけた。
大沢はすぐに出た。
「もしもし、大沢です」
「あ、尾崎ですけど・・・」
「あ! 尾崎さん! どうしたの?」
「聞いた? 聖弥君の話」
「え? なになに?」
「今日、自分の父親に包丁を向けたらしいわよ。あの子もストレス抱えてるからね。しばらく近づかないほうがいいのかもね」
「あら、本当・・・。美奈にも近づかないでって脅しかけとくべきね・・・」
「聖弥君にはかわいそうだけど、仕方ないわよね」
「そうね・・・」
「じゃあ私も翔大に伝えてくるからまたね!」
「はーい」
実際は聖弥が包丁を父に向けたという話は尾崎が作ったデマである。
尾崎は聖弥の父、木村の言うことに従わなければならなかった。
なぜなら、弱味を握られていたからだ。
尾崎はつい一週間前まで浮気をしていた。
その浮気の相手とホテルに入るところを写真に撮られてしまったのだ。
木村はその弱味を握るために探偵を雇っていた。ある計画を実行するために。
尾崎は写真を撮られてから浮気はやめたが、その写真を公開されることが恐ろしく、木村に従い続けた。
『翔大、聖弥君、本当にごめんね・・・』
尾崎は心の中で謝ることしか出来なかった。

尾崎が罪悪感に包まれている頃、聖弥は茶碗洗いを終え、トイレ掃除、風呂掃除と、次々と仕事をこなしていた。
聖弥以外の家族の人は皆掃除をしないので、聖弥が掃除をしないと汚くなってしまうのだ。
更に、聖弥以外は家事もしない。
だから、聖弥が寝る時間はかなり遅くだった。
茶碗洗いや掃除、洗濯を終え、風呂に入るのが一時過ぎ。
それから就寝準備をして、母の介助をする。
聖弥の母は夜型なので、夜中にご飯を食べ始め、酒を飲み、薬を飲んでやっと就寝するので、聖弥が寝るのは三時過ぎになる。
聖弥が授業中に寝るのはこのせいで、仕方ないことだったのだ。
掃除、介助と一日の仕事を全て終えた聖弥は、今日(正確には今日ではないのだが)は四時過ぎに寝ることとなった。

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