小説『華ヤカ………トハ程遠イ、我ガ一生』
作者:ライアード()

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第一話 裏町


「オギャア!オギャア!オギャア!」

アタシの腕の中には、産まれたばかりのアタシの息子が泣いている。元気に泣く息子をみて自然と笑みがこぼれていることを実感している。去年の夏にこの子を身籠ったことをこの子の父親に告げると、認知するかと言われアタシの前から消えた………その時に決めたんだこの子と二人で生きていこうと

「オギャア!オギャア!オギャア!」

腕の中で泣き続ける息子の頭をアタシは撫でながら話しかけた。

「大丈夫………あんたはアタシが守るからね………だから強い子に育ってね”孝輔(コウスケ)”」



〜七年後〜


色んな店が立ち並ぶ町中を俺は勢い良く走っていた………それだけならそこら辺の子供と一緒だが俺は違う何故なら………

「待てこのクソガキ!!」

「待てって言われて待つかバ〜カ!!」

「んだと〜!!!」

そう俺は今まさに、厳つい顔をしたチンピラたちと追いかけっこの真っ最中だ………てか、七歳の子供を本気で追いかけるのはどうかと思うけどな………しかも、町の奴等は誰一人止めようとしないし!!!………まあ、この町なら当然か………………てか!!あのチンピラどもいい加減しつこいんですけど!!そろそろやっちまいますか!!

俺が立ち止まるとチンピラどもも立ち止まり、肩で息を整えている………えーと、ひ〜ふ〜み〜よ〜………四人か楽勝だなと思っていると、息が整ったのかリーダー格らしき男が俺に話しかけてきた。

「ようやく観念したかクソガキ!!今なら土下座だけで許してやるよ」

「んにゃあ、あんたらしつこいからそろそろブッ飛ばそうと思って………てか、あんたらみたいな小物に下げる頭は持ち合わしてないんでな………逆にあんたら土下座する?そうすりゃ許してやっても良いぜ!!」

俺の言葉で顔を真っ赤にしたリーダーは子分A、B、Cのチンピラに「殺れ!!」と命じると子分どもが向かってきた。

子分A一人が突出して殴ってきたので俺は、身長の低さを理由して懐に飛び込むと子分Aの急所に右ストレートを叩き込んだ。

「ふげん!!」

変な悲鳴をあげて体をくの字に曲げると、俺は子分Aの顔を踏みつけ後ろにいたB、Cに向かってジャンプし子分Bの頭に回し蹴りをぶちこむと「ヒデブッ!!」といいながら吹き飛ぶのを確認しながら着地すると、信じられないと言った顔をしている子分Cの鳩尾に思いっきり肘鉄をお見舞いしてやった

「〜〜〜!!?!」

声にならない悲鳴をあげながら崩れ落ちる子分Cにもう一発入れようとすると、チンピラのリーダーが懐から短刀を出して、振り回しながら俺の後ろに迫っていたが………

ガシッ!!

「ッ!!なっ!!」

「この………卑怯者……………がっ!!」

チンピラが降り下ろした腕を掴むと一本背負いの要領で投げ、地面に叩きつけると同時に右膝をリーダーの顔面に落とした。

「「「あ、兄貴ィィ!!」」」

俺は未だうずくまっている子分たちに向かってリーダーを蹴り飛ばした。

「オラ!!その伸びてる奴連れてどっか行きな!それから!!俺はクソガキじゃない!!俺は舘村孝輔(タテムラ コウスケ)この裏町の住人だ!!」

裏町、それは表の世界で生きてはいけない者たちの住まう町………少年、舘村孝輔もそんな裏町の住人だ










新たな世界、新たな名前、新たな場所で生きる孝輔………だが悲劇という名の運命が忍び寄っていることを彼はまだ知らない………


次回 暗躍する純白


この世に真っ白な人間など一人もいないのだ………………

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