小説『IS インフィニット・ストラトス 〜超常の力を持つ者たち〜』
作者:黒翼()

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Episode16『第一位VS第三位の終』



ガンッ!
ダンッ!
ドンッ!

数多の衝突音が、闘技場内で響き渡る。
だが、その衝突音の発信源である終焉とグランの動きを完全に(・・・)捉えている者は(・・・・・・・・)ほとんどいない(・・・・・・・)

「ミスラ、二人の動きを見切れるかい?」

「全然。 風の流れは感じることが出来るけど、動きまでは見えないわ。 眼で追えるんだけどね」

「僕もだよ。 振動ならわかるんだけどね……。 吉宗君は見えるかい?」

第二位のシュレイド、第四位のミスラでさえも、二人の動きを何とか追うことは出来ているが、追うことしか出来ていない。
この中で、二人の動きを完全に捉えているのは、一部の視覚強化系能力者くらいしかいない。

「俺はこの眼のおかげで見えています」

吉宗も、その一人である。
彼の能力の一つ『永遠の万華鏡写輪眼』は、催眠眼などの瞳術だけでなく、ずば抜けた動体視力を持つ。
それは、下位形態の『写輪眼』も同様で、吉宗の瞳は今、勾玉模様が浮かび、赤く光っている。
そもそも、『写輪眼』自体が強力な瞳術で、『万華鏡写輪眼』は『写輪眼』の強化版だ。
ただ、本来の『万華鏡写輪眼』は、その強力な瞳術故に、酷使すればするほど光を失い、最後には完全に失明する。
そのデメリットをなくしたのが『永遠の万華鏡写輪眼』で、どれだけ瞳術を使っても光を失うことはない。
この眼が、吉宗が第五位の座に就かせている大きな要因の一つにもなっているのだ。
だが、この眼を持っていながらも、それを押しのけて上位の座に就くミスラ、シュレイド、グランは相当異常である。
まあ、これには吉宗が『永遠の万華鏡写輪眼』を使いこなせていないといのもあるのだが。

「終焉もグランさんも、相当楽しんでますよ。 笑いながら戦ってますもん」

「流石だね、その眼は」

軽く音速を(・・・・・)超えている(・・・・・)二人の表情を見えるなんて、やっぱり規格外よね」

「この眼を使っても勝てない二人に言われて、説得力ないんですけど……」

今激戦を繰り広げている二人は、音速を超えた、規格外な速度で戦っている。
そして、それを完全に捉える規格外な瞳を持つ吉宗も、一度も勝てたことのないというのは、十分規格外である。

「にしても、この戦い、どれだけ続くのだろう?」

「さあ? あの二人なら、あの速度で後一時間くらい戦いそうよね」

「というより、闘技場がすでに滅茶苦茶なんですけど……」

その戦闘の傷跡は、未だ戦闘が開始して五分も経っていないのに、盛大に刻まれていた。
大地は踏み込みで抉れ、ソニックブームでボロボロになっていた。
それを起こした原因は、今も被害を増やしながら、壮絶な戦闘を繰り広げている。

「まあ、最後には終焉君が直すだろうから問題ないだろう」

「そうね」

「そうですね」




 ☆




「らぁっ!」

「はっ!」

音速を超えた速度で戦っているにもかかわらず、ソニックブームでついた傷はなかった。
あるのは、互いに攻撃を受けて出来た傷だけだ。
二人とも、音速を超えても問題なく動けるだけの、強固さがあるからこそ、この戦闘が成り立っているのだ。

『グランさん!』

『何だ?!』

衝突を繰り返しながら、二人は会話をする。
ただ、音速を超えているので口頭ではなく、終焉の能力を応用した思念会話なのだが。

『これ以上続けても、ジリ貧になるだけです。 だから、全力の一撃で、終わらせませんか?』

終焉の提案は、次の一撃に全てをかけるという、実にシンプルなものだった。

『いいぜ。 このままじゃあ勝てねぇからな』

グランは、自分の体の限界で能力を使っているが、終焉はグランに合わせて(・・・・・・・・)身体強化をしている(・・・・・・・・・)
それはつまり、終焉にはまだ余力があるということだ。
それに、終焉は速度上昇させる以外に、原石の力を使っていない。
これ以上戦い続ければ、先にグランの限界が来て、終焉に敗北するのは眼に見えている。
だから、グランは承諾した。
一撃ならば、自分の体の限界(・・・・・・・)を無視して(・・・・・)能力を使えるからだ(・・・・・・・・・)

『では、そうしましょうか』

終焉とグランは、闘技場の両端で止まった。
その行動に疑問を持った観客たちだが、次の瞬間、二人の意図を悟った。

「オーバーブースト!!」

グランが叫び、グランから発せられる威圧感が、さらに上がる。
それに反応するように、グランの周囲に落ちていたものは、グランを中心に吹き飛ばされた。

「ふぅ……」

終焉は、練り上げる魔力量を上げ、さらなる身体強化をする。
そして、さらに自身の速度を上げる準備をする。

『『『………………』』』

再び、闘技場内が静寂に包まれる。
この一撃で全てが決まるため、互いに飛び出すタイミングを見計らう。

ドンッ!!

偶然か必然か、二人が飛び出したのは同時だった。
初速から音速―――マッハ1を超え、そして、マッハ2へと―――音速の2倍へと到達した。

ダァンッ!!!

一直線に跳んだ二人は、音を置き去りにして衝突した。
その衝突に敗北したのは、グランだった。
グランは互いの拳が衝突すると、終焉の力に押し負けて、音速で吹き飛んだ。
遅れて来た轟音と共に、グランは壁に叩きつけられた。

「ふぅ……」

終焉は強化と能力を解除すると、一息ついた。
それと同時に、

『『『うおおおおおおおおおおっ!!!』』』

大歓声が、闘技場に、学園中に響き渡った。


-17-
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