Episode18『学園最強VS幼き貝王』
「さて、やろうか」
「ああ」
闘技場で、終焉と吉宗が向かい合っていた。
観客たちは、これから始まるド派手な戦闘に、心躍らせて待っていた。
なぜなら、終焉は言わずもがな、数多の能力を持っていることもあり、そしてその強さもあり、相手に合わせた戦闘を魅せる。
そして、吉宗は、すでにマフィアに伝わるリングと匣を扱えており、その炎の質や、写輪眼もあり、戦闘は派手になりがちなのだ。
だから観客たちは、この二人の対戦を楽しみにしていたりもしている。
「本気で行かせてもらうぞ」
「そうでなければつまらない。 それに、お前が本気を出さなければ、俺に傷一つつけれないのは、わかっているだろう?」
「それもそうだな」
二人は、すでに戦闘準備を終えており、いつ戦闘が始まってもおかしくない状況にある。
吉宗はランクAの大空のリングを嵌め、超死ぬ気モードになっており、額からは若干赤みがかったオレンジ色の炎が燈っており、武器はグローブを装備して、さらに写輪眼も発動した状態でいる。
終焉は左手には明らかに体にあっていない長刀『聖天絶刀』が握られていた。
「どこからでもかかって来い」
終焉は使い辛いはずの長刀を持っているのに、一切の隙もなく、吉宗にそう言い放った。
「なら、行かせてもらう!」
両手のグローブにオレンジ色の炎が燈った瞬間、吉宗は超高速で動いた。
今はまだ発展途上なため、グランほどの速度は出せていないが、それでも十分速い速度で飛ぶ。
だが、終焉の瞳はその動きを意図も簡単に捉える。
―――“七閃”
キュィィィンッ!
「くっ!」
終焉は、『一瞬で七度殺せる斬撃』というが、実際は七本の鋼糸を操って斬撃を繰り出すという、どの道どちらの意味でもとんでもない技“七閃”を放ち、吉宗の動きを阻む。
吉宗は写輪眼により、その鋼糸を捉えており、その鋼糸を炎を纏った手刀で焼き切ろうとして、切ることができなかった。
「なっ!?」
驚いた吉宗だったが、瞬時に純粋な憤怒の炎へと切り替え、鋼糸を纏めて吹き飛ばした。
(憤怒の炎の性質を持った炎で焼き切れないか……なんて硬さだ……。 しかも、憤怒の炎の光球を受けてもなお、切れていない……終焉の能力で強度が増しているか……?)
吉宗は、高速移動を続けたまま、あの鋼糸について推測を立てる。
「お前の炎はその程度か? ならば、興ざめだな」
「馬鹿言うな。 あれはまだまだ序の口だ」
「そうか。 なら、遠慮なんてせず、本気で来い!」
「っ」
膨れ上がる終焉の殺気や闘気とも言える雰囲気に、一瞬気圧された吉宗は、写輪眼を次の状態へ、万華鏡写輪眼を開眼した。
「行くぞ!」
―――“天照”!
終焉は絶え間なく高速で動き回り、吉宗の“天照”に当たらないように、避け続ける。
終焉がいた場所には、次々と黒い炎が発生する。
「逃がさない!」
―――“炎遁・加具土命”!
発生していた黒い炎が、終焉を追うように、囲い込むように、形状を変化させていく。
「そこまで万華鏡をものにしていたか」
「まだまだだけどな」
吉宗は、万華鏡写輪眼を完全に扱えているわけではない。
故に、未だに“須佐能乎”を使うことができない。
少し前までは、炎遁すら使えていなかったのだから、進歩はしているのだ。
「ならば、俺もある程度本気を見せようか」
―――“十閃”
キュィィィィィンッ!!
十本もの鋼糸が、一斉に吉宗へと襲い掛かる。
「っ!?」
(十本だと!? 七本でもやばかったのに、三本も増えたらやりきれねぇ! どうする!? どうすれば抜けれる!?)
吉宗は、まるで視界に映るものがスローモーションとなり、過去最速の脳回転速度を叩き出し、打開策を考える。
だが、策が出ないまま、鋼糸は刻一刻と接近する。
そして、吉宗はほぼ無意識のうちに両手で銃を抜き放ち、推進力として発射する。
同時に“天照”で鋼糸を一本燃やし、“炎遁・加具土命”で他の鋼糸も燃やそうと、形状変化させる。
(これならいける!)
鋼糸による高速斬撃から抜けれると、そう希望が見出せた瞬間、鋼糸が曲がった。
「な、んだと……!?」
「お前がこれを抜けれるかどうかはわからなかったが、もしも抜けられたときの保険を、俺がかけていないとでも思ったのか?」
明らかにありえない動きをした鋼糸に、吉宗の思考は一瞬停止した。
そして、その停止が命取りとなった。
―――“雷伝”
鋼糸に高圧電流が流れ、鋼糸に触れた吉宗を容赦なく襲う。
「あああああああああっ!!!」
吉宗は悲鳴を上げ、痺れてまともに動けない中でも、鋼糸の拘束から抜けようと足掻く。
「今回も、俺の勝ちだ」
終焉は、未だに足掻く吉宗にそう言うと、鋼糸を新たに放ち、吉宗の意識を刈った。
吉宗は超死ぬ気モードが解除され、額に燈る炎も消える。
『『『うおおおおおおおっ!!!』』』
戦闘の終了に、グランのときと同様に、観客たちが沸きあがる。
終焉は電流を流すのをやめ、鋼糸による拘束も解除すると、未だに燃えている“天照”の黒炎をこの世から消滅させる。
“天照”の処理が終わると、終焉は吉宗の治療を始めた。
いくら吉宗自身、転生特典で肉体的にも強化がされているとはいえ、万華鏡写輪眼の瞳力である“天照”と“炎遁・加具土命”を連発して体力を使い、鋼糸による切り傷、“雷伝”による肉体の損傷を放っておけるわけがなかったのだ。
「お前はよくやったよ。 “十閃”を抜けれるのは、まだ先だと思っていたんだけどな。 まさか、初見で抜けられるとはな。 流石はボンゴレファミリー十一代目筆頭だな」
終焉は、気を失っている吉宗に、そう褒め称えたのだった。