小説『IS インフィニット・ストラトス 〜超常の力を持つ者たち〜』
作者:黒翼()

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Episode19『終焉VS明久&麗奈』



「さて、次は明久と麗奈だ。 時間も限られている。 すぐに始めるぞ。 まとめて掛かって来い」

吉宗を戦闘エリアから観戦エリアに移動させると、終焉は休まずに麗奈と明久と向かい合った。

「二人とも、作戦会議はいるか?」

「いや、大丈夫だよ」

「すでに話し合っていますし、そもそもお兄様に私たち程度の作戦など、無意味です」

「そうか。 ならば、始めよう。 合図はいるか?」

そう尋ねるのは、相手がグランや吉宗と比べると、まだまだヒヨッコな二人だからだ。

「いや、いらないよ。 僕たちだって、成長してるんだ」

「まあ、グランさんや吉宗さんたちとは違い、私たちは二人でやっと一人前ですけどね」

明久は腕輪を、麗奈はリボンを外し、互いに最大出力での能力の行使を可能にしていた。
二人にはまだ武器はないので、素手と能力だけの戦闘となる。
終焉は二人に合わせ、絶刀は使わない。
もし使うようならば、過剰戦力過ぎるのだ。
元より馬鹿げた力を持つ終焉が、最高の刀である聖天絶刀を振るうようならば、勝てるものなどいないのだ。
ちなみに、今回の戦闘で終焉が使う能力は、グランとの戦闘でも使った『己の速度を上昇させる程度の能力』―――『無制限加速(アンリミテッド・ソニック)』だけだ。
後は、魔力で若干身体強化を掛ける程度だ。

「さて、いつでも、どこからでも掛かって来い」

「そのつもりだよ!」

明久がそう言うと同時に、白っぽい黄色の光に包まれ、超高速で動き出した。
その速度は、吉宗の飛行速度を明らかに超えていた。

「はあっ!」

「甘い」

速度の乗った明久の攻撃は、あっさりと終焉に受け流されていた。

「速度は上がったようだが、それではまだ俺に攻撃を当てることは出来んぞ。 その程度の速度なら、グランさんにも及ばない。 『光』を扱うお前が、その程度の速度しか出せないわけがない」

「わかってるけど、今の僕の体だと、これが限界なんだよ! これ以上は、僕自身の速度で体がもたないんだよ! 僕はシエンや吉宗ほど、体が丈夫なわけじゃないんだから!」

明久は終焉と同い年で、現在七歳だ。
それで吉宗の速度を超えているということは、十分異常だ。
流石は『光』を操るだけはある。
もっとも、まだまだ未熟なのだが。
叫びながらも、攻撃の手を一切緩めない明久。
だが、それでも一度たりとも終焉にダメージを与えれていない。

「チッ。 流石のコンビネーションだな……!」

「それは光栄だね!」

ちなみに、麗奈は後方から炎弾を絶え間なく放ち続けている。
明久に出来た隙を補うように、終焉の死角を狙うように、次々に炎弾が飛び交っている。
異常なのは、超速で動き続ける明久に誤射がないということだ。
麗奈にそんな芸当が出来るのは、決して麗奈が明久の動きを完全に捉えているからではない。
麗奈が明久の動きを(・・・・・・・・・)完璧に予測しているからだ(・・・・・・・・・・・・)
それこそ未来予知と言わんばかりの制度の予測で、明久の行動を完全に把握している。
なぜ麗奈が明久の動きを完璧に把握できているのかというと、明久のことが好きだからだ。
明久のことが好きだから、明久の行動が読めてしまうほどに、愛しているのだ。
ちなみに、そのことに終焉は気づいている。
さらにちなみに、そのことに明久は気づいていない。

「“光の弾丸(ライト・ショット)”!」

明久の両手から、光の弾丸が放たれる。
その速度は、明久の移動速度をも遥かに上回り、グランをも越える。
だが、終焉はその攻撃をも避ける。
明久の光の弾丸と、麗奈の炎の弾丸を避ける終焉のその動きは、さながら舞のようだった。
だが、避け続けれているのは、能力があってこそだ。
無制限加速(アンリミテッド・ソニック)』がなければ、終焉の馬鹿げた身体能力をもってしても、完全に避けきれないのだ。

「能力を使えるようになってきたな、二人とも」

「おかげさまでね!」

「ですが、まだまだこんなものではありません!」

絶え間なく飛び交う光と炎の弾丸のうち、明久の扱う光の弾丸が二秒ほど途切れた。

「ふぅ……“光の砲弾(ライト・シェル)”!」

先ほどの弾丸よりも明らかに大きい光の玉が、高速で終焉へと襲う。
速度は若干遅くなったが、それでも大きくなったことで表面積が大きくなり、攻撃範囲が広くなり、威力も上がっている。
もっとも、当たらなければ意味はない。
終焉はふと、炎の弾丸の数が減っているのを気づいた。
少しずつだが、数が減っているのだ。
終焉は麗奈のほうをちらりと見ると、麗奈が両手に巨大な炎の塊を作っているのが見えた。

「“緋色の炎塊(ヒイロノエンカイ)”!」

その炎塊の直径は、麗奈の体の2.5倍ほどはあった。
それを、上空から叩きつけたのだ。
明久はすでに安全圏に移動しており、最初からそのつもりだったのだろうということが窺える。
終焉に笑みが零れると、終焉は落ちてくる炎塊に向けて、思いっきり右の拳をぶつけた。

「はあっ!!」

魔術で強化された肉体にはその炎は通用せず、麗奈渾身の炎塊は消し飛ばされた。

「おおおおおおおおっ!!!」

消し飛ばされた炎塊の後ろから、明久が突っ込んでくる。
明久の右腕には光が集中しており、これを最後の一撃にするのだろう。

「二人とも、本当に強くなったな」

終焉は二人の成長に再び笑みを零し、突撃してくる明久の攻撃を紙一重で避け、左足による足刀を入れるのだった。
明久はそれをノーガードで腹部に直撃し、盛大に吹き飛ばされた。

「明久さん!」

「麗奈、ギブアップでいいか?」

「……はい」

明久を倒したので、そう麗奈に尋ねる終焉。
麗奈はそれに素直に応じていた。
目的は果たせたのだろう。

「っと、明久に治療しないとな」

明久自身の速度に、カウンターで入れられた終焉の蹴りの威力もあり、明久に相当なダメージがあるのは容易に想像できる。
そのため、終焉は本日三度目となる治療を始めるのだった。
終焉は治療をしながら、心配そうに明久を見つめる麗奈に声を掛けた。

「麗奈、あれがお前の試したいことか?」

「はい。 私の炎を大きな塊にして、どれほどの威力があるのかと思いまして」

「あれ自体の威力はそれなりに高い。 だが、あのエネルギーを圧縮できれば、もっといいと思うぞ」

あれだけの塊を圧縮できれば、その分威力は高くなる。
それれに、速度も出せるから、よりいい技になる。

「そうですね。 小型のほうが速度も出せますしね。 頑張ります」

「ああ、頑張れ。 それと、技名を言わなくても出せるようにしたほうがいい」

「わかってますよ。 ただ、まだまだ未熟ですから、そうはいかないんです」

まだ子供の麗奈に、高度な演算は難しい。
技名を発することで、演算を簡易化させているのだ。

「まあ、それは明久にも言えることだけどな」

「……わ、わかってるよ……」

眼を覚ました明久は、ダメージが抜け切っていないのか、声が小さかった。

「……僕の能力って、強すぎる所為か……演算が難しいんだよ……あれでも、頑張ったんだよ……」

「まあ、光を操るなんて、俺や吉宗を除けば十分規格外な能力だからな。 子供の体ではまだ荷が思いか。 まあ、あれだけ使いこなせていれば、上等だと思うぞ」

「ありがと、シエン……」

「お前はもう休め。 あれだけ能力を使ったんだ。 それに、俺の攻撃の直撃を受けたんだ。 休んでおけ」

「う、うん、そうさせてもらうよ……」

「麗奈、明久についていてやれ」

「「えっ!?」」

終焉の提案に、二人揃って素っ頓狂な声を上げた。

「何だ、何か用事でもあったか?」

「い、いえ! さ、行きましょう明久さん!」

「え、あ、ああ、うん」

麗奈の勢いにされるがままに、立たされた。

「部屋までは俺が送ろう。 じゃあ、ゆっくり休めよ」

その直後、麗奈と明久は終焉による瞬間移動(テレポート)で闘技場から姿を消した。

「さて、観客諸君! 本来の目的を再開させようか!」

終焉は、当初の目的の通り、能力向上のために特訓を再開させた。


-20-
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