小説『IS インフィニット・ストラトス 〜超常の力を持つ者たち〜』
作者:黒翼()

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Episode21『束の懸念』



会談が終わり、その後キャーリサや騎士団長(ナイトリーダー)、ロベルトや綱吉や隼人と話した後、終焉と束は学園へと戻ってきていた。
臨也はまだ、会談場にて、ISの運用について話し合っている。
護衛であるはずの終焉が戻ってきたのは、束を学園に帰すためだ。
臨也の護衛は、臨也側である綱吉たちがしてくれるということなので、安心して一緒に戻ってきたのだ。
もっとも、億が一にもないだろうが、保険はかけてあるのだが。

「……ごめんなさい、終焉君」

束は戻ってくるやいなや、突然謝った。

「何で貴女が謝るんですか、束さん。 貴女が謝るようなことはしていませんよ」

「私、能力者があんな大変なものを背負ってるなんて知らなかった……危険なのに、貴方たちに能力使わせちゃってたんだね、私は……」

「ああ、そのことですか。 気にしないでください」

束の謝罪の意味に気づいた終焉は、なぜ謝られたのか合点がいった。

「確かに、能力が暴走すると危険ですが、あの事件は異常でしたから。 あれまでの被害を出す暴走は、そうは起きませんよ」

「そうはってことは、起きるかもしれないってことでしょ?! どうして危険な物なのに、皆平然と生活を謳歌しているの!?」

「それは、そもそも能力の暴走は、そうは起きないからですよ。 暴走が起きる原因は、俺たちにも完全に把握できていないけど、感情の暴走で起こる場合は、相当な負の感情が爆発しない限り起きません。 自分の許容以上の能力は、本能的に感じ取れるので、限界以上の能力は余程のことがない限りは使おうとはしません。 それに、ここにいる能力者たち全員に、俺の能力で創ったリミッターがあるので、リミッターで抑えられている限界以上の能力は出ません。 まあ、リミッターを外してしまえばその限りではありませんけど。 そういうこともあり、能力の暴走なんてほとんどありえません」

それに、以前の麗奈たちのように、能力の試行を行う場合は、異能の力を消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を持つ上条当麻(かみじょうとうま)や、『擬似幻想殺し(イマジンブレイカー)』を持つ終焉が同伴している場合のみ赦されている。

「他の人はそうかもしれないけど、君の場合はそんな甘くないんだよ!? 君の能力について、私は詳しく知らないけど、君の能力はここにいる誰よりも規格外なんだよ!? それって、背負うものも規格外ってことのはずだよ!? そんな大変なものを背負っていながら、どうして!?」

別にこの程度(・・・・・・)俺にとっては(・・・・・・)問題なく制御できる(・・・・・・・・・)程度の能力(・・・・・)でしかない(・・・・・)からですよ。 暴走なんて起こすほど、俺は柔じゃないですよ」

数多の規格外な能力を平然と『この程度』と言う終焉の器量の巨大さは、まさに規格外。
それこそ、究極原石の器。

「それに、一応の保険はかけてありますよ」

そう言って、左手首に巻きついている腕輪を見せる。

「これは、他の人にも渡しているリミッターです。 まあ、俺の場合は能力が桁外れなので、能力の出力に耐え切れずに壊れてしまわないように、自分で出来る最高強度で創ってありますが。 それに加えて、吉宗に頼んで、『壊れない腕輪』という理想を現実にしてもらっているので、吉宗の能力を壊すほどの暴走が起きない限りは、暴走は起きませんよ。 それに、能力者たちの頂点が、おいそれと暴走なんて起こすわけにはいきませんよ」

「……たとえそうだとしても、恐くないの? 能力が絶対暴走しないわけじゃないのに、どうして平然と使っていられるの?」

束にはわからなかった。
能力を使えば暴走を起こしてしまうかもしれないというのに、躊躇いもなく能力を使い続ける能力者たちの思いがわからなかった。

「他の奴らは知りませんけど、少なくとも俺は、この能力を無駄にしたくない。 これだけの力を持つのなら、これを何かに使いたい。 だから、俺は能力を使う。 俺はこの力で、この学園を支配する。 能力者たちが、無能力者たちが共存して暮らせる学園を創るために」

「じゃあ、君は他の人のために、自分を滅ぼすことをしているの?」

「そういう受け取り方もできますね。 まあ、能力で身を滅ぼすのは、能力を完全に制御できない人だけです。 俺は、この力を制御できているから、身を滅ぼさない。 心配することはありませんよ」

終焉はただ、望んでこの能力を手に入れたわけではないが、この能力を授かった以上、この能力で何かをしたいだけなのだ。
それは今、学園を平和に統治するということなだけなのだ。

「さて、こんなところでいつまでも話してないで、部屋に戻りましょう」

「……うん、そうだね……」

束は、どうにか納得すると、終焉と共に部屋へと戻っていった。


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