小説『IS インフィニット・ストラトス 〜超常の力を持つ者たち〜』
作者:黒翼()

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Episode24『戦争の沈静、殺し屋(ヒットマン)の来訪』



あれから数十分後、臨也と静雄の大乱闘(戦争と言う人もいる)は治まっていた。
ちなみに、その数十分の間に、帝人は帰っている。

「いやぁ、久しぶりにあんなに動いた気がするよ。 うん、楽しかった」

臨也は、にこやかな顔でそう言っているが、笑っていれるような乱闘ではない。

「父さん、本当によく生きてますね」

「初めて見たときは、私も驚かされましたよ。 静雄の膂力と、臨也の逃げ足に」

「一般人の域からぶっ飛んでいたからね。 僕も眼を疑ったよ。 もう静雄さん、普通にランクインしちゃうんじゃないかな?」

「しちゃんじゃないですか? 下手をすれば、能力者も倒せそうですし」

あの戦闘を見た感想を、のん気に言っている終焉たち。

「シズちゃんならある程度の能力者なら倒せると思うよ。 弱かったけど、魔術師をぶっ飛ばしたこともあるし」

「ああ、そんなこともありましたね」

「「え!?」」

「マジか……」

爆弾発言を落とした臨也と火織。
驚く明久と麗奈。
新事実に呆れる終焉。

「シズちゃんはもう、一般人に部類しちゃあ一般人に失礼だよ。 シズちゃんはもう、原石に部類すべきだよね」

「異能は持っていませんが、それを補う程度の力を有していますからね。 別に構わないでしょう」

「静雄さんを原石に部類して、何になるんですか」

「何もならないよ」

「父さんって、無駄なこと、結構好きですよね」

「そりゃあ俺は人間だからね。 無駄なことに労力を割くのは、嫌いじゃないよ」

そんな話をしながら、終焉たちは池袋の街を練り歩く。




 ☆




「直接会うのは久しぶりだね、父さん」

長点上機学園の応接室。
そこにいたのは、沢田吉宗と父親である沢田綱吉だった。

「ああ、そうだね。 オレとしても、臨也さんや終焉君のいないときに来るのは気が引けたんだけど、リボーンがどうしてもって言うから来たんだ」

「リボーンさんが?」

「ああ。 けど、そのリボーンはどこ行ったんだ?」

この場にそのリボーンはいない。

「見失ったの?」

「気づいたらいなくなっていた。 まったく、大人になってもリボーンには振り回されるよ……」

綱吉の哀愁漂わせる表情に、同情する吉宗。
息子に同情される父親というのは、実に悲しいものであった。

「探さなくてもいいの? 探すなら、他の人に協力してもらうけど」

「今隼人に探しに行ってもらっているけど、リボーンのことだから、そのうちひょっこり顔を出すと思うよ」

「ならいいけど」

それからしばらく親子で雑談をしていると、扉がノックされた。

「ねえ、吉宗。 吉宗に用があるっていう子供を連れてきたんだけど、大丈夫かな?」

「あれ、束さん? もしかして、その子供ってスーツ着てるかな?」

やってきたのは、なぜか束だった。
束は学園で、ISを宇宙で活動できるようにと、日夜開発をしているはずなのだが。

「うん、着てるよ。 何か、カメレオン連れてる」

「ああ、その人、中に入れてください。 父さんの連れなので」

「そう? じゃあ入るね」

扉を開けて入ってきたのは、ウサ耳をつけた束だった。
なぜか、ウサ耳をつけるようになっていたのだ。

CHAOS(カオス). 久しぶりだな、吉宗」

束と一緒に入ってきたのは、中学生くらいの少年だった。
しかし、中学生とは思えない雰囲気の、変わった少年だったが。
スーツに黒のソフト帽を被った、クルッと巻かれた揉み上げが目立つ、大人びた少年だった。
その少年こそが、件のリボーンだったのだ。

「この子、一体何なの? すっごく得体の知れないんだけど」

殺し屋(ヒットマン)のリボーンさんだ。 最後のアルコバレーノの一人だよ」

束は学園に入り、世界の様々な裏を知ったことで、自分でも調べたのだ。
その情報収集能力は、臨也にも匹敵する。
そのため、魔術やマフィアに関することも、いろいろと知った。
その過程で、アルコバレーノについても知ったのだ。

「へぇ、君があのリボーンだったんだ。 知らなかったよ」

「むしろ、オレを知っていたことのほうが驚きだ」

「伊達にISは開発してないよ。 それに、情報収集能力なら、臨也さんに匹敵するって、臨也さんにもお墨付き貰ってるし」

「そりゃあ知ってるわけだな。 臨也並の情報収集能力なら、世界の黒い部分、大分見ちまっただろ?」

「まあね。 けど、あまり気にしてないよ。 だって、世界情勢にはあまり興味ないからね。 それに、ここにいれば、安全だもの」

何より、束が誰よりも信頼している終焉がいるからこそ、安心できるのだ。
終焉がいれば安全だと、追われる恐怖に苛まれなくても済むと、心の底から信じているのだ。

「まあ、あいつがいれば安心か。 何たって、このオレが本気でやったのに、一発しか(・・・・)当てれなかった(・・・・・・・)からな」

リボーンは、世界でも最強クラスの戦闘力を誇り、射撃の腕前は超一流で、早撃ちの速度は脅威の0.05秒を誇る。
マフィアの掟の番人『復讐者(ヴィンディチェ)』を創り上げ、表面上(・・・)第八の炎とされている『夜』の炎を生み出した、歴代最強のアルコバレーノ、バミューダ=フォン=ヴェッケンシュタインに、押されながらも渡り合えるほどだ。
そんなリボーンが、一度しか当てれなかったのだ。
人外中の人外、規格外中の規格外、人類最強の終焉を相手に、一発だが当てたリボーンも化物なのだが、圧倒的な戦闘経験の差があるにも関わらず、一発しか当たらなかった終焉も化物だ。

「流石はリボーンだね。 あの終焉君にダメージを与えたんだ。 それ、見てみたかったなぁ」

束はその戦闘を見ていない。
それが行われたのは二年前なのだが、行われた場所はイタリア。
束はそんなことがあったことさえ知らなかったのだ。

「束さん。 その映像、ありますよ。 後で見ますか?」

「見る。 絶対見る。 終焉君のなら、何でも見る」

「なら、後で見ましょう。 リボーンさんの用事が終わってからね」

リボーンに視線が集まる。
綱吉も内容を知っているが、元々リボーンが言い出したことなので、リボーンから切り出させようとしているのだ。

「オレの用件ってのは、こいつらのことだ」

リボーンが懐から取り出したものとは―――


-25-
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