Episode3『暴露』
Side〜終焉〜
目を覚ますと、俺はベッドに寝かされていた。
どうやら、麗奈は別の部屋のようだ。
っと、とりあえずトイレだ。
さっきはトイレに行く前に倒れたからな。
ガチャッ。
「ああ、起きたんだね」
「父さん」
タイミング悪く?来たのは父さんだった。
話は後回しにして、とりあえずトイレに行きたいのだ。
父さんは俺の意図がわかっているのか、道を開けてくれていた。
「とりあえず、麗奈は無事だよ。 終焉のおかげでね」
父さんは、後ろからそう声をかけてきた。
麗奈は無事だったか……頑張っただけはあるな。
☆
「さて、どこから話しましょうか……」
「どこからでもいいよ。 俺はいくらでも待つからね」
トイレから戻ると、俺と父さんは向かい合う。
あれを見せてしまった以上、話さないわけにはいかない。
「まず、俺は一度死んでいます」
「前世の記憶があるのかい?」
前世の記憶を持つ者は、稀にいる。
だが、俺は違う。
俺は、超常の力を、神から貰っている。
「確かにあります。 ですが、俺は普通の人間じゃないです」
「まあ、原石だからね」
「原石じゃないですよ、俺は」
「どういうことだい? あれは、魔術ではないはずだよ」
魔術は使ったことがないし、俺の能力は原石と言う枠組みに含めるのはどうかと思う。
「父さん。 転生って、知っていますか?」
「輪廻転生のことかい?」
「輪廻転生とは違いますよ。 俺のされた転生は、力を与え、前世の記憶を持ったまま、新たな世界へと―――元々生きていた世界とは別の世界に飛ばされるんです」
「テンプレ転生って奴だね。 まさか、実際にあるものだとはね」
「それは、俺も思いましたよ。 まさか、転生した世界での親が、あの折原臨也と神裂火織だなんて、最初は何かの間違いだと思いましたから」
「俺と火織を知っていたのかい?」
「ええ。 二人とも、俺が生きた世界ではラノベのキャラクターでしたから。 まあ、好きなキャラなので、嬉しかったですけど」
折原臨也は『デュラララ!!』の中でもインパクトのある名言を残している変人。
神裂火織は『とある魔術の禁書目録』の中でもトップクラスの実力を持ちながらも、お色気キャラによくされている残念な人。
だけど、どちらも好きなキャラだ。
「つまり、終焉から見れば、俺たちはラノベのキャラクターに過ぎないってことか」
「そんなことないですよ。 俺はこの世界に、折原臨也と神裂火織の子供として生まれたんです。 この世界は、ラノベとか、そんな二次元の世界ではなく、現実の世界です。 だから、そんな風にはとてもじゃないが見れない」
「まあ、そんなことはどうでもいいね。 要は、終焉は俺たちの息子だと言う事実に変わりは無いんだから」
そんなことを聞けば、軽蔑すると思ったんだが……。
折原臨也は、やはり変人だと言うことか?
まあ、良き父親と言うことか。
「俺が神から貰った能力は、原石の範疇には収まりきらないほどに強力です。 俺の能力の中で、最も強力な力は『能力を創る程度の能力』。 満月の日に一度だけしか使えないけれど、大抵の能力ならば創れます。 擬似『幻想殺し』も、この能力で創ったものです」
「なるほど。 だから『幻想殺し』が使えたのか。 納得だよ」
「まあ、所詮擬似ですけどね」
おそらく、本物の『幻想殺し』とぶつかれば、負けるのは擬似である俺の方であろう。
贋物が本物には勝てないというのは、相場というものだ。
「後は、リングと匣の召喚です」
「それって、もしかしてマフィアの物かい?」
「そうですけど、知っているんですか?」
これは、『家庭教師ヒットマンREBORN!』で出てきた物だ。
それを知っているということは、この世界にボンゴレが存在するということなのか?
「ああ。 俺のお得意さんに、それを使うマフィアがいてね。 交流があるんだよ」
「そのマフィアって、もしかして、ボンゴレファミリーですか?」
「うん、そうだよ。 ボンゴレファミリーは特に、御贔屓にしてもらっている」
なるほど、ならば知っているはずだ。
「とまあ、他にもいくらか能力はありますが、わかっていることは、俺はこの世界で最も危険な能力者ということです」
擬似『幻想殺し』があることで、俺には大抵の異能は聞かないし、『一方通行』があることで、大抵の攻撃は反射できる。
それに、俺は聖人である。
今は大した魔術も身体能力もないが、後々途轍もない力を得ることになる。
「……やっぱり、行動を起こしたほうがいいかな」
すると、父さんがつぶやいた。
「何をする気ですか?」
「世の中には多くは無いけど原石がいる。 そして、原石は迫害を受けていると言う話をよく聞く。 それに、頭が良すぎるが故に孤立する人もいる。 位が違うが故に、孤立すると言うこともある。 俺は、そんな人たちを集めて、学校を創ろうと思っているんだ。 ちょうど、愛する息子と娘が異能の力を持って生まれたんだ。 我が子のためにも、改めて創ろうと思ったんだよ」
「父さん……」
「まあ、いろいろ手を回したりしないといけないから、まだ数年は先になりそうだけどね」
俺は、その気遣いが嬉しかった。
俺は初め、俺の事を知られれば、少なくとも軽蔑くらいはされると思っていた。
だが、この人は、折原臨也は、そんなことを歯牙にもかけず、接してくれた。
変わらず愛を向けてくれた。
俺は、親に恵まれた。
こんなに素晴らしい親は、この人以外知らない。
ああ……やっぱり転生してよかった。
Side〜終焉〜out