五章
8月15日、天気は雲一つない快晴。時刻は__
君が死ぬはずだった瞬間___
赤に変わる信号と、猫を追いかける君の姿と、猛スピードで襲い来るトラッ
ク。
その全部が、僕にはスローモーションのように流れていた。
何度も繰り返した、同じ光景。避けられない悲劇。
そのすべてが、ここで終わる。
君を押しやって、赤に変わった信号機に飛び出す。
全身に、今まで感じたことがないような激痛が走るのがわかった。
僕はトラックにぶち当たり、宙に飛び上がった。
血飛沫の色と君の瞳と軋む体。
乱反射するように世界が眩み、真っ赤に染まり始める。
「………」
意識が朦朧とする中で、文句ありげにこちらを眺めているのが見えた。
これで、永遠の世界が終わる。
そう思った。
これで正しかったのだと。
ゆっくりと目を閉じ、精一杯の枯れた声で、陽炎に呟く。
「………ざまぁみろよ………」
実によくある夏の日。
そんな何かがここで終わった。