小説『超短編集3『憂鬱サンタの優雅な休日』』
作者:加藤アガシ()

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【幸福チャレンジャー】



みなさん、こんにちわ。

少しあなたのお時間を頂けますか?
これから話すのは一人のさえない青年の物語。

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彼は今までの人生、全てに逃げてきた。


自分に自信が持てず、何をやっても自分はダメだと思っていた。
運動すればすぐに疲れ、勉強すればすぐに飽きた。

忍耐力もなければ、勇気もない。
人と話せば、すぐに傷つき、傷つけられた。


周りの人間はみんな自分のことを馬鹿にしている気がした。

だから彼は人が嫌いだった。

人の悪いところばかり探し、けなすことで自分を正当化し、アイデンティティーを保ってきた。

人に優しくされれば、いつかは裏切られると思っていた。

たまに幸せを感じると、その幸せを失うことに怯え、むしろ不幸に感じた。


人に愛されなければ、愛することもできない。
したいこともなければ、する気もない。
生きたくもなければ、死ぬ勇気すらなかった。



そんなある日、彼は不思議な夢を見る。


夢の中で、暗い夜道を歩いていると、透き通った老人が話しかけてきたのだ。

『インドに行って穴を掘れ!さすれば、幸せになるだろう』


彼はその夢の異質さに、何か啓示めいたものを感じ、一念発起してインドへ向かった。


そこで彼は、現地の住人から、何でも願いが叶うという不思議な石・ポッタラー石の話を聞く。

彼は夢の中で老人が言っていたことを思い出し、その石がよく発掘されるという土地へ行き、穴を掘った。


すると、なんとも綺麗な輝きを放つ石が出てきた。

その石を持った途端、彼は今まで味わったことのない気の流れを感じた。

そう、彼は分かってしまったのだ。


『これからの人生は良い方向に進む!!』と。


彼は石を持って日本へ帰ると、今までの人生がまるで嘘のように、トントン拍子で幸せを手に入れていった。


*******

・・・はい。

実を言うと、この青年、私なんです!!


インドで不思議な石・ポッタラー石を手に入れて以来、ウソのように幸せな毎日を送っています。


しかし、ひとつの疑問が頭によぎりました。

『この幸せを一人占めして良いのか?』


答えは否!

世界中の不幸な方たちにも、この幸せを分けてあげたい!!


そこで、私は現地の住人たちとの交渉の上、独自ルートでこのポッタラー石を限定入手し、普段、持ちやすいようにオシャレなブレスレットにしました。


このブレスレットを身につければ人生バラ色になることが約束されます!!


本来、人間は色々なことを吸収して成長していくものではなく、色々な邪念をそぎ落とし、磨かれていくことで、人間本来の姿に戻っていくものだと言われています。


このポッタラー石は、不思議なことにその邪念を吸収してしまうのです。

その成果は、アメリカの最高研究機関FKK内研究所でも検証されました。



この希少価値の高いポッタラー石のブレスレット、今回はこれを読んで下さったみなさんのために、なんと20個も用意させて頂きました。


お値段はなんと、驚きの80,000円!!!!

80,000円で人生がバラ色に変わります!!!


どうか下記にお早めにお電話ください!!

03―4435―××××(有限会社クレッチモンド)


さぁさぁ、早く!幸せが逃げてしまいますよ!!

ポッタラー石で人生の主役に返り咲いてください!!!


レッツ幸せ!!!!!

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