殺伐した雰囲気の中、龍人隊のリーダー、杉村帝斗は考える。
――神ヶ崎恭平がいない今が、攻撃のチャンスだ。
――ヴィンテージの奴らが気づいていない今こそ狙い時だ。
杉村帝斗は何年も使われた形跡が無いボロボロの教壇の上に勢い良く乗り上げる。
周りを見渡しすべてのメンバーが自分に集中したことを確認すると深く頷く。
「ヴィンテージには今、黒豹がいない。これは攻撃のチャンスだとは思わないか?」
ドスの利いた広く響く声が、今はもう使われていない3−Aの教室に響き渡る。
それに共鳴してメンバー達はリーダーである帝斗に続きに叫ぶ。
「「 おおおおおおおおおおおおおッッ!!! 」」
翌日、龍人隊はヴィンテージヘブンへの攻撃を開始することになった。
リーダーである帝斗は昨日と同じように教壇の上に立つ。
昨日、龍人隊の服装を着た”誰か”が俺達のアジトに潜入した。
いったい誰なのか、そしてなぜ”龍人隊の制服を持っていた”のか。
彼らが何かをしていたのは確実だが、何をされたかがまだ分からない。
ゴスッッ!
教卓を蹴っていらいらを暴発させる。彼はそれほど焦燥に駆られているのだ。
――チャンスだ。チャンスなんだ。
――だが、なんだ。なんだ。
この……奥底に引っ掛かるこの感じは。
「時間だ。……作戦を決行させる」
彼は、自分達の中で起こっている”異変”気づくことが出来なかった。
杉村帝都は三割ほどの部下を自分の下に残し、他をヴィンテージヘブン襲撃要員に回した。
再び教壇に上り、残ったメンバーを見渡す。
男、男、男、男、女、男、女、男……
何故か男のメンバーが多い。
龍人隊というグループは基本的に男女問わず入りたいと願うものは入れる。
だからこそ、ここまでグループの拡大に成功した。
しかし、一つ欠点がある。後から参入したメンバーの顔をいちいち覚えていられないという点だ。
だからここに残ってもらったメンバーの顔も半分以上分からない。
彼が襲撃作戦を執行してから十分も立たないうちに一つ異変が起きた。
「リ、リ、リーダーご無事ですか!? 」
慌ただしく教室に入ってきたメンバー達。
「どうした?」
「え、あ、あれ……?」
メンバーは困惑した表情を浮かべるものや、ほっとしたような安心した表情を浮かべるものもいる。
「いや、リーダーがやられたと聞いたのもので……」
……俺がやられた?
襲われてすらいないぞ。
……どういうことだ?
すぐさま帝斗は辺りを探そうと廊下に出る。
――なんだなんだ。
――どういうことだ?誰かが偽情報でも流したのか?
廊下を走りながら、訳も分からずその誰かに嫌疑をかける。
そして彼は階段を降り、玄関に出たところで凄惨な光景を目にした。
玄関にいる龍人隊が7人全員倒れていたのだ。
「なんだ……これは……どういうことだ」
――なんだ、何が起きている。
次々と起こる怪異に頭を悩ませる帝斗。
メンバーが一人、帝斗の前に出てきて倒れている龍人隊のポケットの中を弄る。
取り出したのは一枚の紙。
「なんだ、それは」
「何か、書いてあります……彼らをやったのは我々SHADOW。以後お見知りおきを……だそうです」
――どういうことだ……。
――ヴィンテージでもなく、シャドー?
「これは……気をつけなければいけませんね」
メンバーの一人が呟く。
「あぁ、そうだな……」
帝斗は訳が分からず懊悩とするしかなかった。