小説『IS 戦う少年と守護の楯』
作者:天地無用生もの注意()

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10話 真実を知るもの

「では、一年一組のクラス代表は……。えーと、決まったのですが、一部から今日の夕食後パーティをしたいとの事ですので、このSHRでは発表しません」

織斑先生の視線で、山田先生がちょっと泣きそうです。
きっと、その一部の生徒から御しやすいと思われ、許可した後に織斑先生にみっちり『お話』されたのだろうな。

ちなみにあたしはクラス代表を知っている。
こんなとき女の子のネットワークって恐ろしいと思う。

ちなみに情報提供者は布仏本音さんだ。
先日のお茶会のお礼を言いに行ったら、生徒会へラウンジの使用許可をもらいに行くのを頼まれました。

本音さんは生徒会の書記らしいが、姉の副会長に自分が言いに行ったら許可が下りなくなっちゃうとの事。実にのほほんさんと言うあだ名が似合っている。
逆に生徒会長だけだったら、面白がって許可が下りるらしい。
お昼休みに本音さんが副会長と食事に誘うので行って欲しいらしい。

イギリス代表候補生でさえ、あの強さなのだから現ロシア代表とは会いたくないが、お茶会での借りがある分断りきれなかった。
それに、アイギスの資料では『要注意人物』と書かれていたのも引っかかる。

昼食時には一夏さん達と食堂に行き、購買部でパンを買いあたしと設子さんで生徒会室に向かった。


ハッキリ言おう。生徒会はあたしは苦手です。
前なんて、雑用扱いならともかく、犬や下僕扱いされていましたから。
ノックをして入室の許可をもらうと、一度深呼吸をして扉を開ける。
被害妄想なのは分かっているが、どうしても身構えてしまう。

「いらっしゃい。私の名前は更識楯無。君たち生徒の長よ。以後よろしく。
―――如月修二君ッ」

「くっ」

突き刺さるように飛んできた扇子をすくい上げるように弾いて身構えていると、落ちてきた扇子を生徒会長が広げると『お見事!』と書かれていた。

「貴様何者だ?」

「あら、私は最初に名乗ったわよ『更識』だと。
? もしかしてアイギスのガーディアンって私の家の事知らない??」

扇子を口元に持っていき首を傾げる。
嫌なくらい似合っているから始末が悪い。

「修史。『更識家』と言えば日本で裏工作を実行する暗部に対する対暗部用暗部の一家だ。アイギスがのエージェントが知らなくても仕方が無い。
それにまさか本当に『更識』が居るとはな……。その中で『楯無』を名乗れるのは当主のみ」

設子の説明に満足したのか、扇子を開くと今度は『ご明察』と書かれていた。
いったいいつの間に変えたんだ?

「さすが元『ファランクス』のエージェント。そっか、アイギスは裏家業だけど表に近いから修史君は知らないのか……」

―――設子の過去を知っている! 
間違いない。かなり危険だ。

「おっと、誤解の無いように先に言っとくわ。
貴方達の邪魔はしない。正体もバラさない。どお? いい条件でしょ」

「ああ、そうだな。いい条件過ぎてびっくりだよ」

「何もそんなに警戒しなくてもいいのに。
本音ちゃんにも修史君の事を言っていないのに。傷つくわ〜」

「私。悲しい」と言って床に力なく座り込む。
なるほど、課長の同類か。

「ん〜。仕方が無いか。
面倒だからパパにでも確認したほうがいいんじゃないかな? ここは盗聴防止もしっかりしてるから安心してね」

安心なんて出来るわけないだろうが! それに俺と課長の仲を知っている。完全にこちらの切れるカードはないな。

投影型のスクリーンに映し出されたのは、薄暗い部屋に白髪の混じったオールバックにサングラスに髭のシルエットがかろうじて見える。
間違いない。課長だ。

「ふん。見知らぬ所からここへの直通回線が来ていると思ったら君か」

―――普段はアレだけど、他人から見るときちんと仕事しているんだよな。

「バレました。相手は『更識』だと名乗りました。それとここは盗聴対策もされているようです」

念の為確認が取れるまで一切こちらの情報は流さない。

「あれ〜。って言うか、やっぱり〜。
どうせ隠し切れないって思ってたけど、もう少し見逃してくれると思っていたのにな〜」

あ。こいつあっさりと認めやがった。しかも軽いし。

「まあ、修ちゃん。バレてしまったのは仕方が無い。幸いな事に相手は『更識家』だからな、
ウチみたいな護衛専門だったからこうして機会をもらえたのだろう。
引き続き任務を継続してくれ」

「あら、課長さんよくわかってるねー。ウチも念の為……。って事だから気にしなくていいよ。
それに生徒を守るのが生徒会の役目だしね。それにウチからも依頼するときがあるからね」

会話自体は軽いが、内容はすごく重い。
これで、学園側と『最強』のIS使い、それに生徒会のバックアップが得られる可能性が出てくる。

通信を終えると、更識楯無は俺達を見て、

「それじゃ、これからよろしくね修史君?」

あまりよろしくしたく無い人だが、上の判断にはある程度従わなくては……。
で、なんで下から扇子で風を送っているんですか?

「えっとね。修史君が資料では男だって知ってはいるんだけど、さすがに信じられないんだよね。
チョットだけだからさ、見せてくれない? なんだったら私のも見せるからさ」

不審な目を向けると、設子が俺の前に出て、

「修史は男です。私が見て体験して知っているのでそれ以上の説明が必要ですか?
なんだったら、詳細で正確なな図を書きましょうか? ミリ単位で?」

ちょっと、止めてくれ!!

「ごめんなさい。なんでもないです」

「負けた」と言って両手を着いてうなだれる。だけどまだ未練があるのかスカートを凝視している。

「あー、一応ここでは山田妙子でお願いします」

しょせん、俺は現場に出てナンボです。難しい駆け引きは苦手ですよ。
さて、護衛に戻りますかね。生徒会室を出たところで、設子さんが振り返り、

「妙子さま。妙子さまは反応が可愛らしいから隙が出るのですよ。十分に気をつけて下さいね」

あー、そうですかー。


    ◇  ◇  ◇


「というわけでっ!織斑くんクラス代表決定おめでとう!」

「なんでーー!!」

パチパチという拍手で垂れ幕から『織斑一夏クラス代表就任パーティ』という文字が書かれている。
ドーンというバズーカの形をしたクラッカーを鳴らしたのはのほほんさん。残念。タイミングを逃しましたね。

「それはわたくしが辞退したからですわ!」

もう一度『ドーン』。―――2丁でしたか。ある意味一夏さんの心境が現れているのでOKです。

そう、わたしは当然セシリアさんも辞退したから必然的に一夏さんがクラス代表になりました。
元々推薦されていたから反対意見も無かったんですよ。ご愁傷様です。

おそらくこういったイベントが他のクラスには無かったのだろう。三十人以上は集まっている。
男って何も無い事から馬鹿騒ぎ出来る事を見つけて楽しむけど、女の人って計画的にこういったイベントとか好きだよね。

その中を強引に進み一夏さんの下へ割って入る人がいる。リボンが黄色なので二年生なんだろうが、何故ここに?

「はいはーい、新聞部副部長二年の黛薫子でーす。話題の新入生、織斑一夏君に突撃インタビューをしに来ました〜!」

周囲から『オー!!』という声と共に注目が集まる。なぜか危険な香りがしたのでわたしは退避しようとしたが、囲まれた! 逃げられない!!
どうして女の子達はこういった事に関しては、あたしよりも敏感に反応するのだろう?

「人気者だな。一夏」

しかも不機嫌そうな箒さんの隣に立たせないで、身長があまり変わらないから並びたくないんだ。

「まず織斑君に、ずばりクラス代表になった感想とか聞かせてくれるかな?」

「まあ・・・何と言うか・・・頑張ります」

「え〜、それだけ〜? ま、いっか・・・そこは適当に捏造するから良いとして」

捏造するって、そこもボイスレコーダーに拾われているんじゃないかな?

「ああ、セシリアちゃんもコメント頂戴」

「そうですわね。専用機で初めての戦闘であれほどの動き、こう言ってはなんですがさすが織斑先生の弟さんですわね」

「え〜。優等生過ぎるよ。じゃあさ、そういうところに惚れたってしとくね」

『キャー』と周りの女の子のそれは楽しそうな悲鳴が上がっている。IS学園って、お祭り好きが多いのかな?
まあ、一夏さんが現れるまで、女の子しか居ないのが前提だったからね。

「じゃあついでにタエちゃんからも貰おうかな」

「どうせあたしはついでですよ……」

「あら、反抗的ね。なら怪我をしていたのに『織斑君の為に時間を稼いだ献身的な女の子』ってイメージで書かせてもらうから。これ決定ね」

なんでそうなるの??

「まさか……。本当に一夏に?」

ほう……。へー。箒さんは、そういう事ですか。
邪険に扱っていたわりに、いつも一緒にいるのはどうしてなのかと前々から気になっていたんですよね。
大丈夫です。あたしにそんな趣味は無いです。ノンケですから。
って、この状況じゃ言えないじゃないですか!!
これは、テレジアに居たときよりも厄介な状況?!

「じゃあ捏造するのに時間が無いから最後に写真撮らせてよ。一年一組の専用機持ち三人の写真! はい三人とも並んで〜」

この人も人の話を聞いてくれない。
流されちゃダメだと分かっているんだけれど、経験上何しても無駄なんですよね。
だがしかし、写真と聞いてクラス中のメンバーがアイコンタクトしている。
これは―――割り込む気だな。

あたしの腕を掴んで箒さんが立っていた位置に無理やり割り込ませるが、足をもたつかせ箒さんの腕を掴み一夏さんの真横に立たせる。

「すみません。ちょっと足がもたついて」

「う、あ。気にするな。そういうこともある」

あたしが体重をかけた為に一夏さんに添いよる形になる。
うんうん。青春してますね。顔が赤くなっています。お昼の生徒会長とは大違い。

「それじゃあ撮るよー。35×51÷24は?」
「74.375ですね」

「………」

即答した設子さんの笑顔が怖いです。
そしてさっきまでのテンションが下がった黛先輩の無言のシャッター音。

「え? いつの間に全員入ってるんだ?」

あー。こういうときの女の子の行動力はすごいですよ一夏さん。
それと慣れが必要なんですよ。

―――さすがにパーティが十時まで続いたときは女の子のエネルギーを侮っていました。やっぱり慣れないな。










後書きみたいなもの(没ネタ)


すみません。本当はもうちょっと長かったんですけど。ちょっと暴走しちゃって……。
半分眠りながら、書いた物なんですけどさすがに改めて読むと混沌としすぎたのでカットしました。
ですが、せっかくなので没にした所をどうぞ。本文で課長が更識にバレた後、
『あ。こいつあっさりと認めやがった。』に続くはずのネタです。



課長の部屋の明かりが点くといつもの軽薄な姿に疲労感が漂っている。
そして、それ以上に俺の目が止まったのは……。

「って、おい。何だその人形は!!」
「ん? これは昨日設子から送られてきた映像から、徹夜で作った『ヌコセラミック妙ちゃんフィギアメイドVer.』だ。
ちなみに、前に作った『セーラー服Ver.』はアイギス内では在庫は残り僅かだぞ」
「アイギス内で何作っているんだよ!!」
「お、小父様。今度の新作も譲ってくれますよね?」
「設子!! その『新作も』の『も』ってなんだよ?!」
「もちろんだ。ただし、これからも資料の為にたくさんの映像を送る事」
「何ドヤ顔で言っているんだよ」
「あら、そんなに可愛いなら私も欲しいかも」
「ちょっと、部外者は黙ってて下さい」
「ちなみに前回のは『小冊子3』の……。あった、6ページに写真付きで乗ってるぞ」
「うわー!! 可愛いなー、しかもちょっとエロスを感じる。お姉さんはそういう可愛いのも大好きなんだよ。譲ってくれない?」
「ちょっと待て。あんたそんなモン作っていたのか……?(ぷるぷる)」
「うーん。本来はアイギス内のみなのだが。仕方が無い」
「ッシ!(小さくガッツボーズ) アイギスとはこれから仲良くなれそうな気がするよ」
「スルーかよ。設子、これからはバ課長に昨日みたいな写真を送らなくていいぞ」
「あら、妙子さま。上司の命令は絶対ですよ」
「あぁ、ちなみに『依頼主』からの要求でもある。『IS装備のフィギアは任せて〜』だそうだ」
「あらやだ。それは聞き捨てなら無い情報ね。ねえ、本格的に『更識』と『アイギス』手を組まない?
なんだったら、お姉さんがISの事、手取り足取り教えてあげてもいいけど?」
「うーん、でもねー。ウチの修ちゃんを傷物にされたくないし〜」
「いい加減にしろってば。それに俺はガキじゃないって言っているだろう」
「あら、お姉さんに任せてくれれば大丈夫よ?」
「だーかーらー、俺は成人男性だって言っているだろ」
「嘘だ!! その肌のつやとか、私の目は誤魔化せないんだから!!」
「本当だって、信じてくれよ……」


以上、また前回妙子さんにネコ耳メイドをやって貰ったのはこういうのをやりたかったからです。



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