小説『IS 戦う少年と守護の楯』
作者:天地無用生もの注意()

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前書き
今回ちょっと書き方を変えてみました。イメージはオープニング前に出る二〜三分間の映像のようなもの。




「それで、修史君はどうしたいわけ?」

正直あまり会いたくない人物のランキングが有ったら、確実に上位に入る人。それが更識楯無。

「聞きましたよ。どうも簪さんが、かなりの無茶をしているそうなので、本音さんが困っていました」

「律儀な性格ね。自分の仕事をきっちりこなせば良いじゃない」

「そうは言っても、相手が首を突っ込むタイプでね。なら先に手を打っとかないとね」

「で、ワザワザクラス対抗戦前に私を呼び出したのね。こう見えても、生徒会長なんだから結構忙しいのに。
それにサイレント・ゼフィルスも盗まれたようだし」

サイレント・ゼフィルス? 何だそりゃ。

「イギリスは隠しているけどね、ブルー・ティアーズの姉妹機がどっかの誰かさんによって盗まれたのよ。
コアだって数が限りあるのに、第三世代のISなのよ。その馬鹿のせいで本家がてんてこまいなのよ。
知ってる情報があるなら、言い値で買うわよ」

「さっきその話を聞いたのに、そればっかりは無茶だと思うぞ」

後で課長辺りにでも聞いてみるか。それとも束に連絡を取ってみるか・・・・・・。

「まあいいわ。貴方達のクラスずいぶんと面白い事をしているわね。
一口乗せてもらえないかしら?」

「アンタは人の話を聞いているんですか? 俺は簪さんの事を聞きに来たのに」

「それはそれ、これはこれ。それにもしかしたらあの子にもいい影響を及ぼすかもしれないしね♪」





14話  クラス対抗戦


「ねえねえ、かんちゃん。この試合どうみる?」

「・・・・・・本音、『かんちゃん』は止めて」

んー、でも、かんちゃんはかんちゃんなのに。でも、照れて赤くなった顔も可愛いな〜。

「でも、織斑君は織斑先生の真似をしている以上、勝てる確率は少ない」

ウヒヒヒヒ。たえたえの作戦に見事に引っかかった。
座席の前にいるたえたえの肩がピクリと動いている。

「本音? その笑い方怖い」

えー、酷いよかんちゃん。でも、たえたえも同じ顔をしているんだろうな。

「かんちゃんは今回のクラス対抗戦は、棄権したんだよね?
だから、特別に秘密を教えてあげてもよかったんだけど、やめようかな〜」

秘密という言葉で反応するかんちゃん。やっぱりたっちゃんと同じ更識家の血が流れているんだなー。
同じ表情しているんだもん。何で仲良く出来ないのかな?

「本音、秘密ってどういう」
「お、始まるよ〜」

白式の名前の通り真っ白なおりむーのISと、りんりんの黒と薔薇色の機体『甲龍』。
甲龍の方が棘が付いていてちょっと強そう。

「それじゃあ、実況は布仏本音。解説はかんちゃんこと更識簪でお送りしちゃいます」

「・・・・・・本音。お願いだから、人の話をきいて」

かんちゃん。真面目すぎるよ。せっかくのイベントなんだから楽しまないと。
二人が規定の位置に着くと試合が始まる。

「ではでは、解説の簪さん? 先ほどのおりむーの勝率が低い理由を貰えないでしょうか?
―――やっぱり、慣れない話し方は止めようかな。でも、かんちゃんは解説してね♪」

「う。甲龍は、第三世代のISでパワー重視。それに中国の代表候補生。
日本と比べ物にならないくらいの人口の中での代表候補になった。その中でも専用機を貰えるほどの実力がある」

うわ、かんちゃんすごい。
メガネ型の外部ディスプレイに頼らずそらで解説できる。
なんで、こんなにすごいのに自信が無いんだろう??

「じゃあじゃあ、かんちゃん。おりむーの方はどうなの?」

「ん。特訓の成果で動きは良い。でも、いつまでも織斑先生の真似をしているだけだと意味が無い」

ニシシシシ。かんちゃんですらそう思っているんだから、たえたえの作戦は成功している。
もしかすると本当に、食堂デザート半年間フリーパスも狙えるかも。

「本音。お願いだからその笑い方止めて。本当に怖いよ」

「ふふふふ。ではここで、我が一組の秘密をお教えしましょう!!」

スパーン!!

「うぅ。たえたえ、ヒドイよ。いくらなんでもハリセンは精神的にクルものがあるんだよ〜」

「えーと、簪さん。ごめんなさいね。
小声ならまだしも、あそこまで大きな声で暴露されちゃうと一夏さんが不利になっちゃうんで」

うー、叩かれたのは私なのに・・・・・・。しかも、たえたえって力が強いから結構効くんだからね。
こうなったら後で私の着ぐるみを着せて写真を撮って、せっちゃんに送りつけてやる!!

でも、かんちゃんの為に作戦を修正してくれたからなー。
うん。後でデザートで手を打とう。

本来は他のクラスを騙したままで、相手が深読みしたままで終わらす事。
でも、かんちゃんのみ、全てを教えることになっている。もちろんおりむーも了承済みなのだ。
おりむー曰く、いつまでも隠せるわけじゃ無いし、どうせ第一試合でばれるからとの事。

「こんにちは。一組の山田妙子です。本音さんには色々とお世話に・・・・・・。
主にお菓子関係でお世話になっています」

「ぶーぶー、たえたえ。ワザワザ言わなくても良い事があるんだよ」

「本音さんは少し黙っていてください。
えーと、改めて山田妙子と言います。微妙の妙に子供の子で、妙子です」

「私は真田設子です。キャラ設定の設に、恐ろしい子の子で設子と申します」

「えー、えーと。更識簪です。飾り職人の秀が仕事で使っていた簪の簪です」

かんちゃん、かんちゃん帰ってきて。そんなの私の知っているかんちゃんじゃ無いよ!!

「ありがと。じゃあ解説の簪さん、一夏さんが勝てる確立が少ないって言うのはどうして?」

うー。私のポジション取った〜!!
こうなったら噛み付き攻撃だ。

「あら、本音さま。妙子さまはお菓子じゃないですよ。
はい。コンペイトウでしたらこちらにありますから」

ダメです。今はおしおき中なのです。

「ええと・・・・・・。織斑君は銃を使っていないですよね。
確かに何の訓練もしていない人が、銃をすぐに使うのは難しいです。ですが、この数日射撃訓練も行っているので使えなくはないはずなんです。
それに、そのためにISには銃火器用でセンサー・リンクがあるんですから。
資料によると、昔剣術道場に通っていた時期があるのでブレードの方が扱いやすいのは分かりますけど・・・・・・。あ、織斑先生は別ですよ。
それでも、足止めに銃を使うのがセオリーです。
ショットガンを使えばシールド・エネルギーを減らす事も出来ますが、それ以上に相手に衝撃を与える事が出来るので、とても有効なんです」

かんちゃん……。解説役って言われて上手く乗せられてるよ。
私でも、こんなに長く話しているのは聞いたことが無いのに。
ううー。やっぱりたえたえは、敵だーーー!!

「そうでしょうね。
でも、その情報が意図的に流されていたら?」

意味が分からない。そんな顔をするかんちゃん。
こんなに齧っているのに何で攻撃が効かないんだろう? たえたえって、超合金で出来ているのかな??

「実は白式って、あのブレードだけで拡張領域が埋まっているんです。
その分あのブレード…『雪片弐型』って名前なんですけど、その特殊攻撃は、エネルギーを無効化できるんです」

「え! それじゃあシールド…」
「そうです。シールド・エネルギーがあっても、エネルギー無効化する以上発動して攻撃さえ当たればそれで終わりなんですよ」

ムギー!! 効いていない。
こうなったら、そのささやかな胸を思いっきりもみもみ…って痛い。せっちゃん顔が怖いよ……。

「もっとも、そのことを隠す為に『みんなで協力して』一夏さんの情報を撹乱したんですけどね」

あー、それ私の台詞ーー。



   ◇  ◇  ◇




操縦者 凰鈴音
ICネーム 『甲龍』 戦闘タイプ 近距離格闘型  特殊装備有り―――

両肩の非固定浮遊部位はやたらと大きいせいで鈴がいつもより小さく見える。
それにでっかい青龍刀を二つくっつけた武器がその小ささを際立たせる。

「一夏。アンタまた、変な事考えているんじゃないでしょうね? 謝るなら少しぐらい手加減してあげてもいいわよ」

「ハッ。お前にそんな器用な真似が出来るわけないじゃないか。そんなんじゃ自分が小さいって言っているようなものだぞ」

ブン!!

手にした武器を思いっきり投げつけ、体勢が崩れた俺に鈴の掌底で後ろに下がらせられる。
クソ。せっかく雪片の間合いに近づいてくれたのに、これじゃ意味が無いじゃないか。

「いーちーかー……。私のどこを見てそんな発言をしたのかなー?」

「誰も胸の事は言っていないじゃないか……。ハッ」

「判決。死刑」

「ちょっと待て」と言う前に甲龍の肩アーマーがガチャリとスライドして球体が表れる。
何故か嫌な予感がする。そう、設子さんとの模擬戦のように、

「へー、やるじゃない。この『龍咆』は見えないはずなのに」

鈴の言葉で自分の取った行動をはじめて自覚した。
さっきまでの位置と違うのは無意識に避けていたんだろう。
それに、横を通り過ぎていった音はなんだったんだ?

「衝撃砲よ。弾丸じゃない分一点突破とはいかないけどね。その分IS全体にダメージを与えるわ。
何より衝撃なんだから、シールド・エネルギーを削るだけじゃなく、操縦者自体にダメージを与えられるわ」

「ちょっと待て。そういうのは競技規定違反だろうが」

説明をしながら鈴は先ほど投げた青龍刀を回収する。
得物を持たれるのはヤバイが、その武器よりも今は『龍咆』の情報が重要だ。

「うーん。グレーソーンなんだよね。噂では操縦者のみにダメージを与える武器はダメだけど、これはあくまで砲弾が見えないだけなんだからさ。
ウチの技術開発も捨てたもんじゃないでしょ。それに操縦者にダメージと言っても、衝撃だから平衡感覚を無くすくらいかな?」

えげつねー攻撃だな。つまり鈴のドロップキックみたいなものか?
厄介だけど、銃弾なんて元々見えるもんじゃないし、そもそも、ロック警告なんて意味の無い相手に戦ってきた訳じゃない。

「なるほどね。それが中国の第三世代か。確かにそれは危険だな」

高度を下げ、鈴と同じように地面に足を着く。
これは、妙子さん対策で経験した事が役に立ちそうだ。

「で、アンタはいつまで千冬さんの真似をしてるのよ。いい加減姉離れしないと、シスコンって呼んであげるわ」

雪片を顎で指して千冬姉に聞かれたら危ない発言をする。いや、たぶんモニターで監視しているから後で怒られるぞ。

「ん? ああそうだった。もしかしてお前さ、あの噂本気にしていたのか?」

ムッとなる鈴。それと同時に衝撃砲が襲ってくるが、同じ地面に接している為少しでも機体を上げれば避けられる。
すぐさまブーストをで接近されでかい武器が襲ってくるが、雪片を片手突きで牽制する。が、
あの龍咆が弾幕のように襲ってくる。

うん、妙子さんと戦ってみて理解したのは、長物相手に刀で斬る動作は意味が無いって事だ。
防御と攻撃、使い方は違うが、長物は少し動かせば防御として完成される。ならば、俺に出来る事は突くのみ。
千冬姉ならフェイントを使うか、相手以上の速度で攻撃するんだろうが、妙子さん相手にダメージを与えていない。
ということは、代表候補生の鈴にも同じ事が言えるだろう。

「アンタの言う噂ってのはどういうことよ」

鈴の怖いところは戦いになると冷静になる事。おかげで中学の頃はゲーセンで勝負して散々飯を奢らされたからな。

「射撃訓練の事だろ? アレはブラフだ。白式の装備はこれしかない。
ただし、気をつけろよ。『零落白夜』って言ってなエネルギー無効化するんだ。千冬姉と同じなんだよ
それじゃ、本気で行くぜ!!」

鈴が下段に構えを取る。初めてこの白式の脅威を理解したようだ。


ジジジジジジ、ズドオオオン!!


飛びかかる前に俺と鈴の間を中心に衝撃が襲ってくる。龍咆……ではない。そんな生易しい威力ではない。

「一夏。試合は中止よ!! すぐにピットに戻りなさい」

なんなんだよ、人がせっかく熱くなってきたのに。

―――所属不明の戦闘機に熱源確認。ロックされています。

「ッチ」相手は俺と同じ地面にいる。アリーナのシールドはISと同じもの。それを貫通するのなら観覧席に向けられれば結果なんて分かりきっている。ならば、上に行くしかない。

「一夏。私が時間を稼ぐから早く逃げなさい」

「誰が友達を見捨てて逃げるような馬鹿な真似なんて出来るかよ!!
それにアレの攻撃はシールドを貫通するんだぞ。機体スペック上俺の白式の方が早い。避けられる可能性が俺の方が高い」

土埃から姿を現したヤツは異形だった。手が長く立っていても地面につくくらいだ。機関車の先頭車両と甲冑が合わさったようだった。

「なんなの、あの全身装甲のISは!!」

は? 何言っているんだ。ハイパー・センサーで確認しろよ。操縦者の名前どころかISの文字も無いぞ。

「鈴。お前のISはあのふざけたヤツをどう捉えている?」

「質問の意味が分からないわよ。
いい? 『所属不明のISと確認』としかでていない」

変だ。白式はハッキリと『戦闘機』と認識している。

『織斑に鳳、聞こえているな。悪い知らせだ。たった今何者かが……と言ってもその不審者しか思いつかんが遮断シールド、扉もロックされている。
時間を稼げ。後はこっちで何とかする」

「という訳だ。逃げられないようだぞ。
あ、あと千冬姉? 時間稼ぎもいいけど、別にアイツを倒してしまってもいいんだろ?」

「ちょっと、何死亡フラグ立ててるのよ」と鈴。

『フフフ、アハハハハ……。いやいや、こいつは驚いた。しくじるなよ一夏』

「で、親友の凰鈴音さんはもちろん付き合ってくれるんだよな?」

「ああああ、もうっ。分かったわよ。で、作戦は?」

良いねぇ。なんだかんだと言って付き合ってくれる。やっぱり一年くらい会っていなくても俺達の絆は変わらないままだ。

「ぶった斬る。ああ、心配しないでいいぞ。
白式は、アイツの事を『戦闘機』として認識している。おそらくISに近い何かだろう。ようはただのロポットだ」

「ふーん。なら、私が援護すればいいのか。分かっていると思うけど一撃でもくらったらアウトだからね」

………

……




クソッタレ!! こっちは生身なんだよ。スキンバリアーがあるとはいえ慣性の法則でとんでもないGで意識を持っていかれそうになる。

「ちょっと。やっぱり倒すのは無理みたいね。何とか時間稼ぎしないと」

分かっちゃいるが、せっかくの試合を邪魔されたんだぞ。何かきっかけさえあればぶった斬るのに。
何か手は無いかと、周囲を確認すると……。あった。
実に良い位置にある。
ただし、もう一手必要だな。

「鈴。俺が合図したら龍咆を最大威力で撃ってくれ。いいか、どんな状況でも撃ってくれよ」

「了解」と頷いてくれたときに予想外の事が起きた。

『一夏ぁっ! 男ならそれくらいの敵に勝てないでどうする!!』

な!? 中継室か?
審判の居る当たりからスピーカーで箒が叫んでいる。
一瞬目を離したときには、あの戦闘機のセンサーレンズと腕が箒の居る方へと向けられる。

トップスピードで鈴の前にでて、

「撃て! 俺ごと撃つんだ!!」

イグニッション・ブーストだけだと避けられる。ならば衝撃波と共に使ったなら……。

「あああもう……。どうなっても知らないわよ」

俺のやる事を瞬時に理解してくれた鈴はスラスター以外の場所を選んで希望通りの事をやってのけてくれた。さすが代表候補生。

『零落白夜』を発動させて箒に向けた右腕を肩から切り上げる。

スピードが出すぎたためにアリーナのシールドにまで白式が衝突するが、計算道り。

あのお邪魔虫野郎が残った左腕を向けるが、

「…狙いは?」

「完璧ですわ」

俺がぶつかった場所はピット。そこにはセシリアのISが待機状態で待ち構えている。そしてシールドは『零落白夜』で切り裂いたばかりだ。

ブルー・ティアーズのライフルが切り口に、ビットの攻撃は破損した部分を重点的に、そして鉄屑に変えられていく。

ほとんど原型を留めていない状態を確認すると、箒の下へと移動する。

まったく、今回は上手く行ったしアイツの注意を逸らされたからよかったものの、一言いっ…
―――警告 敵再起動を確認 ロックされています。

ミスった。相手は兵器。人が乗っていないのだから僅かでも使える回路さえあればあの一撃が来る。

そして俺に死への旅立ちを送る最大出力のビームが迫り来る。

それを遮ったのは、一機のIS。


「たとえ変えられない運命の星の下に生まれても、僕は君の事守る楯になるよ。
―――『アイギスモード』起動」






後書きのようなもの
次回はシリアスのみ……のはずです。また、独自解釈が多い予定。
クロス作品を考えたときからやってみたいシーンですが、年末年始で仕事の予定がびっしりです。
しばらく更新できないかも……?

今回のネタは、たぶん大体の方は知っていると思われるFateの背中で語る漢の台詞。
たまたま会話でスムーズにでて来ました。

最後の台詞は恋楯のオープニングの歌詞をいじった物です。やはり主人公には決め台詞が必要です(偏見)

年末にかけて下手したらPCを起動する時間も無いかも(号泣)
出来るだけ暇を見つけては進ませます。




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