小説『IS 戦う少年と守護の楯』
作者:天地無用生もの注意()

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4話 学園生活開始

試験が終わったらいつの間にか入寮していた。
筆記はともかく、実技はその日のうちに合否判定が出るらしい。
一応海外からも入学希望者がいる為にそういった措置をしているらしい。
腕の良い操縦者が帰国後に狙われないようにとの事。
おそらく、過去に織斑一夏が誘拐された為の処置だと思われる。

学園内部はさすがに無理だったが、寮内の事は図面以外の事を頭に叩き込めた。
廊下の観葉植物やら大ホールの調度品、ボイラー室なんかも見る事ができた。寮長が織斑先生だった為に普段入れない所まで見せてもらえた。
大浴場は、立会いの下だったけど、そんなに信用無いかね?

こうしてみると意外と死角が多いこと。
その分あちこちに護身用品を仕込んで置いといた。
ただの棒なんですけどね。使われない事を祈ろう。

それと俺達の部屋は予想通り隠しカメラと盗聴器が設子の手で発見された。
その事を課長に報告すると、「修ちゃんの活動報告と部屋に侵入者がいるかもしれない為だ」と言っていたが、
寝室とシャワー室、それに何故か簡易キッチンにもカメラが仕掛けてある事の説明を求めたが、
「せっかくの同棲なんだからさ、それにキッチンで、はだ」途中で切らせてもらいました。で、機材だけは徴収させてもらった。
あのエロ親父め。
ちなみに束も同罪なので、エライヤに1つシステムを組んでもらった。使わない事を祈る。


校舎に入れる日。つまりは学園初日。そして一年間は勉学を共にするクラスは殺気……ではなく、緊張に包まれて誰も一言も発していない。
原因は中央最前列。
おそらく公式の生徒の中で唯一の男。
俺は……イヤ。あたしは気持ちだけはわかります。
挫けそうなんですよね。周りの視線もそうですが、男が入り込んでいないこの匂いというか雰囲気。
しかも、興味はあるけど誰も話しかけてこない状況。痛いほど良くわかります。

そんな緊張に満ちたクラスで自己紹介が始まった。
あたしは窓際後ろの席。設子は中央よりちょっと廊下でしかもターゲットの斜め後ろ。
名前の順だと思っていたら、もう1人のターゲットである篠ノ之箒があたしと同じ列の先頭に座っている。
いまいち規則性が無いが、あたし達にとってはちょうどいい席順のようですね。

「以上です」
ずっこける女子多数。意外とノリが良いな。
その隙(?)を付いて、パアンッ。と振り下ろされる出席簿。

「げえっ、関羽!?」
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」
織斑先生、いつの間に? そう、そして、どちらかというと刀を使うから土方歳三……。
え? あたし見られてる? ヤバイ・マズイ、ニゲナイト……。


気が付いたら一時間目が終わっていた。
いったいあたしは何があったのだろう? 誰かと会ったような?

ターゲットに接触しないと。と、ひとまず設子さんの元に立ったのだが、

「妙子さま、先ほど箒さまと一夏さまは連れ立って廊下に」

ああ、設子さん相手だと癒されるな。
とりあえず、あたし達が仲が良い事だけでも見てもらうしかないみたいです。


二時間目での内容はほとんど覚えていない。
とにかく一夏が役に立たない参考書を古い電話帳と間違えて捨てて、織斑先生に出席簿アタックをくらった事だけは覚えている。
もしかしたら、あたしが作った参考書のシステムが役に立つかもしれない。
これを機に顔見知り程度にはなれるかも。


「ちょっと、よろしくて?」

そう言って一夏に話しかけたのは豪奢な金髪を蓄えた外国人の少女。
確か彼女の名前はセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生。あたし達と同じ専用機持ち。
念の為ISを所持している各学年の専用機持ちについては、任務上、不確定要素になる可能性があるため簡単なデータとして頭に入っている。

「悪いな。俺、君が誰か知らないし」

が、一夏は知らなかったらしい。まぁ、あたしも資料をもらうまで知らなかったし興味は無かった。
とはいえ、一夏の思いが通るほど彼女のプライドは安くはなかったらしい。
ついでに一夏は代表候補生というものも知らなく、セシリアの怒りに暗い炎を燃やさせている。。
彼女「これだから男は……」と蔑むように呟いて、ひとつ咳払いをすると、どうにか落ち着いたようだ。

「わからないことがあれば、まあ……泣いて頼まれたら教えて差し上げてもよくってよ。何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」

え!?、それはすごい。専用機持ちの代表候補とやらの警戒レベルを上げなくては。視線を向ければ、設子さんも頷く。
だが、そんなあたし達をよそに一夏も少し不思議そうな顔をしながら――

「俺も倒したぞ、教官」

「は……?」

「なんですと!!」

思わず口に出してしまったのだが後には引けない。

「あ、ごめんなさい。あたしなんか、5分位しか持たなかったので……」

「まぁ! それはそうでしょう。わたくしはエリートですから」

―――悔しいが、パッとでのあたしと違う。

「でも、すごいですよね。
あの織斑先生に勝ったのですから―――」

ああ、泣きそうだ。

「え?」
「は?」

まずいぞ。このままではガーディアンとして役に立たない……。


   ◇  ◇  ◇


「あの織斑先生に勝ったのですから」

そう言って目の前の女の子は机に両手を着いてうなだれている。

千冬姉に勝った?
どうやったらそんな馬鹿な想像ができるんだ。
相手はあの最強の生き物だぞ。
それに、5分しか持たなかったって言っていたよな?
道場に通っていた頃でも、1分も持たなかったんだぞ。

「妙子さま。全員が全員織斑先生と戦った訳じゃないですよ。
わたくしは元代表候補で、織斑先生の後輩の方とでしたから。聞こえていますか?」

そう言って慰めているのは、確か俺の近くの席の子だ。

「・・ままだ・・・が。・・か時間・・・・・ず。・・・地獄・・・・」

何かすごく物騒な単語を呟いている。

「ええと、わたくしは真田設子と申します。
よろしくお願いします。一夏さま、セシリアさま」

い、一夏さま?

「い、いやいや。俺のことは一夏でいいです。
それで、その人は……」

「わたくし達は『アイギス』のテストパイロットなのです。
 と言っても、2人ともISに触ったのは2ヶ月前からなのですが……。
 妙子さまは、ある人に憧れてガーディアンの道に入ったのですが、
 一夏さまが、教官に勝ったと聞き、きっと自分の不甲斐無さを感じているようです」

「ちょっ、ちょっと待ってもらいます?
 たった2ヶ月で、あのブリュンヒルデと5分も?」

さっきまで俺に食って掛かってきたセシリアさん? だったよな? が、喚いている。どうでもいいけどまた「さま」付けなんだ。
俺は休憩時間はゆっくりしたかったのだが、この分だと無理そうって言うか時間的に無理だな。

「はい。妙子さまは頑張り屋さんですから」

頑張り屋だけで済ますのかこの人? 
後で、妙子さんに教えてあげないと。
あの生き物は、本当の意味で規格外の生物なんだからな。

「・・織斑先生・・・、ISの・・訓練・・許可を・・・」

妙子さんは沈んだまま席に戻っていった。
元気出せよ。俺には見守る事しかできないがな。

「えーと、真田さん? 妙子さんに気を落とさないようにと伝言してもらえますか?
 弟が言うのもなんだけど、千冬姉は普段はアレなんですが、戦う事になったら俺なんか瞬殺されると思うので、気にしないほうがいいですよ。って」

慰めではなく、千冬姉と一般人を一緒にされたら困る。

「わかりましたわ。ですが、妙子さまは一途な方ですからガーディアンを目指している以上。
 あら、もう時間になりますわね」

キーンコーンカーコーン。

うんうん。設子さんすごいな。こういうのを天然のマイペースって言うのか。
昔っから俺の友達は我が強いから、この人みたいなタイプは居なかったな。

「っ……! また後で来ますわ! 逃げないことね! よくって?!」

そう、俺の周りの奴ってこんなんばっかり。



後書きみたいなもの

妙子さんは設子さん以外と始めて模擬戦したのが千冬さんです。
なので、千冬さんの強さが基準となっています。
ちなみに千冬さんは、本気は出していないけど自身の動きの確認なので手を抜いてはいないです。
その結果、すっごく大きな勘違いです。

前回、試験終了後に寮へ。何も考えないで書いてしまった。
しかし、タグにご都合主義と付けているので、何とか不自然にならないような学校の設定にしました。
ご都合主義。なんて素敵な言葉なんだ。

-4-
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