一応、前書き
今回は1人の主人公である一夏視点も入っています。(プロの作家さんはすごいです。アマでもすごい人はいますが)
おいらは曖昧な表現から読者が推測するのが好きなタイプなのですが、残念ながら力量が不足なのです。
また、原作とはかなり台詞が違う面もあります。詳しくは後書きにて。
5話 護衛は影の存在なのに
一、二時間目と違い三時間目は千冬姉が教壇に立っている。
―――なんで家だとだらしないのに身内以外が居るとカッコつけるのだろう?
身内以外は興味を持たない束さんと同じようなものか?
「織斑。何か失礼な事を考えなかったか」
「イエイエ。そんな事ありません。授業を始めましょう」
疑問型じゃ無かった。サトリの妖怪かよ。
「ふん、まあいい。授業の前にクラス代表者を決めないといけないな。
クラス代表者の仕事は、生徒会の開く会議や委員会への出席。教師との連絡。……簡単に言うと私の雑用だ。
だが、その分クラス対抗戦というものがあって、ISに係わる事が多い。この学園に入ったのならその意味はわかるだろ?」
そう言うと何故か悪役代官のようにニヤリと笑った。
我が親愛なる姉上様、本音と建前が口に出ていますよ。
「どうやら、理解していないド阿呆が居るようなので改めて説明しなければならんようだな。
いいか? 改めて言うがクラス代表とはこの1組の……、そうだな。首相や大統領だと思えばいい。
当然他のクラスや、外部の人間と知り合う事も多い。そこでこのクラスの基準となるのがクラス代表だ。
無論相手はIS関係者や場合によっては国の方針を決める地位に立っている人物もいるだろう。
実力と運さえ良ければ専用機を持つ事もある。
自薦他薦は問わない。ただ、あまりにも使えない人物なら私が却下する」
何処の独裁者だ。ま、俺には関係な―――
「はいっ。織斑くんを推薦します!」
「ふむ。一応理由を聞いておこうか?」
はい生贄1人入りましたー。ってか? オリムラって奴には悪いが頑張ってくれたまえ。
「えーと、今の段階ではISの操縦技術にそんなに差は無いと思います。
なので、話題性を取って『唯一の男性操縦者』の織斑一夏くんを推薦します」
「お、俺!?」
「織斑。邪魔だから座っていろ。自薦他薦は問わないと言った。他薦された以上拒否権などない」
「なんて横暴」
パアンッ!
ひたひ。
「だったら……。そうだ! あの妙子さんって人を推薦します」
おや? 独裁者が困った顔をしている。レアだな。写メしとくべきだった。
「山田。いいか?」
「ひゃい?」
「先輩。私は副担任なんですけど」
バシ。
「山田先生。学生気分が残っているようですね。後で軽い運動に接近格闘戦やりましょう。
やま―――いや、山田妙子を推薦する理由を聞こうか? まさか自分がなりたくないという理由なら却下するぞ」
「えっと。そうだ!! 実技の試験でちふ・・。織斑先生に5分間も耐えられたって聞いたので、それならクラス代表に十分かと」
あぶねえ。もう少しで殴られるとこだった。下手したら山田先生と同じ運命になるかもしれない。
「あた、あたしのISはほとんど防御しかできないので辞退したいのですが」
『あたしのIS』って事は専用機持ちなのか? よし! さらに確立が下がった。
「それだけだと、辞退する理由には弱いな」
なぜ、千冬姉はいつもの独裁政権を発揮しないんだ?
これだとまるで、妙子さんに代表をやって貰いたくないような……。
「仕事、そうです。たまに『アイギス』から仕事が入る場合もあるので、クラスに迷惑がかかるかなー? って」
おしい。残念ながら、千冬姉だったら、「それぐらい気合で乗り越えろ」って、言うにきまっ 『バンッ』
ばん?
振り返るとさっきの貴重な休憩時間を潰してくれた、あのセシリア何とかさんが立ち上がって肩を震わせている。
トイレか? ダメだぞ。休憩時間を大切にしないとな。
「納得いきませんわ! 大体、男がクラス代表に、それにそちらの方はISに触ったのが2ヶ月だって話じゃないですか。
わたくしに、この代表候補生のセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
出たな、女尊男卑。こういった奴は嵐が通り過ぎるのを待つほうがいいんだよな。ムカつくけど……。
「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そして、実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然」
なんかヒートアップしてきたぞ。カルシウム不足か? ダメだぞ。牛乳と小魚はきちんと食べないと。
俺も食べないといけないけどさ。さすがに煮干を持ち歩いているわけじゃない。
「大体、冷たい麺を音を立てて食べるのが通だというこの国で暮らす事が、わたくしにとっては耐え難い苦痛で―――」
もいいか?
「だったら国へ帰れよ。イギリスだって有名なのって言えばローストビーフくらいだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」
「あのー……」
「あ、あなたねえ! わたくしの国は美食よりも優雅さを優先にしているのに、それを理解した上で祖国を侮辱しますの?」
セシリアさんの声のトーンが落ちていく。
やばい。やっちゃったよ。本気で怒らせちゃった。
「あたしの声、聞こえていますか〜?」
山田妙子さんだっけ。小さく手を振って存在をアピールしている。
「決闘ですわ」
「すみませーん。そろそろ織斑先生が……」
え?
「しかし、最近の餓鬼どもは元気が良いな。私の時間中に囀るなんて感心を通り越して呆れたな。
それに話し合いだけではしこりが残りそうだ。それでは一週間後の月曜日。放課後、第三アリーナで模擬戦をしてもらおう。
そうだな、セシリア・オルコット。仮にも代表候補生なんだ、相手は素人なんだ二戦してもらおう。それくらいはかまわんのだろう?
織斑一夏と山田妙子はそれぞれ準備しておくように。それでは授業を始める」
ぱんっと手を打って千冬姉が話を締める。俺はともかく妙子さんには申し訳ないことをした思いで席に着く。
後で妙子さんに謝らないとな。
◇ ◇ ◇
俺は力尽き机にへばりついたスライムのごとく力が抜け切っている。
授業も着いていけないのもそうだが、妙子さんに謝る機会を取れなかった。
俺は悪い事をしたら罰を受けてもいいからすぐに謝って、後腐れが無い方法しかやった事がない。
時間がかかればかかるほど、溝が大きくなっていくと思っているからだ。
休み時間の度に妙子さんに会いに行くが全て空振り、仲の良さそうな設子さんに聞くと、「織斑先生の下へ。用事があるとの事ですよ」と言われ今日が終わってしまった。
「ああ、織斑君。まだ教室にいたんですね。よかったです。
えっとですね、寮の部屋が決まりました」
「あれ? 一週間は通学してもらうって言う話だったんですけど」
「政府の特命もあって織斑君には安全が確認されるまで学園から出ないほうが良いとなってしまいまして。
申し訳ないですけど、しばらくは相部屋になってしまいます。もちろんできるだけ早く個室に移動してもらいますから」
そういえば、束さんじゃないけど、「実験体になってくれ」って言ってきた奴も居たな。
「分かりました。でも、一度家に戻って荷物を―――」
「私が手配しておいてやった。ありがたく思え。
着替えと携帯ぐらいで十分だろ? ふむ、こう考えると入院患者と同じようなもんだ」
病気を治すのと学園生活を一緒にしないでくれますか。日々の生活には潤いってのが必要なんです。
そう思って大雑把過ぎる姉を見ると、横には妙子さんが苦笑して立っていた。
良かった。これで謝れる。
「なんだ? 私を見るより山田妙子を見たほうが安心するのか?
変な気を起こすなよ。こいつはガードを目指している。おそらくお前よりも強いぞ」
「イヤイヤイヤイヤ。そうじゃなくて、今日巻き込んじゃったから謝らないとと……」
「あのー。さすがにそこまで否定されるとちょっと」
「織斑君。もしかして、女性に興味が無いんですか? そ、それは問題ですよ!?」
山田先生、そこまで思考を飛ばさなくても。しかも大声だし、まだ人が残っているのに。
「織斑君。男にしか興味が無いのかしら?」
「中学時代の交友関係を洗って!! 明後日までに裏付けを―――」
ほらね。
……妙子さん。一歩引いたのはわざとですよね?
「そういうことなら、山田妙子。寮まで案内してやってくれ。どうやら、安全なようだ」
姉上様。そうやってからかうから余計に酷くなるんです。いつかきっと……。
「分かりました。一夏さん、大丈夫です。世の中にはきっと理解してくれる人もいますよ。
前の学校でそういう人が生物の教師をしていましたから、きっと大丈夫です」
ネタですよね? 分かっていてやっているんですよね?? 目がちょっとだけ真面目なのは止めて下さい。
「生物教師? もしかして、白衣にメガネ? GJよ。山田さん」
「白衣は着ていましたが、メガネはしていなかったですよ」と廊下に向かってとてもイイ笑顔で答える。
「大丈夫だ。問題ない。妄想は全てを変えるの」
「そうよ。紙とペンさえあれば心象風景で現実世界を塗りつぶし、内部の世界そのものを変えてしまう事ができるのよ!!」
餌を上げないで下さい。そして最後の人は封印指定されてください。
「ま、一夏さんの困った性癖はともかく。寮に行きましょうか?」
「妙子さん。意外とノリがいいですね。あと、俺のことは一夏でいいですよ」
妙子さんはクスリと笑うと、
「一夏さん。それってナンパと考えていいのでしょうか? 今日会ったばかりで呼び捨てなんて。先生の前で勇気がありますね?」
「そうくるのかー!! 絶対分かっていて言っているだろ!!」
フフッと笑って千冬姉の後ろに身を隠す。
もちろん出席簿アタックをくらったのは言うまでもない。
◇ ◇ ◇
「そういえば、一夏さんの部屋って何号室になるのですか?」
今のところ本当の意味でガードしなければならないのが、織斑一夏と篠ノ之箒だ。
設子と事前に話し合いあたしが一夏さん。設子が箒さんを主に担当する事になっている。
やはり同性の方が行動パターンが読みやすいとの意見だ。
―――決して女性が苦手な訳ではない。セント・テレジア学園で少しはマシになった。と思う。
「えーと、1025室だな。あ!!!」
鍵のタグを見ていた一夏さんが「思い出した」と言ってあたしに頭を下げる。
「ごめん。俺とセシリアさんの喧嘩に妙子さんを巻き込んでしまって。すみませんでした」
あ、そういえば来週の模擬戦の元凶だった。
でも、そのおかげで行動が特定しやすくなったし、こちらとしてもISの訓練がしやすくなったのも事実。
「うーん。謝る相手が違いますね。
まずはセシリアさんに謝りましょうよ」
そういうと一夏さんはすごく不機嫌そうな顔になった。
「一夏さん。食文化だけはどうしようも無いんです。
他の国に言わせれば、納豆だって腐った豆なんですよ。蛸だって、デビルフィッシュだし。
生理的にダメなものがあるんです。
虫の幼虫なんて意外と美味しいんですよ。そうじゃないと鳥が食べませんしね」
少しは納得してくれたのか考える顔になっていく。
「あら、妙子さまに一夏さま。今帰ったのですか?」
寮の廊下を歩いていると設子さんが挨拶してくる。
「ええ、一夏さんはどうやらあたし達の隣の部屋みたいですよ」
「それは良かったです。男の方が近くにいれば何かあったときに頼りになりますからね」
「妙子さんと真田さんは同じ部屋なんだ。もしかしたら迷惑をかけるかもしれないけどよろしく」
「わたしの事も妙子さまと一緒で設子でいいですよ」
さっきのナンパ呼ばわりされた為か笑って誤魔化している。
そして、手を振って一夏さんは部屋に入っていく。
さて、あたし達も情報交換する為に部屋に戻りますか。
部屋の鍵を閉めると、やっとスカートから開放される。
慣れてしまったが、やっぱり精神的にキツイんだよ。
「修史。ターゲットの人柄は? 模擬戦はどうするんだ?」
「織斑先生と話したんだが、日曜辺りに訓練の途中で怪我をして不戦敗にする事にした。
潜入して仕事だけでも精一杯なんだから、これ以上仕事はしたくない。
それと、織斑一夏はいじると面白いぞ」
「課長に似てきたな」という声が聞こえたような気がしたが、心外だ。
何かあると困るから、制服から女物の洋服に着替えている途中で、隣から一夏の叫び声が聞こえた。
慌てて外に出ようとするところで、設子に肩をつかまれる。
「設子。何をする気だ?」
「アレは織斑が篠ノ之のシャワーから上がった姿を見たんだろう。まったく不埒な奴だ」
「設子。お前狙っていたんだろ? まったくどっちが課長に似てきたんだよ」
設子はニッコリと笑うと、
「妙子さま。たとえ不可抗力でも好きな方に迷惑をかけた以上、ちょっと仕返しをしたくなるのが女心ですよ」
やっぱり女って苦手だ。
後書きみたいなもの
セッシーの台詞が原作とは大幅に変わっています。
一夏のヒロイン候補のセッシーはあの一言が無ければ、それなりに良いヒロインになると思ったからです。
ちょっと高飛車だけど努力家でツンデレ?
それを台無しにしたのが、あの登場場面。ちょっと可哀想なので変えてみました。
でも、おいらはシャルロッ党ですけどね。
ムラマサ様コメントありがとうございます。
恋楯のエンディング後の設子さんがイマイチ固まっていなかったので、
ちょっと嫉妬心のあるキャラにすることにしました。
―――その方が面白そうだから。(妄想はネタにします。というかこの話だって妄想から生まれましたからね)
また、コメントの内容(おいらの中で変換されたもの)をネタにするかもしれません。よろしくお願いします。
次は日常編。セッシーとの和解する予定です。
個人的にはフェアーな戦い(驕りの無い戦い)の方が好きなので。