小説『IS 戦う少年と守護の楯』
作者:天地無用生もの注意()

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前書き
もうすでに原作の流れを無視していますが、甘い話やドタバタ劇をやりたいので授業風景の一部とくっつけました。
ま、そこは|天地無用生もの注意≪タコ≫(読み専のつもりだったので下らない名前。たこ焼き食べているときに作りました)らしく進めていこうと思います。




7話 織斑先生の個人授業(?)

月曜日の放課後、第三アリーナにて、織斑先生が教師用のアリーナ管理室であたし達を前に歩いている。
なんと言うか、上官と一般兵。此処は軍隊ですか?

「3人とも時間通りだな。さて、実は問題が2つ出てしまってな。
見て分かるように山田妙子は怪我を左腕を負傷している。
それと、織斑の専用機がまだ届いていない」

あたしの怪我は半分はワザとだが、現場を見ていた一夏さんや箒さんの表情は痛ましい。

もちろん彼らには責任が無いのだが、設子さんとの組み手を見ていたからひとつ間違えれば大惨事になるところだった。
ちなみに設子さんがあたしの手首を取り、肘をつかんで外に向かって投げたところ『運悪く』頭から落ちそうになった為、
逆さまの状態で設子さんの肩に膝を当てて、二人とも畳の上に倒れた。

そのとき、『何故か』体の下に腕が入っていて2人分の体重がかかった為に、今は大事を取ってテーピングで固定してある。

だが、さすがに一夏さんの専用機は予想外だった。

「だが、アリーナの使用時間は限られている。さて、どうするか?」

日本人は時間に厳しいけど、モノがモノだけに安全第一だから仕方が無いか。

「織斑先生。提案なんですけど、いいでしょうか?」

「なんだ? 試合前日に怪我した馬鹿者? それにその腕では模擬戦も出来ないではないか。
体調管理もクラス代表として必要な事だぞ」

ちょっと、それは酷いですよ。元々怪我をする予定にしていたじゃないですか。

「それに関しては、すみません。
せっかくですから、セシリアさんのウォーミングアップと一夏さんへのISでの模擬戦の見学。
それに、あたしはISをあまり使っていないので、練習できればなー? と言う一石三鳥の案があるんですけど」

初めにこの提案に喰らいついたのは一夏さん。

「え。マジで? ISの戦闘なんてろくに見たこと無かったから助かる」

箒さんはあさっての方に顔を向けた。確かずっと剣道場に居たんだからISに触れていないはず。

「織斑、口のきき方に注意しろ。わざわざ怪我人がお前のために実演してくれるんだ。
それ相応の言葉があるだろう? オルコット。お前はどうだ? もちろん手の内を全て晒さなくてもいいぞ」

「そうですわね。この場合ハンデというよりも調子を確かめるという意味ではいいと思いますわ。
それに此処ならば、設備も揃っている事ですし一夏さんの十分に勉強になると思います。
ここはひとつ、イギリスの代表候補生の懐の深さをお見せしましょう」

「お。そいつは助かる」と言って完全に観戦モードになっている。
そんな態度で大丈夫なのか? と思っていたら、目だけはアリーナ内の刻々と変わる状況を伝えるセンサーを追っている。
こうして見ると、顔つきは織斑先生と一夏さんは姉弟なんだなと改めて思う。
普段はアレだけどさ。

「む? なんだお前ら。この前とずいぶん雰囲気が違うじゃないか?」

「あれはわたくし達が大人気なかったので、ちょっと反省して……ねぇ?」

少しだけ気まずそうに見たので、あたしも苦笑して返した。




セシリア・オルコット。
イギリスの代表候補生。専用機は第三世代の『ブルー・ティアーズ』
射撃を主体とした機体でイメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器ビットで、相手の死角からの全方位オールレンジ攻撃が可能。
以上が学園のコンピュータに記載されていたモノ。

先日アイギスからセシリア・オルコットの追加資料を頼んだ結果がその日のうちに届いた。
まったく、初めから用意してあるなら渡して欲しかった。

それによると、セシリアさんの背後関係はシロだった。
どうやら両親を列車の事故で亡くし、親族関係で問題があったらしいが、男嫌いと言うより弱みを見せる事ができなくなったそうだ。
それでも、全てにおいてフェアプレイでトップ成績を収めているのだからかなりの努力家のようだ。
今のところターゲットに危害を加えるような事態にはならないらしい。

結局のところセシリアさんしだいだから、予測でしかないが今の関係が続く方がいいに決まっている。

でも、怪我をしているのにやる気満々の関係は続かないで欲しい。

「話だけは伺っていたのですが、その機体は珍しいですわね。
『アイギス』という警備会社が製作したのですから、性能重視だと思っていたのですが……。
普通の機体は空中戦を想定しているために脚部のパーツは大きくなるのですが、貴女の『エライヤ』はずいぶんと小さいのですね。
その分、胸部がしっかりとガードされているようですし。
なんと言うか、ISというより神話に出てくる。ヴァルキリーのようですわね」

色々と事情があるんです。あまり突っ込まないで下さい。
束曰く。
「タエちゃんは、なんだかんだ言っても男だからおっぱいが無い分、隠さないといけないし。
どうせなら高性能のスラスター付けちゃった。その方が男だってばれないしね。束さんって気が利く〜♪」
―――無駄な所に力を入れて欲しくなかったな。

「では、一曲踊りましょうか?
あら? 一夏さんのISも届いたようですし、お手本となる試合にしましょう」

センサーが告げるのは、ピット内に待機状態のISを感知した。

操縦者 織斑一夏
ICネーム 『白式』  戦闘タイプ 近接戦型  特殊装備有り―――

確かに。
一夏さんはどうやら自分の|機体≪楯≫を手に入れたみたいだ。ならば後はその機体を上手く動かせるように踊りましょうか。
腕が痛いけど……。


    ◇  ◇  ◇

世の中には大雑把に分けると、運の良い人と悪い人がいる。

今の俺は妙子さんには気の毒だけど運が良いんだろうな。
そして、妙子さんは相当運に恵まれない人らしい。
昨日は腕を怪我したし、今日は俺の専用機が届かないからと言って、ISの戦闘を実演してくれる。
そんな心遣いをしてくれたばかりだと言うのに、いざ始まると思ったときに専用機が届くなんて……。

「ふむ、ちょうど良い。山田先生、このアリーナでの出来事を全て記録してください。授業に使えそうです。
さて、織斑。ISが何故空中戦ができるか答えてみろ」

え? こんなときにも授業が始まるの?
俺は白式に体を預け|最適化処理≪フィッティング≫をしながらアリーナを観察していたのに。

「えーと。ISは元々宇宙空間での活動を想定して作られたマルチフォーム・スーツ。
そのために、宇宙空間で単体での移動が必要な為、兵器として作られた第一世代からISならば必ず有するもの。です」

織斑先生の手に持っていた出席簿が机の上に置かれた。
千冬姉。間違っていたら絶対叩くところだったろ?

「む? 何か言ったか?」

「いえ。織斑先生何も思っていません」

「ほう。ということは、何か失礼な事を思ったんだな?
だが、先ほどの答えが間違っていない。どうやらきちんと勉強はしているようだ」

妙子さんありがとう。貴女が渡してくれた『ISの参考書を読む為のソフト』が役に立ちま、ガツ……。

「などと言うと思っているのか? この馬鹿者。学生は勉強が仕事だ。お前の考えなどお見通しだ。
オルコット、山田妙子。この馬鹿に自分がやっている事を説明しろ。
いいか? 相手はまったくのド素人だ。小学生にでも分かるようにしろよ。出来なかったらお前達を教科書を覚えただけの愚か者と扱う。
では、互いに普段使う武装を展開しろ」

『はい』

オープンチャネルで声が聞こえたと思った瞬間にセシリアさんの手には狙撃銃が光と共に現れた。
妙子さんの方は少し遅れて光が収束して槍が握られている。

「遅い。0.5秒で出せるようにしろ。
オルコット、お前は誰を撃つ気だ? シールドに阻まれているが、そこは一般人がいる場所だぞ」

『で、ですがイメージをまと』
「直せ。お前が手にしているのは武器だ。いいな」

一言でで切り捨てた。容赦ないな。
ええと、俺の武器は……。『ブレード』―――これだけ?

「次は、飛べ」

いや、いくらなんでもその言い方は無いだろう。

セシリアさんはその姿勢のまま急上昇して行くが、妙子さんは膝を折り曲げて地面を蹴るように上昇した。

「二人ともそのままの高度で待機していろ。
織斑、飛行時に必要な事はイメージだ。自分の想像しやすいイメージを固めておけ。
オルコットに山田妙子。お前達のイメージするものはなんだ?」

『わたくしは蝶のイメージが多いです。遠距離からの狙撃が多いのでその場にとどまる為です。
蝶のように舞、蜂のように刺す。これが私のイメージですわ』

『あたしはそこに地面があると仮定してそれを蹴って、……後はイワシです』

イワシだと? 俺や箒ですら口を開けている。
さすがの千冬姉も変な顔をしている。

「分かった。次は急降下と完全停止だ。目標は地面から10センチだ」

セシリアさんは目標ぴったりに急停止したが、妙子さんはふわりと降りた。

「山田妙子。完全停止といったはずだが?」

『すみません。どうしてもタコの動きが……』

今度はタコだと?
千冬姉ですら固まっている。

「織斑先生。妙子さまは飛行訓練が上手く行かなかったときに海中で模索した為に、海中生物の真似をして……」

「―――まあ、イメージは人それぞれだ。
後は適当にやれ。こちらでは講義をしている」

『『ハイ』』

セシリアさんが浮かび上がってからの戦闘はすごかった。
妙子さんが楯を使いレーザーを受け止め、そのまま接近戦に持ち込もうとすると、2基の射撃ビットがその手を阻む。
最初のうちは楯を次々と動かして全てを止めていたが、空中戦に慣れたのか、回転しながらの移動によりシールドエネルギーを消費しなくなる。
それでももう一歩が届かない。

「すごいな。あの動きってイワシよりもイルカみたいだ」

「確かに。だが、あの間合いだと槍が届かないぞ。エライヤには射撃武器は無いのか?」

「おい、アホども。あいつは腕を怪我しているんだぞ。そんな状態でまともに当てられるか」

「ですが、織斑先生。あのままでは勝てないのではないでしょうか?」

箒が不満気に言葉を出す。

「篠ノ之。まさかお前までそこの馬鹿と同じだとは思わなかったぞ。
山田妙子は勝つために試合をしているわけじゃない。あいつはさっきISに慣れるためにやる。と言ったはずだ。
それに手が無い訳じゃないぞ……」

あれ? もしかして俺のこと馬鹿って言った?
確かにそうだけどさ。

「オルコット、山田妙子。そろそろいいだろう。
山田妙子はピットに戻って、念の為腕の治療をしておけ。オルコットは20分後に織斑と戦ってもらう。
それまで休んでおけ。良いな?」

『『ハイ』』

返事が終わる前に千冬姉が部屋を出て行った。
その後ろを当然のように設子さんがついて行く。

「山田先生。織斑先生が言っていた方法とはなんでしょうか?」

あ。それは俺も気になる。

「えーとですね。織斑先生はブレード1本で世界一になったんですよ。
そのとき使ったのがダブル・イグニッションと言われる方法なんです。
あ、でも同じ事が出来るのは公式戦を見た限りいまだいませんね。ですが、イグニッション・ブーストだけでも間合いを詰められますよ」



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