小説『「夏の日と、幽霊と、かみさま 」』
作者:hj()

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終章


「もう行くな」

何もないところに向かって、別れを告げた。
見えないけれど、多分、少女はそこにいるのだろう。
笑っているのだろうか、泣いているのだろうか。それすらも分からない。
僕と少女との思い出だけが僕らを繋いでいた。
神社に背中を向け、階段を下りようとした、その時だった。

「ばいばい」

慌てて振り返った。背後でそんな声が聞こえたからだ。
成長することも変化することもないままの、少女の声だった。

「そこに……いるの?」

何もないところに向かって話しかける。
返事はない。けれど、少女の匂いがした。
少女はそこにいた。見ることはできないけれど、確かにそこにいたのだ。一分ほど呆けた様な顔で神社の方を見ていた。
うれしいような、悲しいような、変な感覚だった。けれど一つだけわかったことがある。
再び、神社に背を向ける。
笑っているのか、泣いているのかだって?そんなの決まっている。

「行って来る」

少女はいつも通りの笑顔だった
僕もいつも通りの顔で少女の手を振った



またいつか会えることを願って。

-7-
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