小説『祟り神と俺』
作者:神たん()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

コタツの部屋に戻るとテーブルの上に鍋が出来上がっている。


野菜が沢山入った味噌ベースの鍋のようだ。


すると、エプロン姿の熊さんが現れた。

あの図体にどうやって着けたんだ?と思うくらいにピチピチで
エプロンに描かれた熊の絵が死にそうになっている。

「翔。ビールでいいか??」

聞いてきたはいいものの、既に手には缶ビールを2本持っている。


「はい。ビールで大丈夫です。」

と、俺は答えた。

皆コタツに入り、沙織ちゃんが菜箸を手に鍋の中でいい具合に出来上がっている具材達ををよそってくれた。

その間に熊さんがビールを俺のコップに注いでる。


「ありがとう御座います」


「それじゃ翔が久しぶりに来た事だし乾杯するか」

と、熊さんが言い俺と熊さんはビールの入ったコップを、沙織ちゃんはお茶の入ったコップを手に持ち

「乾杯!」

熊さんの掛け声の後、三個のコップが鍋の上に集まった。


ゴクッ・・ゴクッと、喉にビールを通し唇の周りに付いた泡を拭き取る。


その後俺は「いただきます」と言い、沙織ちゃんがよそってくれた小皿を手に持ち
まずはお汁から口にした。

「うまい!」

咄嗟に声が出てしまう程本当に旨かった。

熊さんが誇らし気に言う。

「そうだろう。なんたって俺の得意料理だからな。」

沙織ちゃんは微かに微笑んでいる。


次に具材の方も口に運んだがこれもまた上手い。

すぐにビールを喉に通すと至福の時が訪れる。

だいぶお酒が回ってきた頃、熊さんが俺に話しかけてきた。

「翔。俺はお前なら奴の呪いを消し去る事が出来ると思っている。」

まったく予想をしていない一言だった。

「俺の家計のご先祖はお前んとこの封印を手伝った一人だ。」


初耳だった。まさかうちとそんな前から繋がりがあったとは・・


「お前んちの神様については親父に教えて貰ったか?」


「あ、はい。初代巫女様が自らを犠牲に封印したと。」


「そうだ。だがその巫女には何故神がいなかったかわかるか?」


「・・いや、わかりません」


「では巫女は誰が産んだと思う?」

「わかりません。」

「初代という事はそこから一族が繁栄したという事。だが初代はどこから生まれた?
今の時代最も古い先祖の歴史が初代と呼ばれたりする事も多い。元々人間は猿から進化
したとされているが、我々神道に生きる者は人間は神が創造したと言われている。
それと先程なぜ巫女には神がいなかったかと聞いたが、巫女とは神に祈りを捧げる者。
崇拝する神がいないのになぜ巫女などと呼ばれるようになったのか・・」


確かに言われてみればその通りだ。


「これは俺の憶測だが、巫女自身が神だったのではと思っている。」


「え??」


「いや・・正確に言うと神の力を持った人間てところかな。
巫女は不思議な力があったと言い伝えであるが、
具体的にどんな事が出来たかお前は知っているか?」


「・・親父からは不思議な力があったとしか教えてもらってないです。」


「巫女は未来を見る事が出来たらしい。」


もう話がSF染みてて全く理解が出来ない。


「未来を見るという事自体もはや神の領域だ。一歩間違えば未来を変える事だってできてしまう。
周りの人々からすれば神様に仕えし巫女としか言いようがなかったのだろう」

「まぁ結論から言うとだな、あくまで俺の憶測だが、巫女は神より創造されし人間であるが為
生まれもって神の力が備わってしまい奴の封印もする事が出来た。」

「だけど、俺が奴の呪いを払う事が出来るのとどう関係してるんですか?」


熊さんはコップに残っていたビールを飲み干した後、また口を開いた。


「巫女が使った禁忌の業の条件は親父から教えてもらったんだよな?」


俺は記憶を整理しながら答えた。


「確か奴の魂に触れる事が条件だった筈ですね」


すると熊さんは呆れた表情をしている。


「あいつめ、この期に及んで隠すつもりか。」


咄嗟に俺は「何をですか?」と聞いてしまった。

-10-
Copyright ©神たん All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える