小説『祟り神と俺』
作者:神たん()

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お風呂から上がり先ほどご飯を食べた部屋へ戻ると全て片付き、沙織ちゃんはコタツに居た。

テーブルの上には沙織ちゃんの可愛らしいパジャマが畳まれている。

次にお風呂に入る為、待っていたのであろう。

すると熊さんが、

「風呂空いたぞー。」

「じゃ入ってくるね。それとお父さんの部屋に翔さん用のお布団も敷いときましたから。」

「悪いな。」

「なにからなにまで有難う御座います。」

俺もお礼を言った。

すると沙織ちゃんは軽くお辞儀をすると、パジャマを持ち出ていってしまった。

「本当凄いですね。沙織ちゃんは。」

素直に思った事を熊さんに言ってみた。



「まぁ母親譲りだろうな。亡くなった女房も気が利くし、面倒見の良い女性だった」


そう語る熊さんの表情がどこか寂しげに思えた。

熊さんの部屋に入ると、綺麗に二つの布団が敷かれていた。

早速布団に潜ってみる。

フカフカで暖かく気持ちがいい。

熊さんが、

「それじゃ電気消すぞ。」

と、言うと部屋は真っ暗になった。

静寂の時が訪れる。

俺は目を閉じようとしたが、どこか怖かった。

また、奴が出てくるんじゃないかとの不安があったからだ。

だが熊さんは俺に言った。

「安心して寝ろ。あの力もまだ弱い。ここにいれば当分は何もおきんだろう。」

熊さんは本当に頼りになる人だから、何も起きない事を信じて俺は目を閉じた。

静寂の中に身を委ね、俺は眠りに落ちていく・・・・。





────────────。




どれくらい眠ったのだろう。

突然夜中に目が覚めてしまった。

まだ外は暗い。

だが寝るのも遅かったから今は4時くらいだろうか。

すると静寂の中から物音が聞こえた。


(なんだろう。今の音は・・)

なんだか気になってしまい俺は音のする方へ歩きだした。

ご飯を食べた部屋の前まで行くと光が障子から漏れていた。

障子を開くとそこには沙織ちゃんがパジャマ姿で立っていた。

「沙織ちゃんどうしたのこんな夜中に?」

沙織ちゃんは少し驚いているようだった。

「目が覚めてしまったので明日の朝食の準備でもしようかと。
翔さんもどうしたのですか?」


「いや・・俺も目が覚めてしまって・・・・物音がしたのでこちらへ」

そう言うと沙織ちゃんは軽く微笑みを浮かべた。

「それでは、寒いですしホットミルクでも作りますね。」

確かに寒い。ただ沙織ちゃんにそこまでして貰うのが申し訳なかったので
俺もキッチンへついていった。

「何か手伝います。」

一瞬断られると思ったが意外に断られなかった。

「それではそこのコップを二個取って頂けますか?」

俺は言われたとおり用意すると沙織ちゃんは金属製の小さめな鍋に
牛乳を入れ火を点けた。

沙織ちゃんは鍋の中を見つめたまま動かない。

あまりの沈黙に何か喋らなければと思うが話題が見つからない。

ただこの沈黙が耐えられず適当に話かけてみた。

「沙織ちゃんって何か好きな趣味とかある?」

小学生レベルの質問をしてしまった。

すると意外な言葉が返ってきた。

「この季節ですとスキーとか好きですわね」

俺は驚いた。てっきりそういったモノには興味がないと思っていたから。

「そうなんだ。俺もスノボーなら好きだな」

俺もそこまで上手くはないものの3年間くらいはやっている為そこそこ滑れるのだ。

だがそれを聞いた沙織ちゃんの目が輝いた。

「私も一度でいいからスノボーをやってみたいです」

「じゃぁ今度一緒に行こうよ!」

そういうと、とても嬉しそうに「お願いします」と返してくれた。

なんだか沙織ちゃんと少しは打ち解けられた気がする。

正直嬉しかった。

すると沙織ちゃんが温まった牛乳をコップに注ぎ俺に手渡してくれた。

「ありがとう。コタツで一緒に飲もっか。」

沙織ちゃんは微かに微笑みながら「はい。」と答えた。

コタツに入りホットミルクを口は運ぶ。

「久しぶりに飲んだけど美味しいね。沙織ちゃんが作ってくれたからかな。」

すると沙織ちゃんは少し頬を赤らめながら、

「翔さんて面白い方ですね。」と言った。

「沙織ちゃん少し照れてるでしょ?」

俺がふざけながら言うと、沙織ちゃんは少し慌てながら

「翔さんのいじわる・・」と小声で呟く。

その表情が堪らなく可愛かった。

咄嗟に俺は「ごめんごめん。」と笑いながら謝ると少し沈黙が生まれた。

だがその沈黙を破るように沙織ちゃんから口を開いた。

「スノボー楽しみにしてますね。」

俺は「うん。」と答えた。

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