小説『祟り神と俺』
作者:神たん()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

「ただいまー」

玄関を開けると同時におかんの声が聞こえてくる

「おかえりーどら息子」

まぁいつもの事だから反論しないがね。

リビングに行くと親父と長兄とおかんが夕飯を食べていた。

「あれ?次兄は?」

俺がそう聞くと、おかんが

「大学病院で泊まり込みの実習だから当分帰ってこないわよ」

と言ってきた。

そう。次兄は六年生の医大に通っている。

まぁ医者の卵ってやつだ。

次兄は医者、兄貴は親父の後を継いで住職。

俺はフリーター。

どう見ても出来損ないの俺。

まぁいいけどな。

親父と長兄はというとテーブルの上に空になった5本のビールの缶を
見て相当酔ってるのが伺える。

そんな事を考えていると親父が

「翔もこっちにきて飯食え。どうせ何も食ってないんだろ」

そうそう。俺の名前は翔って言うんだよ。
在り来たりな名前だろ?

「おう。」

席に着くと早速おかんがカレーライスを出してくれた。
ただ飯を食う前にビールが飲みたい。

「おかんビール頂戴」

おもむろにおかんに言うと、

「就職したらね」
と返ってきた。

もはや反論できない。
しぶしぶ目の前に出されたカレーライスを食べ始めた。
そこで今日の出来事を話してみた。



────────。




占い師の話を一通り話終えるとおかんが言ったきた。


「水晶玉にヒビが入るなんて不吉ねー。気をつけなさいよ」

それと刀について親父に聞いてみた。

「そういや親父さぁ、神社の奥に祭られてる刀ってなんなん?」

そう言った瞬間、親父と長兄が固まった。

何かまずい事聞いちまったか?と不安になったが
少しの沈黙の後、親父が口を開いた。

「そうか、お前覚えていたのか。まだ小さい頃に見せただけだから
忘れてしまったと思っていたがな。でも、あれについては息子のお前でも
教える事はできん。あれは代々この神社を受け継ぐ物に語り継ぐ掟なんだ。」

そう言うと親父は続けて話し始めた。

「いいか。絶対にあの刀に興味を持つな。近づいてもいかんし、口外もするな。忘れろ。」

そう言い終わると親父はリビングを出て行ってしまった。

親父があんな真顔で言うとはよほどの事なんだろうな、と理解した。
ふと、長兄に視線を向けた。

「長兄はもう知っているのか?」

すると長兄が、

「あぁ。知っている。それ以上聞くな」

なんだか、一気に重い雰囲気になってしまった。
俺の中でもう気にしないよう心に決めた。

その後は無言のままカレーライスを食べ終わり、
静かに自室へ向かった。

「なんか今日はもう疲れたなぁ」

そう呟きながら部屋にある目覚ましに使っている時計を
見ると23:00と表示されている。

「もう寝るか。」

夜は0℃近くまでなる為暖房を付けたまま布団に潜り眠りについた。







────────────。






どれくらいの時間が経ったのだろうか。

全てが白い空間に俺はいた。

何故か意識がはっきりしている。

これは夢だと自覚もしている。

不思議な気分だ。

夢なんて何年降りだろうなんてどうでもいい事を考えてしまう。

ただ今まで見た夢とは何かが違うような気がした。

たださっきから遠くの方で変な音が聞こえる。

それが段々と近づいて来ているのが分かった。

俺は辺りは見渡すがどこまでも続くような白い空間が広がっているだけ。

さっきより音が鮮明に聞こえてきた。



「ザザ・・ザザザァ・・」

なんだかノイズのような音がする。

非常に耳障りだ。

ザザザザザザザザ・・・ザザザザァァァァ・・

どんどん音がでかくなっていく。

その音が大きくなるにつれ耳鳴りもひどくなっていった。

夢なのに意識が遠のいていくような感覚になる。

ノイズが頭の中で大音量で響き渡りもはや立っていられない程の頭痛、目眩となり
俺は目を瞑り蹲ってしまった。


ふと、突然全ての音が止んだ。


それと同時に頭痛、目眩も和らいでいった。


ゆっくりと目を開ける。


「あれ?俺目を開けたんだよな?」

先程の白い世界とは打って変わって全てが黒い闇へと変わっていた。

「なんだこれ・・ちょっと恐いぞこの夢」

もはや速く目を覚ましてくれと願うが目を覚ます事が出来ない。

「一体どうなっちまってるんだよ」

もう完全に混乱している中、突然女性の声が聞こえだした。

「やっと・・・見つ・・けた。」

俺の体はビクッ!っとなり金縛りのように動けなくなった。

金縛りは何度か体験した事はあったが、夢の中で金縛りなんて初めてだ。

声を出す事もできない。

それに、もの凄く嫌な感じがする。

でも、この感じどこかで・・・

そうこうしているうちにまたあの声が聞こえてきた。

「わらわの・・・・贄となれ・・」

「はぁ!?突然なんだこりゃ?」

頭の中で自問自答しているとそれが聞こえているかのように、

「おまえが・・贄になる・・事・・は・・・20年前に・・決まっている」

「なんだよそれ!?誰が決めたんだよ」

「フフフッ・・あと少し・・・」

「なんなんだよ・・これ・・・」

もはや脳内会話になっている。

俺はなんとも言い難いこの恐怖に足が震えていた。

「ん?なんだこの光は?」

突然闇の中から眩しい程の光が溢れてきた。
すると金縛りも解け、次の瞬間夢が覚めた。
声を掛けてきた。

-2-
Copyright ©神たん All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える