小説『祟り神と俺』
作者:神たん()

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ガバッと勢いよく目を覚ますとそこは自分の部屋では無かった。

「ここは・・・うちの神社?」

俺は神社の中にいた。
その傍らで親父と長兄が必死にお経を読み上げていた。
俺は何が起きているのか全くわからくなり親父に問いかけた。

「親父これは・・・何をやってるんだ?」

親父はひたすらお経を読み続けている。
とにかくお経を読み終えるまで待つことにした。


────────。


お経も終わりやっと親父が口は開いた。

「大丈夫か?体に異変はないか?」

「は?別に普通だけど・・」

すると長兄が

「誰かに操られてるような感覚とかないよな?」

もはや訳がわからない。という表情をしていると
親父が長兄に、

「あいつの封印は解けていないから夢に出るくらいしか
まだ力がないのかもしれん。だがこのままではまずいな」

まだ親父と長兄は話し合っている。

もう完全に話についていけない為、親父と長兄の話を
遮るように問いかけた。

「なぁ、全然今の状況が理解できないんだけど説明してもらえない?
なんで俺は今神社にいる訳?」

そう問いかけると親父が話だした。

「昨日お前が刀の話をしただろう。それが気がかりでな夜中にお前の様子を
見に行ったら・・・」

「見に行ったらなんだよ?」

「いや・・苦しんでいただけだ。」

は?と俺は思った。
苦しんでただけでお経あげるか普通。

「なんで苦しんでるだけでお経まであげんといかんの?」

親父は困った顔をしながら、観念したように言った。

「お前の苦しんでる顔が奴の顔になっていたんだよ」

「奴って誰の事だよ!?」

俺が問い詰めると親父が続けた。

「ここに封印している魔物の顔だ。」

封印?魔物?なんの事だ?
もう訳分からな過ぎて言葉が出ないでいると
長兄が語りだした。

「俺は後を継ぐ者だから親父から全て話しは聞いている。
親父!こうなった以上翔にも説明するしかないんじゃないか?」

長兄がそう言うと少しの沈黙の後親父が語りだした。

「翔よ。お前は神様だとかオカルト染みた事を信じない奴だがこれから話す事は本当の話だ。
俺の言うことを信じる事ができるか?」

俺は静かに頷いた。

「わかった。まずここに納められている刀について説明してやる。あれは、いわゆる呪いの刀だ。
江戸時代後期から代々うちの一族が封印していた宝剣。」

「宝剣!?」

俺は驚いた。宝剣とは代々その家の守り神ともされるからだ。

「お前も多少なりとも知識はあるから気付いただろうが、
宝剣とは一般的にその一族の守り神となる。
代々伝わる言い伝えによると江戸時代に、現在のN県にある村に居た
由緒ある一族に祭られていた物らしい。そこは土地に恵まれていて、
農作物等が良く育つ為皆日々の生活に困る者は少なかったという。
だが、そこに目を付けた役人が突然やってきて納め物の量を大幅に増やし、
国にはいつも通りの量を納め余りは自分の至福を肥やす為に使っていたらしい。
さらに日を重ねる毎に納め物の量は増えていき次第に納められない者もでてきた。
役人は納められなかった者に罰を与えたんだ。」





親父が俺に「何をしたと思う?」と聞いてきた。





俺が答えられずにいると親父が言った。


「殺したんだよ。しかも見せしめに村の中央で吊し首だ。
最悪なのはその後だった。死んだ者の使っていた土地を村人同士で奪わせた。
つい先日まで仲の良かった者同士で殺し合いさ。
役人はその光景を見て楽しんでいたらしい。余りの非道さに耐えかねた宝剣の一族が役人に抗議をしに行った。抗議した結果一族の一人娘を役人に渡せば納め物を減らそうと言ってきたらしい。
勿論そんな要求を飲める訳もなく再度抗議しに行くと次の日にはその一人娘の両親の無残な死体が
村に晒されていたらしい。母親は乱暴された姿で、父親は四肢が全て切り落とされた姿で。
それを目の当たりにした娘は家で恨み辛みを抱いたまま一族の宝剣を使い自ら命を絶った。」




俺はあまりの悲惨さに声を出す事が出来なかった。
そんな俺の姿を見て親父が問いかけてきた。


「まだ聞く覚悟はあるか?」

俺は強く頷いた。

なぜかこれは知っておかないとまずい気がしたからだ。

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