小説『祟り神と俺』
作者:神たん()

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親父は再び語りだした。

「しばらくの間、娘が自決した事を村人達は知らずに過ごしていたんだ。
 娘が死んだ夜から村全体に呪いが掛かってしまった事も知らずにな・・。
 元々宝剣に宿っていた神は遠い昔から存在する位の高い神らしく、
 その神に娘が命と引き換えに呪いを掛けたことにより祟り神へと変化してしまった。
 次々と村には変死者や行方不明者が出たらしい。勿論役人、村人問わずにだ。
 困り果てた村人達が藁にもすがる思いで隣村にいる住職に助けを求めた。」


そこまで聞いて俺はハッと思った。


「その住職ってうちのご先祖様とか?」


親父は頷いた。


「そうだ。ご先祖様が村に来た時には役人は全ていなくなり、村人も1/3程に
 なっていたみたいだ。これはいかんと思ったご先祖様は呪いの根源を探した。
 そしてあの一族の家に入った瞬間、鼻を刺す異臭がした。そこで村人は初めて
 娘が自害した事を知った。娘の腹部に刺さったままの宝剣。そこから禍々しいほどの
 力を感じたご先祖様は自分一人では手におえんとの事で他の住職に助けを求めた。」

「7人の住職が集まり話あった結果、あまりに力が強大過ぎる為払う事は出来ないが、
 一時的に力を弱め封印する事はできるとの事だった。ただし、時が経過するにつれ
 封印が弱まる為20年に一度封印の儀式を行わないと復活してしまうと村人に
 説明した。結果、丸三日かけて封印の儀式を行い封印する事に成功したんだ。
 そして今後はうちの一族が管理する事で話は纏まった」
 
親父は一通り話終えると懐からタバコを取り出し火を点けた。


ここ一応神社なんだけどね。


話を聞き終えて何点か疑問が生まれた。


「ん?ちょっと待てよ・・封印されてるのになんで俺が?
 それに20年て確か夢の中でも言われた気が・・。」


すると親父が俺に突然頭を下げた。


「すまない。お前が2歳の時だ。封印の儀式を行った際に駄々をこねるお前を
 式場に連れてきてしまった。その時に奴に魅入られてしまったのだろう。
 お前はまだ幼かったし記憶にないと思っていたがその記憶が蘇った事で
 奴とお前との接点が出来てしまった。それに封印の儀式は来月だ。
 儀式が近づくにつれ奴の力は強くなっていく。儀式が終わるまでにお前が
 奴に取り込まれたら封印は無理だろう。」


「え?なんで俺が取り込まれると封印できないんだよ?」


もはや取り込まれる前提みたいな感じで嫌だったが、
疑問に思う事は全て聞こうと思った。


「それはな・・どんなにどら息子でもお前は我が一族の血を引いているんだ。
 その一族の血を取り込んでしまっては俺達でもどうする事もできない。
 他の神道の者に任せるにしても昔と違い力のある者はそう残ってはいないしな。
 とにかくお前はこれから儀式が終わるまで結界を張りそこに居てもらうしかない」


結界なんてできるんだと素直に驚いた。
意外にうちの親父頼りになるじゃーん。


「ただ結界ってどうやるの??」


親父は真剣な顔で俺に言った。


「まず1日3時間滝行だ。勿論全裸のちんちん丸出しでだぞ。
 それを3日間だ。」



「・・・・。」



長兄は笑いを堪えている。

「ちょ、ちょちょ、ちょちょちょっと待て!!こんな時にふざけてる場合かよ!
 それになんでフルチンで滝行しないとならんのさ」

もはや呆れてしまう。
息子の命が掛かっている時にこの親父は・・

「ふざけてはいないさ。結界に入るには心身共に清めないと無理だからな。
 オティンティンに関しては就職しない息子への罰として親父命令だ!」

もう言い返す気も失せたわ・・。
なんでもやってやろうじゃねーかよ!
まだ死にたくねーしな。


「それでいつから始めるんだ?」


「とりあえずG神社に行け。連絡しておくから。
 あそこならしっかり面倒見てくれる」


G神社かぁ・・。
怖いスキンヘッド坊さんの所かよ・・。


「それまで親父はどうすんだ?」
「俺は万が一に備えていろいろ手を打っておくさ。
 安心して行って来い。」


という事でG神社へと行く事となった。

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