小説『祟り神と俺』
作者:神たん()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>


もう気付くと外は明るくなりだしていた。

パジャマのまま連れて来られていた為、神社を出ると異常に寒く感じた。

神社と隣接する形で家がある為、玄関まではすぐだ。

ふと玄関に目をやると心配そうな顔でおかんが立っていた。

「あんた大丈夫かい?」

親父とは違い、ちゃんと心配してくれていたそうだ。

「まぁね。でもなんか異常に疲れたし、眠いわー」

と言っていると親父が、

「今日はこのままG神社へ送って行くからな。」

「ほ??」

何を言っているんだこの親父は??
本気で殴りたくなった。

「夜中に奴に襲われたらまたお経あげんといけねぇじゃねーかよ。
 寝不足になっちまうわ。後は熊さんに任せる。」

熊さんとはG神社の坊さんのこと。
にしても、これが親の言うことかい。

とりあえず、荷物の支度だけさっさと済ませて、おかんが用意してくれた
おにぎりを持ち家を出た。
親父もその間に熊さんに連絡をとっていたようだ。

外にでて愛車に別れを告げ、親父のハイエースへと乗り込んだ。
車に乗ってひとまず一服。
チリチリと焼けるタバコの先を見ながらこれから何がおきるのか考えていたら
親父が運転席にやってきた。


「ようし。忘れ物はねーか?隣の県だから2時間くらいか」

車の時計に目をやると8:00を回っていた。
着くのはは10:00過ぎだろうな。

タバコを灰皿へ押し付けハイエースは、G神社へと出発した。



───────────────。



出発して1時間くらいだろうか。


眠気でうとうとしていたが必死に起きていた。

街を抜け山道をひたすら走っている。


なんだか妙に静かに感じた。

ちょうどトンネルに差し掛かった。

トンネル内にあるライトがオレンジ色に見える。

・・・・。

トンネル入って何分経ったのだろう。

こんなに長かったっけ?
と疑問に思っていると親父が、

「お前が奴と干渉しちまったからお前にも霊感の類が目覚めちまったんだな」

?が頭に浮かんだ。
まぁ俺は兄弟達と比べて霊感はないと感じているし、
なにしろ幽霊を見たことすらない。
金縛りはあるけど科学的に立証されてるし。
だから俺は今までオカルトを信じていなかった。
とりあえず意味がわからなかったから親父に聞いてみた

「どういう事?」

親父は険しい表情で俺に言った。

「お前の霊力が山のよくないモノを連れてきちまったって言えばわかるか?
 一族としては稀だがお前には生まれつき霊感の類はほぼなかった。俺や長兄、
 次兄はそれなりにあるが、あるが故にいちいち変なもんを連れてきやすいから
 とりあえず変な気がしたらひたすら意識を別の方へもっていき考えないように
 する事で避けてきた。やつらは自分の存在を気付いてくれた奴の所へついていくからな」

「ただお前の場合、奴と干渉した事によって奴の力の一部が移っちまったのさ。
 それがかなり霊といった類のモノには刺激が強いらしいな。」

なんとなくだがわかった気がした。

今までなんで俺だけ霊感が無いのか不思議だったし、なにより今までとは違うような感覚が俺の中にあるからだ。

これが第六感ってやつなのかな?

「で、今これどうなってるの?」

「山のお偉いさんがお前に刺激を受けて危険視してんだろうな。
 このトンネルから出さないつもりらしい」

まじかよ。

俺なんもやってないのにぃ・・

一応駄目もとで聞いてみた。

「どうすりゃいんだよ?俺が謝ればいいのか?」

すると親父は、

「それで許してくれりゃ楽なんだがなぁ。とりあえず酒は車に積んであるし
 やりたかねーが頼むしかねーな。」

そう言うと親父は車を止めて外に降り、後ろに積んであった日本酒の
一升瓶を取り出した。

「何するつもりなん??」

俺が聞くと親父が予想外な事を言い出した。

「うちの神様を呼び出すのさ。」

え?
突然の事にびっくりした。

「うちに神様なんていたのかよ」

そういうと当たり前の如く親父が返してきた。

「当たりめーだろ。祭事のときや、奴を封印する時だって
 神様の力を借りてやってるんだぞ。そもそも人間の力だけで
 人外の力を押さえつけたりする事自体無理だからな。
 そもそも神社なのに神様いねんじゃおかしいだろが。
 まぁ詳しく説明すると長くなるが一応うちの神社は変わってて
 神社自体は奴を封印する為にあるからうちの神様の為にあるものでは
 ない。神様は別の所にいる。」

ごもっともで・・。
俺が納得していると親父が綺麗な紫色の布に包んである物を取り出し
その包みを解いた。そこには見慣れた物が入っていた。

「それうちの神棚に置いてある狐の置物じゃぁねーか」

「そうだ。あんま神様を移動するのはよくねぇんだが状況が状況だけに
 今回は特別に持ってきた。」

「つー事はうちの神様ってオキツネ様なん??」

親父は呆れた顔で俺に言った。

「今更かよ。ばか息子。」

(まったくここまでアホだったとはな・・)

親父は呆れはてているようだった。

「それでどうやって呼び出すんだ?」

俺が親父に問いかけると親父は先程の紫の布を
地面に広げ、その上にオキツネ様の置物を置いた。
元々銅で作られたのであろうオキツネ様の置物は
不気味に光ってるように見えた。

その置物の前には赤い杯が置かれそこに
日本酒を注ぎ出した。

「よし。準備は出来た。呼び出すが驚くんじゃないぞ。
お前も霊感が付いたせいで見えちまうと思うからな。」

そう言うと親父は数珠をだしぶつぶつとお経のような物を
唱えだした。

-5-
Copyright ©神たん All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える