二才の子を残して腹の中の子供と一緒に夫と逝ったのは、怜にイヤリングを残して去った女。道ばたに咲く野花のような、どこにでもいるような女性だった。
その彼女を、ゲームをするように翻弄し、奪った。一歳下の後輩を。親友が心を寄せ、彼女も彼を慕っていたのは傍目にも明らかだったから、欲しかった。
親友を恋しがっているのに口に出せず泣く女を抱くのは快感だった。飽きた頃に雑草のように捨ててやろうと思ったが、恋する者同士は収まるところに収まり、捨てられたのは怜の方だった。
彼女を失った喪失感は自分でも呆れるほど大きなものだった。
何故なのか、自分でもわからない。
手元から離れて始めて気付かされた恋。
けれど、もうどうすることもできない。
親友も彼女も死んだ。
怜は、衝動的に僅かな身の回りのものを携えて北海道へ飛んでいた。
二度と東京へ戻るつもりはなかった。