小説『ハイスクールD×D〜転生せし守り手〜』
作者:ブリッジ()

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Life.47〜逆襲、意地とプライド〜














「行くぞ最強(ビギナー)、達人(ロートル)の戦い方ってのを教えてやるよ」

村雨の納刀の際に発する音をブーステッド・ギアで最大音量の轟音に変えてヴァーリの耳にぶつけた。

その結果、ヴァーリの鼓膜は破られ、三半規管に多大なダメージを負った。

視界は乱れ、数メートル先にいる昴の姿が何人にも見えている状態である。さらに、平衡感覚も失われており、今、自分が真っ直ぐ立っているのかどうかも判断できていない。

ドォン!!!

昴が構え、一気にヴァーリとの距離を詰める。

『ヴァーリ! 地上にいてはまずい! 空中で一度立て直せ!』

「くっ!」

ヴァーリは、アルビオンの指示に従い、一度体勢を立て直すため、空中へと飛翔し、その身を逃がした。

「逃がすか! 二天」

昴は二対の双剣を発現させた。その右手の一対の切っ先をヴァーリに向けた。すると、剣の切っ先から赤い光が現れた。

ドォォォォォォォン!!!

赤い閃光がヴァーリに向かって襲いかかる。

『下だ! 来るぞ!』

「わかっている!」

『DivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivideDivide!!!』

その音声が発すると同時に赤い閃光、赤龍砲の威力は半分にされていく。

バシュゥゥゥ・・・。

半減しきった赤龍砲はヴァーリの手で受け止めると同時に消え去った。

「威力を半減させまくって凌いだか、なら!」

昴は、右手の剣を下げ、今度は左手の剣の切っ先をヴァーリに向けた。

「これならどうよ!」

ドォンドォンドォンドォンドォンドォンドォンドォン・・・!!!

左手の剣の切っ先から赤い光が現れると、今度は先ほどよりも威力を抑えた赤龍砲を乱射した。

「っ!? ちぃ!」

ヴァーリも、さすがにこの数の赤龍砲を受けきるのは無理と判断し、その場から移動して飛来してくる赤龍砲の嵐をやり過ごす。

『ひとまず回復に努めろ! 視界と平衡感覚が失っては勝機は・・・』

「させっかよ」

アルビオンが言い切る前に昴はヴァーリの回避ルートに先回りし、背後にまわり込んだ。

バキィッ!!!

「がっ!」

昴はヴァーリの顔を蹴りを入れ、地面に叩き付けた。

ドゴォォォォォン!!!

地面に落下するヴァーリ。すぐに立ち上がり、構えを取り、上空にいる昴を睨み付ける。が・・・。

「どこを見てるんだ?」

その声は上からではなく、真後ろから聞こえてきた。

「なっ・・・」

ズシャッ!!!

昴は双剣の一対を振り下し、振り向きざまにヴァーリの胸を斬り裂いた。

「がはっ!・・・くそ!」

その剣は胸を斬り裂いたが、鎧に守られていたため、傷は浅かった。ヴァーリはすかさず真後ろへと飛び、その場を離れた。

飛び去りながら体勢を整えるが・・・。

「こっちだ」

声はやはり、背後から聞こえた。

ブォン!!!

昴は双剣の一対で首を刈りにいったが、ヴァーリは咄嗟に上体を下げ、その斬撃をかわした。斬撃をかわすと、ヴァーリはもう一度上空へと飛翔した。

「ぐっ! バカな、俺のスピードが落ちていると言うのか!?」

ヴァーリは思わずそんな言葉を漏らした。

それもそのはず。先ほどまでスピードで昴を圧倒していたのだから当然である。

「心配すんな。お前のスピードは落ちてないぜ」

ヴァーリの言葉に昴はそう答えた。

「お前のスピードが落ちたんじゃない。俺がスピードを上げたんだ」

昴はニヤリと笑みを浮かべた。

「ギアを入れ替えると言っただろ? お前はギアを上げたみたいだが、俺は逆だ。ギアを下げた」

「っ!? なんだと!」

本気で戦おうとヴァーリに提案された際に、昴はギアを下げてヴァーリと戦った。

理由は、ヴァーリに自分が相手よりも遅いと思わせるためだ。相手が自分より、鈍足だと判断したヴァーリはグングンスピードを上げ、その差を生かして昴を攻め立ててきた。

視界をやられ、平衡感覚を失ったヴァーリは、その覚えた相手のスピードとリズムを生かしてどうにか凌ごうと考えた。

だが、そこで初めて全速に上げることによって、ヴァーリの体感は、上がった以上のスピードに感じ、覚えたリズムも狂ったことにより、対処することもできなくなった。

「実力をいたずらにひけらかすとな、こういった目にあうんだ。覚えときな。次があったら、だけどな。それじゃ、今度こそ全速だ。今までは目にも止まらないスピードだったが、今度のは目にも映らないぜ」

ドォン!!!

昴は跳躍し、ヴァーリとの距離を詰める。

「っ!」

ヴァーリもそれに対して身構える。昴はヴァーリの目前で方向転換し・・・。

カンカンカンカンカンカンカンカンカンカン・・・!!!

昴は、コカビエル戦で体得した、足に魔力を集め、そこに足場を創り、空中縮地を繰り返し、ヴァーリの周辺を高速で反射をし始めた。

「くっ!」

今だ、視界がおぼつかないヴァーリにはもはや、昴の姿を捉えることができない。仮に正常であっても捉えることができたかは定かではないだろう。

ヴァーリはいつ自分に攻撃がくるのかが分からず、遂にはその心に恐怖が生まれ始めた。その時・・・。

チリン・・・。

ヴァーリの耳に鈴が鳴る音が届いた。それと同時に・・・。

ズシャッ!!!

「っ!」

ヴァーリの脇腹に激痛が走る。

「いい音だろ? 俺はこの音が好きなんだ。だが気を付けろ? この鈴の音は、お前を黄泉路に誘う道標になるかもしれないぜ?」

昴の右手には、鈴音という剣が逆手に握られていた。

カンカンカンカンカンカンカンカンカンカン・・・!!!

尚も昴は空中縮地の乱反射を繰り返し、ヴァーリの周囲を飛び回る。

チリン・・・。

再び鈴の音が鳴る。

「舐めるなぁっ!」

ガギィン!!!

ヴァーリは鈴の音がする方角に拳を振るった。拳には手応えがあった。だが、それは、昴ではなく・・・。

「残念。それは俺じゃなく、鈴を付けただけのチャクラムだ」

昴は、ヴァーリの周囲を飛び回る最中、自身の神器、ブレイブ・ハートの中の1つである、月下美人というチャクラムを発現させ、それに鈴を付けてヴァーリに投擲していた。

「そして、隙だらけだ・・・鈍砕骨」

昴は巨大な金棒を発現させ、拳を振るった体勢の隙だらけのヴァーリに向かって金棒を振り下した。

ガァン!!!

金棒は、一度は修復したヴァーリの兜を難なく砕き、地面に叩き付けた。

ドゴォォォォン!!!

大きな轟音と同時にヴァーリは落下した。そこを中心にクレーターを作った。ヴァーリは激痛に苛まれながらも何とか立ち上がろうとする。

「最強の白龍皇も、この様では形無しだな」

昴は、鈍砕骨と鈴音を手元から消し、ゆっくり地面に降りると、ヴァーリに向かってそう言い放った。

「コカビエルごとき・・・。よく、そんな言葉を言えたもんだ。あんな奴、庇いだてする気なんて全くないが、あいつなら、鈴を使ったチャチな奇策なんかに引っかからなかっただろうよ」

コカビエルはいにしえからの戦から生き残った百戦錬磨。故に、戦闘経験は豊富だ。

ヴァーリがコカビエルを圧倒できたのは、実力ももちろんだが、要因になったのは、コカビエルはあの時、昴との激戦でかなり疲弊していたことと、味方と認識していたヴァーリから奇襲同然に仕掛けられたことが大きな要因だ。

もし、万全の状態で、かつ、敵と認識した状態で相対していたら、それでもヴァーリの勝利は揺るがないだろうが、いとも容易くとは確実にいかないだろう。

昴のその言葉にヴァーリはギュッと奥歯を噛みしめ、身体をワナワナと震わせると、拳をきつく握りしめた。

「この俺を・・・、ヴァーリ・ルシファーをバカにするな、御剣昴!」

勢いよく立ち上がると、握った拳を思い切り振るった。昴は咄嗟に身を捩る。

チッ・・・。

その一撃は、僅かに昴の頬を掠った。

『Divide!』

その音声と共に昴の力が半分になった。すかさず、昴は半分になった力を戻そうとするが・・・。

「力をもとに戻す時間など与えん!」

すぐに昴に振り返り、拳を振るう。

ブォン!!!

昴はその一撃を首を傾けてかわす。追撃はなおも続く。

ブン! ブォン! ビュン! ブォン! ブン・・・!

間髪を入れず、昴に打撃を振るっていく。だが、その打撃は、昴に全く当たることはなかった。

「一発一発が身も凍りそうな程の威力をもっているな。だが、それも当たらなければ意味がない」

バチン!!!

乱打される一発を選び、昴は自身の拳で払い落した。

「いくら速さと手数があってもな、単調に繰り出したただの打撃が俺に届かん」

バキィッ!!!

「がはっ!」

ヴァーリは顎を打ち抜かれ、その身が宙に投げ出される。

「これで決める・・・鈴音」

ドォン!!!

再び、片手剣を発現させ、一気にヴァーリに突っ込む。

ザシュッ! ズシュッ! ズシュッ! ザシュッ! ブシュッ・・・!

空中縮地で縦横無尽に乱反射を繰り返しながらヴァーリに身体に斬撃を加えていく。

ガードを固めているため、何とか致命傷こそ避けているが、その全身は、どんどん斬り刻まれていき、身体から血が噴き出していく。

「これで決める・・・龍牙」

昴は鈴音を消し、二又の朱色の槍の龍牙を発現させた。槍を持った手首をねじり、足に氣を集中させながら足幅を広げ、身体を後方に傾けながら重心を低く構え、パワーを貯めた。

「龍牙・・・旋迅突!」

ドォン!!!

貯めたパワーを解放し、槍を内側にねじりながらヴァーリ目掛けて突進した。

凄まじい程のスピードでヴァーリに迫る昴。その槍がヴァーリの心臓に突き刺さろうとしたその刹那!

スッ・・・。

「っ!?」

ヴァーリが身を捩ってその槍をかわした。

「食いついたな」

ヴァーリがニヤリと笑みを浮かべた。それと同時に昴の表情が曇る。

「視界と平衡感覚もだいぶ戻った。来る方向とタイミングも、我慢に我慢を重ねたおかげで計ることができた」

ヴァーリがきつく拳を握り、振りかぶった。大技を外したことにより、昴は隙だらけだ。

「しまっ・・・」

ゴッ!!!!!!

そのヴァーリの拳は、昴の頬を捉えた。

「がぁっ!」

ドゴォォォォォン!!!

拳を受けた昴は、その威力で地面に叩き付けられた。

「(ぐっ!・・・まともにもらっちまった・・・!)」

打撃力はもちろん、叩き付けられた衝撃で多大なダメージを負ってしまった。

ヴァーリはただ成すがままに攻撃を受けていたわけではなかった。歯を食い縛って耐えながら昴の来る方向とタイミングを計っていた。

そして、昴の大技を誘い込んだところで渾身の一撃を撃ちこんだ。

ジッと耐え凌いで機を待つなど、プライドの高いヴァーリならまず選択しないであろうと思われる一手だ。

龍牙旋迅突・・・。

昴の持つ、最も突進力と威力がある究極の技。だが、かわされればこれ以上になく隙だらけになってしまう技である。

ヴァーリの想定外の策にハマり、手痛い一撃をもらってしまった。

「随分・・・似合わないマネをしたな・・・」

「全くだ。・・・だが、負けるよりはマシだ」

昴はひざに手を当てながらヨロヨロと立ち上がった。ヴァーリも血を流しながら昴のもとへゆっくり歩み寄っていく。

「・・・」

「・・・」

手の届く位置で対峙すると、両者は無言で睨み合いを始める。

スッ・・・。

そして、特に合図があったわけでもなく、両者が同時に動いた。

ゴォッ!!!

互いの拳が頬を同時に捉える。この一撃を皮切りに、再び2人の激闘が始まった。











・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・


ダダダダダダダダダダダッ!!!

開戦当初と同じく、攻撃を避け、払い、防御しながら、両者は上空を縦横無尽に駆け回っていた。

「がっ!」

「ぐっ!」

だが、当初と違い、互いに攻撃を完全に防ぎきることはできなくなっており、要所要所に打撃を食らっている。

次第に、受ける打撃の数も増えていく。

「「おぉぉぉぉーーーーっ!!!」」

赤と白の決戦は、必殺の一撃が飛び交う打撃戦から策を巡らせる頭脳戦に変わり、ついには、打撃を打ち合い、どちらが先に倒れるかの耐久戦へと移行していった。

もはや、どちらも疲労、ダメージ共に限界を超えており、いつ倒れてもおかしくはない。

御剣昴、ヴァーリ・ルシファー、両者が一撃に意地とプライドを込め、残る力を振り絞って打撃を加えていく。

「フッ!」

「ハァッ!」

ゴキィィィィィッ!!!

両者の拳が同時に顔に突き刺さる。

「がはっ!」

「ごふっ!」

拳が突き刺さったタイミングは同じ、競り勝ったのは・・・。

「はぁっ!」

ドン!!!

ヴァーリだった。

タイミング、威力は互角でも、ここで装甲の差が出た。

競り負けた昴は後方に弾かれていく。

「おぉぉぉぉーーーーっ!!!」

ヴァーリが咆哮を上げながらトドメを刺すべく、昴に飛びかかっていく。昴の身体は流れたままだ。

「(勝った!)」

勝利を確信するヴァーリ、だが・・・。

「・・・(ニヤリ)」

昴の表情には笑みがあった。

拳を振り上げながらグングン迫っていくヴァーリ。

「・・・やってみるもんだな」

昴がポツリと呟いた。

「正直、賭けだった。俺のもう1つの神器、ブレイブ・ハート。その中の武器を手元以外のところから発現できるのか・・・、まずこれが1つ」

「っ!?」

ヴァーリが気付く。手の届くところにまで接近したその時、自身の横に、龍を象った偃月刀である、青竜偃月刀があることに。

「最後の1つ。それは、俺のブーステッド・ギアの力をその発現させた得物に触れることなく届けることができるのか。これがもう1つだ」

その瞬間、青竜偃月刀の穂先から赤い光が現れた。

「ブレイブ・ハートは俺の魂でもある。いわば、俺そのものとも言える。イメージを伝達させれば手足と同じように力を届けることができるみたいだ」

この間にも、穂先の赤い光はさらに大きくなっていく。

「受けきれるかな? 至近距離からの赤龍砲を。疲弊しきったその身体で・・・」

「くっ・・・そ―――」

ドォォォォォォォォン!!!

ヴァーリは、赤い閃光に閃光に包まれていった。













          ※ ※ ※


ヴァーリside

トドメの一撃を加える刹那、御剣昴が発現させた武器が真横に現れ、その武器から強大な赤い一撃が発射された。

ドォォォォォォォォン!!!

「ぐぅっ!」

俺は、咄嗟に両手でその一撃を受け止めた。

まだだ! この一撃を凌げれば俺の勝利だ!

持てる力の全てを両手に捧げる。

『Divide!』

受けた赤い一撃の威力が半減する。

『DivideDivideDivideDivideDivideDivide!!』

半減させ続け、俺の手元でどんどん威力が半減されていく。

「おぉぉぉぉーーーーっ!!!」

俺は渾身の力をその手に込めた。そして・・・。

パシュゥゥゥ・・・。

赤い一撃は、俺の手で霧散した。

「凌いだぞ・・・。お前の最後の策を凌いだぞ! 俺の・・・っ!?」

勝利を確信した俺の目の前に、奴が・・・、御剣昴がいた。

「だろうな。お前はこの賭けすらも超えてくると思ってたよ。だから、これが最後だ」

御剣昴の左腕の籠手の甲から1本の剣が生えていた。

『!? ヴァーリ! その剣にはドラゴン・スレイヤー(龍殺し)の力が帯びている! 避けるんだ!』

アルビオンから忠告が入るが、先ほどの一撃を凌ぐのに全精力を費やしていたために、反応が遅れた。

ドラゴン・スレイヤーを構えた御剣昴は俺の懐に飛び込み、その剣を俺の胸に振るった・・・。
















ズシャッ!!!

















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