小説『プライベート・ホスト』
作者:ウィンダム()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

学生食堂でのランチタイム。

突然、昭吾の携帯が振動する。
ポケットから携帯を取り出す。
どうやらリピーターからのメッセージらしい。
昭吾はメッセージ内容を見ると、

   魔子 SAT PM1300 2H JRK駅北口

玲子からだ。
どうやら今週の土曜日に予約を入れてきたようだ。

   今度はなんの用だろう? それにしても、よくそんなカネがあるものだ

感心する昭吾は玲子に関する人伝えの噂を思い出す。
それは玲子が資産家のお嬢様らしいという噂だ。
実際、玲子の言動態度、立ち居振る舞い、そして知的な品の良さを雰囲気として持つ彼女はその噂の信憑性を裏付けている。
尤も昭吾にはそれは玲子の仮の姿でしかないことを既に知っている。

昭吾だけが知りえる玲子の秘密だ・・・。

しかしながらそれが玲子の仮の姿だとしても、そのような玲子の身につけた素養は、
それだけ教育や躾に相当のカネをかけられる財力を想定しないと説明できない。
とはいえ、仮の姿でいなければならない玲子の苦悩も昭吾の知りえる彼女の秘密だ。
昭吾はさっそく、
 
   OK

と返信した。

昭吾はリピーターが未成年者の玲子であるため行動の範囲と質は知れているものと判断し、
カジュアルなスタイルでJRK駅北口で待った。

PM1300ジャスト。

この間の例を参考に振り向くと、思ったとおり、玲子が笑みを浮かべて立っている。
今日の玲子はスプリングコートに黒のレザーブーツ。
彼女の長く綺麗な黒髪とマッチしている。

思わず見惚れている昭吾に、ピッと封筒をスマートに出す玲子はいつになく洗練されている。
 
   はい、2時間分のギャラよ、受け取って。

昭吾は受け取ると、
 
   ご指名ありがとうございます。魔子様。

と宮廷式挨拶をする。
すると玲子は笑って、
 
   いいわよそんな改まらなくっても。
 
   かしこまりました、で、今日は?

すると玲子は昭吾を一瞥すると、
 
   ついて来て。

と言うと歩き出す。

コート姿とブーツで闊歩する今日の玲子は、一段グレードアップしたかのような感じだ。
ちょっと大人の感じで悪くない。
玲子の後に従う昭吾は、
 
   どこ行くの。

と聞くと、
 
   黙ってついてくればいいの。

と素っ気ない返事が返ってくる。

アーケードに入り暫く歩くと左へ曲がる。
どうやらTデパート方向へ行くようだ。
暫く歩くと途中のIデパートの前で止まる。
玲子は昭吾を見ると、
 
   今からわたしはお姫様よ。
 
   え? お姫様?

玲子の突拍子もない言葉に昭吾は思わず聞き返すと玲子は、
 
   そうよ、お姫様よ。

すると怪訝な顔で昭吾は、
 
   ふ〜ん・・・、そう。で、俺はどうすればいいの?

尋ねる昭吾にニコリと笑みを浮かべると、
 
   召使よ。
 
   え?

思わず聞き返す昭吾に、
 
   あなたはお姫様に仕える召使になるのよ、わかった?

-6-
Copyright ©ウィンダム All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える