二話『夜食を買いに行ったら、あらまぁ』
数時間後・・・
「ハラ減った・・・コンビニ行こ・・・」
やはりカロメ二本だけでは物足りなく、空腹で起きてしまった
眠気眼を擦り、薄手のパーカーと財布を持ち外に出た
◆
「・・・え〜と、カツサンドと烏龍茶、カレーとコーヒー・・・お、甘王の大福置いてる! 珍しいな〜」
あ、別に変な時間に起きたから、テンションが高い訳ではありませんよ? 滅多にお目にかかれないものがあったからですよ?
「ありがとうございました〜」
妙に気だるそうな店員の声を背にコンビニを後にした
「家に帰って食うのも何気に味気ない・・・公園で食うか」
◆
深夜なので公園周辺はすっかり人気はなく、いたとしても猫一匹ぐらいだった
ベンチに腰を降ろし、買ってきた物を手に取り食べ始める
「・・・もきゅもきゅ、んぐ・・・食うか?」
目の前にいた猫に手招きをし、カツを手に持ち食べさせる
猫は余程腹が減っていたのか、あっという間にカツはなくなっていた
「ハハッ、んじゃカツやるよ。パンはカレーにつけて食うからさ」
カツサンドの中からカツをすべて抜き一つ一つ、手に持ち食べさせた
みるみるうちにカツは無くなり、気づけば膝の上に乗りながらくつろいでいた
「ったく、カツやったってのにどんだけ欲深いんだかな」
カレーと大福を食い終わり、烏龍茶を飲みながら言う
猫ってこういう生き物なんだけどさ・・・
「さて、腹も膨れたし・・・帰るとしますッ!?・・・」
ベンチから立ち上がった瞬間、胸を何かに貫かれた・・・
「ふふふっ、やっとこれで貴方は死ぬ・・・計画も順調に進んでいるしね・・・」
聞こえてきた声の方向を見ると、そこにはーー
「と・・・とう、か・・・?ガフッ!!」
かつての俺の彼女で、通算二回目の俺を殺した人物だった
口から血が流れるぐらいでは済まず、血塊を何度か吐いてしまった
「そろそろね・・・じゃあね」
彼女はそう言い残し、漆黒の翼を広げ飛んでいった・・・
胸に光の槍を貫かれーー俺は倒れた
「・・・にゃ〜ん?」
先ほどの猫が、血塗れになった胸やその服を舐めていた
「・・・ハハッ、俺の血、なんか舐めたって、美味くねぇぞ・・・」
生気を振り絞り、猫の頭の上に手を置き、優しく撫でた
「・・・しっかし、まさか最後の、晩餐がコンビニで買った弁当で・・・その相手が、猫・・・ハハッ、土産話が一つ・・・出来たな・・・ガフッ!ゲホッ、ゲホッ!」
多少強がってみたもの、大きく咳き込み、血を吐きだす・・・吐く血の量が増えてきている
「・・・猫に見守られながら死ぬ奴って・・・俺が初めてか・・・?」
猫の口をふと見ると、所々赤くなっている
「ガっ、グフォ!・・・終わりか・・・」
吐血し、赤く濡れた手を、明け方の空に掲げる
次第に瞼が重くなり、体が冷え、五感も効かなくなってきた・・・
「・・・クソ・・・が・・・」
瞼を閉じ、意識が遠のき、夜より深い暗闇に引きずられるかのように落ちて行く間際、ギリギリ意識が落ちる前、紅く長い髪をした女性が見えた
「やっと見つけたわ・・・龍ヶ崎暁斗・・・あなたの命、私のために使いなさい・・・」