六話『シスター?インデック・・・いや、なんでもない』
昨日の契約が成功してから依頼が来るようになったが、どうにも森沢さんと同じような依頼や、セレブの護衛、執事などの面倒な仕事も舞い込むようになった
それを木場に愚痴ったら・・・
『あははっ、龍ヶ崎君はそう言うもの選ばれるモノがあるんじゃないかな?』
他人事のように言われた・・・いや、実際はそうなんだけど。 んな物に好かれる覚えはないし、好かれたくもない
ついでにお前の依頼者は危険なことは無くていいよな・・・部長や朱乃さんから賛辞や励ましの言葉をもらうが、正直・・・キツイっす・・・
俺はそんな事を考えながら足取り重く、帰り道を歩いていると
「はうあ!?」
目の前で何かが転び、倒れていた
「あ〜、大丈夫すか?」
なんだか見ていられなくなり、シスターらしき人物に駆け寄って、手を差し伸べた
「あうぅ〜、何で転んでしまうのでしょうか・・・ああ、すみません、ありがとうございます」
シスターは俺の手を取り、立ち上がろうとした瞬間、風が吹きヴェールが飛ばされようとしたが・・・
「よっと・・・ほれ、今度は飛ばされんなよ」
飛ばされる瞬間、ヴェールに飛びつきキャッチし金髪シスターに手渡した・・・が見たところ、俺と同い年ぐらいだった
「ありがとうございます!」
金髪シスターはヴェールを受け取ると、笑顔でお礼を言った
「怪我は大丈夫か?」
「あ、はい、大丈夫です。ありがとうございます」
つか、そんなでかい荷物をここまでとは、ご苦労さんだな
「そりゃ良かった・・・が、このでかい荷物は何だ、旅行か何かか?」
俺の問いに、シスターは首を振った
「いえ、違うんです。実はこの町の教会に赴任することになりまして・・・貴方もこの町の方なのですね。これからよろしくおねがいします」
ペコリと頭を下げる彼女
宗教って大変だな〜 しかもこの町にとは・・・しかし律儀だなぁ
「それで困っていたんです。その・・・私って、日本語をうまく喋れないので・・・道に迷ったんですけど、道行く皆さん言葉が通じなくて・・・」
つことは、日本語が喋れない又は苦手なのか・・・
ちなみにだが、悪魔に転生すると、英語等の言葉が日本語に自動翻訳されるらしい。しかし単語や文は訳されないが、それでも「しっかし、教会ねぇ・・・あ、多分ある」
ふと思い出したのは、町の外れにある教会だった・・・あり? 確かそこ、使われてたっけ?
「ほ、本当ですか!あ、ありがとうございます! これも主のお導きですね!」
彼女は一気にテンションが高くなった・・・ シスターさんって、こういう人が多いの?
つってもこの子と俺は相反する存在。悪魔とシスター、どちらが悪と見なされるなんて、一目瞭然である
そんな事を考えながらシスターを連れ、教会に向かった
◆
教会へ行く途中、ある公園を通った
「うああああんっ!」
公園から男の子の鳴き声が聞こえてきた。恐らく転んだのだろう
ふと見ると、隣に居たはずのシスターが男の子の元へ行っていた。俺もその後を追った。
彼女は男の子に一声かけ、擦りむいた膝を見せるように促す。すると傷口に手をあて、そこから淡い緑色をした光が発せられ見る見るうちに、傷口は消えていった
魔力も使い方では、こんな事も出来るのか
「ありがとう! お姉ちゃん!」
子供はそう礼を言うと、隣にいた母親も礼を言いその場を離れていった
日本語があまり理解出来ていない彼女に・・・
「ありがとう だってさ。良かったな」
翻訳し、そう教えると彼女は嬉しそうに微笑んだ
「・・・その力・・・」
「はい、治癒の力なんです。神様から頂いた素敵な物なんですよ」
笑顔で答える彼女だが、どこか寂しげだった
その能力は元々人には無い能力を持つ人間。ある程度ならば賞賛などがされると思うが、度が過ぎると、周りの人間はその力、その人自身を恐れ、軽蔑などを受けるであろう。しかしそれがこの世界の摂理となりつつある。
俺はその能力に深く追求はせず、教会への道のりへと足を進めた
◆
歩いて行くと、目的地の教会の姿が見えてきた
「・・・うぇっぷ」
教会が見え始めた所から感じていたが、近づく度に寒気や頭痛、脂汗をかくようになってきた。
悪魔だから教会はいわば、敵陣なのだろう。部長からも教会や神社の危険性について強く言われていた
「あ、ここです! よかったぁ」
地図の書かれたメモと照らしあわせながら、彼女は安堵の息を吐いた
無事敵陣侵入成功! なんてな。さて、本屋行って帰ろ
「んじゃ、俺はお役御免ということで・・・」
彼女に背を向け、軽く手を挙げ、教会を後にする
「待ってください!」
立ち去ろうとした足を止める
「私をここまで連れてきてもらったお礼を教会でーー」
「悪いな、急ぎの用事が入っているもんでな」
「・・・でも」
律儀で義理堅いって、いいことだけどなぁ・・・はぁ
「俺は龍ヶ崎暁斗、一応この町の住人で学生だ。キミの名は」
「私はアーシア・アルジェントと言います!」
俺が名乗ると、彼女は笑顔で答えてくれた
「んじゃ、アーシア。いずれまた会う機会があれば」
「はい! アキトさん、必ずまたお会いしましょう!」
ペコリ と頭を下げたアーシアは、俺が見えなくなるまで、見守ってくれていた。