小説『織田信奈の野望  〜姫大名と神喰狼〜』
作者:大喰らいの牙()

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第五話  米調達


〜真紅狼side〜
俺達は、正徳寺の会見から帰ってきた後、犬千代と共に足軽が共同で住む、長屋に案内された。
その場所で偉い武士、言い換えればそこの大家である浅野家のジイサンに挨拶に言った後、その老人の孫娘、ねねと知り合った。
良晴はねねまで、“サル”と呼ばれ、良晴は「サルじゃない!」と言い張ると知能テスト(小学一年生レベル)の問題を間違えて結局“サル”として認識を改められていた。


「良晴さぁ、同じ問題を間違えるのは人間としてヤバいぞ?」
「う、うるせー! なら、真紅狼は今から出す問題を解けるのか?! 6×13−9は幾つだ!?」
「「69ですね/だ」」


俺とねねは同時に答える。
すると、良晴は………


「やぁぁぁい、バーカバーカ! 答えは24だ!!」
「………お前はどういう計算方法をしたら、そんな数字が出てくるんだ? 取り敢えず、一つ聞きたいんだが計算順番を上から順に言ってみろ」
「足し算、引き算、掛け算、割り算だろ!」


お前は本当に高校生か?
一度、人生やり直せ。
読者の皆さんはもちろん分かっているよな?


「違うわ、ボケ。正しくは掛け算、割り算、足し算、引き算だ。マジで頼むからさ、未来の日本男児達の地位をこれ以上下げないでくれ。というわけで、ねね。コイツの知力向上の為に頑張ってくれ」
「真紅狼兄さまがやらないのですか?」
「コイツのせいで頭が痛い」


そういうと分かってくれたのか、ねねは「さぁ、頭が悪いと信奈さまの手によってサル鍋の具にされてしまいますぞ!」と言って、勉強を促進していた。
ねねよ、誰もそんな鍋は喰いたがらないぞ。
長屋がそんな感じで和気藹々な雰囲気になってると、外が途端に騒がしくなったので、気になって俺・良晴・犬千代・ねねの四人で見に行くことにした。
浅野のじいさんは足腰が弱いので、部屋に待機してもらっている。


「うるせぇぞ、コラ」
「無礼者! 我ら、織田勘十郎信勝様の親衛隊よ!」
「知るか、ボケ。つーか、お宅らなんの用?」
「あのうつけ姫が戦場にて拾った南蛮かぶれの男とサルを見物しに来たのよ!」
「へぇ、なら見物料として五百貫となります。お支払いを出来た者のみ、対峙することが出来ます」
「若殿! この礼儀知らずの足軽、いかがいたしましょう」


若殿と呼ばれてから出てきたのは、白馬に乗った少年侍だった。
いかにもって感じで、ウゼェ。
少年は馬から降りて、俺を見定めてから感想を口に出す。


「キミが南蛮かぶれの男か。姉上も困ったものだな、南蛮なんかに興味を持ちだしているから、尾張国内だけじゃなくて国外でも“尾張のうつけ姫”なんて呼ばれてしまうんだ」
「で? 御輿に担がれているしょうもないお坊ちゃんは、何しに来たわけ?」
「キミに先程言っただろう! 姉上が拾った足軽達を見に来たと………」
「つまり、用は無いに等しいんだな? さっさと帰れや」
「ぼ、僕を上から目線で見降ろすな!」
「なら、馬に乗りながら見ればいいだろーが。頭悪いな、アンタ」


身長でも口でも優勢を見せると、周りの若侍共が力で勝つつもりなのか刀の柄に手を掛け始めていた。
ほーう? 抜く気か? 戦う姿勢になる瞬間、犬千代が袖を引っ張っていた。


(んだよ、犬千代)
(………信勝は、何度も姫さまに謀反している。これ以上言ったら、斬られる)
(ハッ、取るに足らない取り巻き如きに俺が負けるか)


すると、信勝は信奈の家庭事情を持ち出してきた。


「だいたい姉上は、母上からも嫌われている!」
「―――なに?」
「姉上は、南蛮や種子島といったものを口に出し始めて、わけのわからないことを喋る続ける! さらに、姉上は幼いころから寺子屋に通ってもすぐに暴れたり、礼儀知らずで横暴だ! 母上はそんな姿を見て、嘆き嫌っていた。その上、今では“うつけ姫”と呼ばれる始末だ!! さらに母上は姉上を嫌っている。父が死に葬儀の時も正装せずに、今の姿で部屋に入ってきて、茶香を掴んでは投げつけていた」


おそらく、自分の言ってる事を理解してくれる人が突然いなくなったから、なんだろうな。
本当は悲しくて、悔しくて、泣きたかったんだけど、そんな弱い姿を誰にも見せたくなかったからそんな行動に出たんだろう。
その上、母親からも嫌われ自分を愛してくれた“存在”(ちちおや)も居なくなってしまった。
だから、信奈はあの“うつけ姿”でいるんだろう。
“南蛮姿”という鎧を纏うことで、自分の本当の姿を晒さない為にも。


尾張一国を治める者として信奈の姿は悪くは無い。
だが、中身はただの背を伸ばしているだけの寂しがりな少女だな。
いずれ、溜まった感情を吐き出させてやらないと“ヒト”して壊れるな。
やれやれ、コイツは大仕事になりそうだ。
俺は、頭を掻こうと思って手を振り上げた瞬間、“たまたま”信勝の顔に直撃した。


「「「「あっ」」」」


俺・良晴・犬千代・ねねの四人が同時に声を出した。


「ぐぁ! ぼ、僕をぶったな! この僕の美しい顔をぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「すまん、腕を振り上げたらあたっちまった」
「真紅狼、素直に言うなよ」
「勝家ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


信勝が頼みの勝家の名を呼ぶと、柴田勝家が刀に手を置きながらやってくる。


「よくもやってくれたな、蒼騎」
「事故だろうが、だいたいそんなに近い所にいたら当たることを頭になかったのか? 故に俺は悪くない」


逆に開き直ってみた。
一度やってみたんだよね、どんな反応になるかな。


「この僕の顔を殴っておいて、悪くないだと!? ふざけるのも大概にしてくれたまえ!!」
「当たる方が悪い………(姉の気持ちを気付かない奴に腹が立ったから殴った……という理由の元だけど」
「蒼騎、我が主に無礼を働いたこと見逃せないぞ」
「え、俺? いつ、無礼働いたの? 良晴〜、俺は頭を掻こうとしたら顔にぶつかってしまったんだから、事故だよな?」
「あ………ああ、事故だな」
「ねねも事故に見えたよな?」
「確かにねねもそう見えましたぞ!」
「犬千代は?」
「………事故に見えた」
「ということらしいですが?」


いかにも俺には非が無いことを再三にわたって伝える。


「そこまで言うなら………勝家! 容赦なく斬ってしまえ!!」


信勝は何を血迷ったのか、いきなり斬り捨て宣言を言い放った。
柴田勝家は、その命令に渋々従った。


「主の命令だ、許せ」
「誰が誰を殺すって?」
「勝家がキミをだ!!」


勝家が凄まじい殺気を出しながら刀を抜いたのを確認した後、俺も【長槍 鬼神】を取り出して肩に担いで殺気を勝家達に叩き付ける。


「……もう一度聞くぞ。誰が誰を殺すって………? ああ?」


ガシャンッ………………


肩に担いだ鬼神に巻き付いている鎖が碇の部分とぶつかり、金属音を響かせる。
その音に、信勝と取り巻きの若侍共は弱腰になっていた。


「くっ、か、か、勝家!! 今日は退くぞ! いいかい、今回は見逃してやる!! だけど、僕を殴ったことを必ず後悔させてやる!!」


信勝と取り巻きの若侍たちは颯爽と逃げていった。
勝家も帰っていったが、帰る際に僅かならが一礼していたのを俺は見た。


「やれやれ、久しぶりに殺気を出すな。………おい、どうしたよ?」


良晴達は固まっていた。


「おーい、もしもーし?」
「し、真紅狼、その武器は一体なんだ?」
「あ、これ? 俺のメイン武器。一応槍の分類になるな」
「こんな武器、見たことないぞ?」
「そりゃそーだ。俺が創らせた武器だからな」


俺達が話し合ってる間、新たに来訪者が現れ、犬千代に何やら耳打ちをしていた。
話が終わったのか、犬千代はこちらにやってきて俺と良晴の袖を引っ張った。


ぐいっ!


「ん? どうしたよ、犬千代?」
「………姫さまがお呼び。仕事を与えるって」
「ようやく仕事か! 楽しみだな!!」
「おい、良晴。俺達は足軽なんだから、そのことを頭に入れてだな………」
「分かってるって!!」


分かってない、絶対に分かってないな、コイツ。
仕事を貰えることに頭がいっぱいなのか、それとも、戦国の世で活躍できる場がやってきたと勘違いしているか………または両方か。
まぁ、それは信奈の元に行けば分かるか。
俺達は信奈の元に向かった。
〜真紅狼side out〜


〜信奈side〜
真紅狼達を呼び出して、今は目の前に居る。
真紅狼は相変わらず静かに座っていて、サルは何かを期待してる様な目で私を見ていた。


「仕事の話に入る前に犬千代は除いて、真紅狼とサルは戦う事以外に何かできることは無いの?」


私は堂々と聞いてみる。
するとサルは………


「俺は未来から来た人間だから、戦国ゲームで培ってきた知識があるぜ! それと未来の事も知ってる!!」


いかにも満足そうな顔で主張して来た。
というか、芸無ってなによ、それ?
また訳の分からないサル語を……………無視することに限るわね。


「真紅狼は?」
「俺もまぁ、未来から来た人間だな。んでもって、そうだな………料理に物創りとか色々と出来るぞ。まぁそれなりにだけどな………」
「そう。………真紅狼には仕事の後、料理を創ってもらうわ!」
「まず具材を見ないと作れるものも作れないし、戦国の料理方法に慣れてないから時間が掛かる」
「………別にいいわ。美味しいものを創ってくれるならね!」
「やる前から、期待を重くしないでくれ」


真紅狼は困った様に、ため息をついた。
凄い似合わないわね、その仕種………それよりも仕事の話に入らないと!


「じゃあ、仕事の話よ!」
「待ってましたぁ! やっぱり、一世一代の大仕事が良いな。城を建てるとかよ!!」


サルはここぞと言うばかりに叫ぶ。


「アンタは何言ってんのよ? 新入りの足軽がそんな仕事出来るわけないでしょ? アンタ達にやってもらうのは、米の調達よ」


私は手を叩くと、小姓が真紅狼の足元に小判の入った袋を置く。中には三千貫ほど入っている。


「三千貫ほど入ってるわ。期限は二週間。これで米を買ってきなさい。だ・け・ど、最低でも八千石買ってきなさい! それが出来なきゃアンタ達はクビ!!」


本当はサルだけにしたいんだけど、そうしたら面倒だししょうがないわ。


「質問いいか?」
「はい、真紅狼。なに?」
「三千貫で米を何石買える?」
「………真紅狼、清州では三千貫で四千石までしか、買えない」
「………となると、二倍か。どうしよっかな」


真紅狼はすでに八千石買う為に思索しているが、サルは提示した数字に不満を言っている。
まったく、アンタも考えなさい!!


「あ、ちなみに元手を失くして、米が買えなかったら法に照らし合わせて打ち首だから、気をつけなさいよ」


真紅狼は小判を持ってサルを引き摺って、犬千代と共に出ていった。
さぁて、これぐらいは合格してちょうだいよ、真紅狼!
〜信奈side out〜


真紅狼の手料理、手・料・理・! あ〜、楽しみだわ〜〜

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