小説『DOG DAYS 勇者って私女の子なんですけど・・・』
作者:rockless()

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「仲違いの原因は姉上に聞いても何も教えてくれねぇし、姫様も心当たりは無いらしい。だから2人の間に何があったのかはわかんねぇ」

休憩を終え、再び移動を始め、ガウル様が語りだす

「ここ1ヶ月は公務以外では部屋に篭ってて、いったい何をしてんだか・・・」

「戦闘訓練も興行のためというか、なんや化け物とでも戦うんかっちゅう感じやし・・・」

「化け物って・・・いるの?」

輝力なんて超能力染みた物があるから、まさかと思って聞いてみる

「都市や戦場から外れたフロニャ力の弱いところには、人でも獣でもない魔物が出るって昔は言われてた。でも百年以上の昔にそれはもう地の底に封印されたと歴史書には書かれている。ただ、ここ数年でも数件の目撃例があったり・・・」

「魔物・・・」

ノワールの説明に私は引き気味になる
平和な世界でも危険なものはあるんだね・・・にしても魔物ってそんなファンタジックな・・・

「他にも肉食の大型生物なんかも化け物と言えば化け物だし・・・」

現実的な化け物まで・・・

「ねぇ・・・都市や戦場がフロニャ力が強いところなら、街道はあまり強いところじゃないってこと?」

「うん、そうだけど・・・」

「じゃあ・・・もしかして、ここ、出るの・・・?」

恐る恐るノワールに質問する

「魔物も大型生物もここら辺は目撃例は無いから大丈夫だと思う。魔物の目撃例は世界中で報告されているけど、ガレットだと北部のほうが中心だし・・・」

「よかった・・・」

ノワールの言葉に私はホッと胸を撫で下ろす

「ん?ベール?ジョーヌ?」

ふとベールやジョーヌのほうを見ると2人は顔を青くさせていた

「あかんて・・・うちらそういうの苦手なんや・・・」

「怖い話禁止ですぅ」

あー・・・話の流れとはいえ悪いことしたなぁ・・・





日が傾き始めた頃

「だいぶ近づいてきたな」

「そやなぁ・・・」

ガウル様とジョーヌがふとそんな会話をする
しかし特に何か風景が変わってきたわけでも無いし、目的地が見えたわけでもない

移動速度と時間でわかるのかな・・・それとも遠くの風景の小さなところの違いから?

なんて考えてると、進行方向からふわっと少し風が吹いてくる
その風を受けて・・・

「なんか空気が変わった・・・?」

風が今までの空気とは違ったものだと気付く

なにが違うかって言われると・・・なんていうか・・・匂い、なのかな?

「潮の香り」

「あぁ、なるほど」

ノワールの指摘に私は合点がいく
南東部の都市は海に面している。だから風に乗って潮の香りが飛んでくるのか
私は風が吹いてから気付いたけど、みんなは微妙な違いに気付いていたのか・・・鼻いいな・・・

それからしばらく進み、日没と同時に都市に着いた





ガレット南東部の海沿いの都市『アンコルポレ』、この町は別名『ガレットの台所』とか『ガレットの玄関』なんて言われている
その理由はやはり海沿いの町には欠かせないと言っても過言では無い、『港』

ガレットの台所・・・漁業や貿易により多種多様な食料が集まり、さらに貿易船や客船でやってくる人々から伝わる国外の様々な調理法から
町に入って思ったのが飲食店が多いこと、最初に触れる文化は料理から、ご飯のおいしい国に悪い国は無い、なのかな?

ガレットの玄関・・・ガレットの港はここだけ、遠くから船でやってくる人がガレットで踏む土はここの土。旅立つときに踏む最後のガレットの土はここの土、そこからきている
町の人を見て、猫耳犬耳ウサギ耳以外に色んな種類の耳を持った人がいることから、いろいろな国の人がいるのがわかる。でも私のような耳を持つ人はいないが・・・

貿易や旅客で人の出入りが激しく、さらに漁業と商業が盛んで人口も中央部並みかそれ以上のこの都市は私の偽りの出身地としては最適、ということなのだろう





「よし!メシ行くぞ」

「待ってましたぁ!」

宿も取って、部屋で少し休んだ後、ガウル様がそう言うとジョーヌが待ちきれなかったように反応する
旅行の後半ともあって疲労を溜め込まないためか一等室だった。内装が豪華でベッドもふかふか・・・この上の特等室ってどんなところなんだろ・・・?

「えっと・・・それで、どこに食べに行くんですか?」

「ガウ様の行きつけの店があって、この町に来るときはいつもそこに行ってる」

宿から出て、町を歩きながら質問するとノワールが答える

行きつけ、か・・・なんか大人だな・・・

私達は通りから細い路地に入って、そこから右に左にと数回曲がって・・・

「通りのレストランじゃないんですね・・・」

「そんなの霞むくらいうまいメシを出してくれるぜ・・・ここだ」

ガウル様が言うその場所は大きな建物の裏口
看板も何も無いので飲食店とは思えない

「本当は表から入るんだが連絡してねぇからな・・・おやっさん!いるー?!」

ガウル様が裏口の戸を少し開けて誰かを呼ぶ
少しして裏口の戸が開かれ、中から身長2メートル近い大男が出てきた

「・・・いらっしゃい」

低い声でボソボソっと話す
そして私達を中に招き入れ、個室に案内される
その個室はレストランのような装飾は無く、落ち着いた内装のキッチンとカウンター席だけの部屋。席も10席しかなく、まさに隠れ家という感じ

「・・・マントはそっちだ」

「あ、これは・・・」

ガウル様とジェノワーズが着ていたマントを外し、壁にあるフックにかけてからカウンター席に着く。それを見ていた私に大男が空いてるフックを指して言う

「ミサ、外してもいいぞ。おやっさんは口が堅いから大丈夫だ」

「はい」

ガウル様の言葉に少し戸惑いながらもフードを外す
耳を誤魔化すために作っていた髪のお団子や私の耳が露わになるが大男は特に反応は無い

「ミサのも合わせていつもので」

「・・・あいよ」

マントをフックにかけてから席に着くとガウル様が注文を言う
大男は注文を聞き、食材を取り行き、戻ってくると私達の目の前で調理を始める
その手捌きは素人目にもかなりのものだとわかるくらいだ

「えっと、ガウル様、この方は?」

「うちの先代の料理長。今はフロニャルドで5本の指に入るレストランの総料理長兼支配人だ」

それをおやっさん呼ばわり・・・やっぱりガウル様は凄い人だなぁ・・・

出された料理は、言葉に表せないほど美味しく、まさしく絶品だった

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