小説『DOG DAYS 勇者って私女の子なんですけど・・・』
作者:rockless()

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「マジで侵略してってるな・・・」

あれから1ヶ月とちょっと
ガレットのビスコッティ侵略戦は少しずつだが着実に進んでいた

野戦と砦攻めの連戦ツアー巡業といったところか
途中参加、途中離脱可能とはいえ一般参加者はよく体力が持つなぁと思う

最初の数戦はビスコッティも善戦していたが、戦経験豊富なガレットに徐々に押され、今では首都であるフィリアンノまであと少しのところまでになっていた

そして今日、とうとう最終目標のフィリアンノ城の1個前の砦を落とされ、ビスコッティは王手をかけられてしまった

「はぁ〜・・・明日朝一で出るぞ。ビスコッティが終わるかもしれないからな」





次の日

私達は朝、日の出と共に出発してセルクルを走らせてビスコッティを目指している
ガレットの王都からビスコッティの首都フィリアンノまではそう遠くはない
王都から南東のアンコルポレの半分くらいだ
このことから昔からガレットとビスコッティが友好国だったとわかる

途中、国境付近の北西の都市に休憩のために立ち寄る
輝力を使わずに来ているので大体お昼くらい時間

『今!大変なニュースが入りました!』

適当な屋台でセルクルの上で片手で食べれるものを買っていると戦の中継をしていたモニターから実況の人の慌しい声が聞こえてきた

私達はもちろん、街中で中継を見てる人達がモニターに注目する

「なんだ?」

露店の人に商品の代金を払っていたガウル様も急いで支払いを済ませてモニターを見る

『なんとっ!ビスコッティの代表領主ミルヒオーレ姫様が、この決戦に勇者召喚を使用しましたっ!』

「なっ?!」

「な?!」

「「「「なんだってーーっ?!(なんやとーーーっ?!)」」」」

ガウル様とジェノワーズの驚きの声が響き渡った





「姫様マジでやっちゃったのかよ・・・」

ガウル様がセルクルを走らせながらポツリと呟く

「余程追い詰められてたんやろな・・・」

「にしてもあの勇者強かった」

「ですねぇ・・・エクレちゃんとでレオ様倒しちゃいましたし・・・」

戦の中継をビスコッティが勝ちをほぼ決めるところまで見ているので一先ず安心してフィリアンノを目指している

「ミサと同じ耳だった」

「うん・・・」

ノワールの言葉に私は戸惑いがちに頷く
シンク・イズミ・・・金髪だったけどイズミという苗字からたぶん日本の血が入ってると思う。ハーフかクォーターか・・・

そのイズミ君は身軽な動きと棒術を用いて次々にガレットの兵士を撃破
初めてなのにいきなり紋章砲を打ったり、ビスコッティの親衛隊長と協力して、レオ閣下までも退けてしまう、まさしく勇者と呼ぶに相応しい活躍ぶりだった

勇者召喚って本当はああいうのを呼ぶものなんだね・・・

「会ってみるか?」

「え?」

ガウル様が私に向かって言い、私はポカンとする

「俺もあんなの見せられたら一戦やってみてぇし、ミサもなんか話してみたいだろ?」

「それは・・・はい・・・」

元の世界で私がどういうことになっているかとか聞いてみたいし・・・

「フィリアンノ城から1番近くて使える砦は・・・ミオン辺りか。よし!ジェノワーズにミサ、戦仕掛けるぞ」

「「「「了解」」」」

「内容は・・・」

「それはうちらがやっときます」

「おう、じゃ、俺とミサはガレットの宿営地に行って、ゴドウィンと俺の隊と合流してミオン砦に向かう」

ジェノワーズがセルクルの速度を上げて先に走って行った





数時間後、ミオン砦

『我ら、ガレット獅子団領国』

砦内のテレビにジェノワーズが姫様を抱えて映っている

お、やってるやってる・・・

私は今、テレビの中継を見ながら1人夕食を食べている
ガウル様はゴドウィン将軍と戦の打ち合わせ中だ

『ガウ様直属秘密諜報部隊』

秘密諜報部隊って・・・

私は心の中でツッコミを入れながらクスッと笑う

『ジェノワーズ』

ピンスポットライトで照らされ、3人の決めポーズと共に背後にドーンと煙が出る・・・まるでヒーローショーだね

『姫様!』

イズミ君も乗っかるように演技を・・・いやあれは素かな?
こっちの世界の常識なんて知らないだろうし、姫様が本当に危険だと思っているのだろうな・・・

『ビスコッティの勇者。あなたの大事な姫様は我々が攫わせていただきます』

『うちらはミオン砦で待ってるからなぁ〜』

『姫様が歌われるコンサートまであと一刻半。無事助けに来られますか?』

3人が代わる代わるに台詞を言う
一刻半とは大体1時間半ぐらい

何気に時間制限厳しいなぁ・・・
まぁちゃんとコンサートに間に合うように上手くやるんだろう・・・

『つまり、大陸協定に基づいて要人誘拐奪還戦を開催させていただきたいと思います。こちらの兵力は200人。ガウ様精鋭部隊』

ん?私も精鋭の1人なのかな?

『ガウ様は勇者様と一騎打ちをお望みです』

200人なんて相手にしてたら1時間半なんてあっという間に過ぎてしまう。要するに一騎打ちしろ、と・・・

『もし断れば、姫さんがどうなるか分かってますよね』

ここで返すんですね。わかります
にしても要人誘拐奪還戦って・・・大陸協定の戦形式も種類多いなぁ・・・

『受けて立つに決まってる!』

イズミ君が真剣な表情でそれに答える
何も知らないとはいえ、そろそろおかしいと気付かないかな・・・?
なんて言うか・・・演劇っぽくない?とかさ・・・

『僕は姫様に呼んでもらった、ビスコッティの勇者シンクだ!どこの誰とだって、戦ってやる!』

イズミ君は演劇のような大仰な手振りを交えながら戦線に応じた

その台詞回しと動き、ホントに素なのかな・・・?
それとも気付いててその上で乗ってるのかな?

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