小説『DOG DAYS 勇者って私女の子なんですけど・・・』
作者:rockless()

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ピチャ・・・ピチャ・・・

そんな音と共に私の頬を生暖かい何かが撫でていく
何か妙な湿り気を帯びたそれは・・・舌?

「んん・・・」

私の意識が眠りから覚め、私は目を開けようとする

あれ?そもそもいつ私は眠ったんだっけ・・・?あ、そっか私屋根から落ちて・・・

「へ?!」

目を開けて最初に視界に入ったもの・・・それは

「ライオン・・・?」

大人のライオンだった・・・鬣はないからメスかな・・・って

「あっあああわわわわ・・・」

「グゥ?」

ライオンが私を不審そうな表情で見ている

「イヤァァァァァ!!」

食べられる?!

私は飛び起きてライオンから距離を取った

えっと武器・・・私の銃は・・・無い?!というかマントも無い?!

2ヶ月使い続けた相棒とも言える銃やマントが無いことに私はパニックになる
そんな間にもライオンは私に詰め寄ってきて・・・

「わ、私はおいしくないよ・・・」

「グゥ?」

私の言葉にライオンが首を傾げる

「ミサ?!どうした?!」

っとそこに頭に5段のたんこぶをつけたガウル様が駆けつけてきた

「ラ、ライオンが?!」

「ライオン?あぁヴァノンか・・・」

ガウル様はなぜか呆れるような表情に変わる

「助けて・・・食べられる・・・」

「ヴァノンはワシのペットじゃ。人は襲わん」

ガウル様の後ろからレオ閣下が部屋に入ってきた

まずい。頭を隠さないと・・・

私は咄嗟に両手で頭を抑えて耳を隠す

あれ?髪で作ったお団子が・・・無い?

「あーもうバレたから隠さなくてもいいぜ。これもその件でだし・・・」

ガウル様が頭のたんこぶを指しながら言う

「事情はガウルから聞いた・・・すまなかったな」

レオ閣下が私に頭を下げてくる

「いえ、そんな、頭を上げてください」

私はどうしていいかわからず、そう言うしかできなかった

「帰還の方法は国が責任を持って探す。絶対とは言い切れんが元の世界に帰れるよう全力を尽くそう。生活もガレットが責任を持って面倒をみるから安心してくれ」

「ありがとうございます」

元の世界に帰る・・・嬉しいことのはずなのに・・・なぜだろう、胸がチクリと痛む

「明日はガレットに帰る。今日はゆっくり休むといい」

「はい」

そう言うとレオ閣下はヴァノンをつれて部屋から出ていった

「あの、ガウル様・・・その頭・・・」

「気にすんな、いつものことだ」

ガウル様が心配させないように笑いながら明るく言う

ドキッ

その笑顔を見て、私は気を失う直前のガウル様を思い出して胸がドキドキしだす

あ、あれ・・・?

「ん?ミサ?顔が赤いけど大丈夫か?」

「え?は、はい大丈夫ですよ」

知らぬ間に赤面していたようでガウル様に指摘され、私は慌てて返す

あ、あれれ・・・?これは・・・

「そうか、なら行くぞ。ジェノワーズも回収しにゃならんからな」

「はい」

ガウル様の言葉に返事をしてついていく
胸のドキドキはまだ治まらない・・・むしろ近づいたことでより鼓動が速くなったくらいだ

あぁ・・・これはもう確定だ・・・

私・・・ガウル様に・・・恋、してる・・・





「なるほどね・・・回収、か・・・」

ガウル様についていった先の部屋でジェノワーズは7段のたんこぶを作って気絶していた

「とりあえずそこのソファに寝かせとけばいいか」

「そうですね」

私は3人の中で1番小柄なノワールを紋章術を使って身体強化をして抱き上げる

ごめんね・・・ノワール・・・それにジョーヌもベールも・・・

心の中でノワール達に謝る
3人がガウル様のことを想っているのは知っている
王族と親衛隊という身分の違いでその想いが伝えられないっていうのも・・・

私も、伝えられないだろうな・・・勇者召喚で来たっていうだけの普通の人だから・・・

ガウル様は王族だから、恋愛もできないし、結婚も国のために相手は選べない
まだ婚約者はいないらしいけど、そのうちどこかのちゃんとした家柄の子と結婚するんだろう

それが王族としてのガウル様の義務

「ハァ・・・王道ラブストーリーど真ん中って言うか、なんて言うか・・・」

ノワールをソファにゆっくり降ろしながら小さく呟く
異世界に来て、王子様に恋をする・・・なんて絵本や少女漫画でよくありそうな話だ

「ミサ、終わったか?」

「はい、ガウル様」

ノワールを降ろし終わったあたりで、ガウル様が声をかけてくる
振り返って返事をするとガウル様はジョーヌとベールとソファに寝かせ終わっていた

「そんじゃ、俺らも休むか」

「そうですね」

部屋の明かりを消してから部屋を出る

「あ〜疲れた・・・」

ガウル様が肩を抑えて首をコキコキと鳴らす

「にしてもああいうのはいつもメイドさんがやってくれるんじゃないですか?」

「罰だとよ。姉上がメイド全員連れてガレットの宿営地に帰っちまったからな・・・」

「え?全員・・・?」

「あぁ、ゴドウィンも俺の隊の奴らもとっくに宿営地に帰っちまってるし・・・」

え?じゃあまさか今この砦で起きてるのって私とガウル様だけ?

「ふぁ〜あ、明日ガレットに帰るみたいだし、俺らもさっさと寝ようぜ」

「そ、そうですね」

「?」

ガウル様の言葉にテンパるように返してしまい、ガウル様が首を傾げる

よかった・・・ここが砦で・・・町の宿屋とか宿営地だったら一緒の部屋だったと思うし・・・

もし一緒の部屋だったら意識して寝れないよ・・・

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