小説『DOG DAYS 勇者って私女の子なんですけど・・・』
作者:rockless()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

3日後、戦興行開戦前日

早朝、私は工房へ足早に向かう
私が使う銃が完成する予定だからだ
昨日一昨日と食堂からの差し入れや食事を運んだりして、工房に顔を出していた。そのときに作業の様子を見たり、進行具合を聞いていた

「おはようございます・・・できてますか?」

「おぉ、嬢ちゃん・・・できてるぜ」

工房に着くと目の下に隈のできた職長さんが出迎えてくれた
他の職人さんは帰る気力も無く工房内で寝むってしまっていた

「ありがとうございます。早速テストをしたいのですが・・・」

「あぁ、持ってってやってくれ」

「はい。大事に使います」

職長さんから完成した銃を受け取る
その銃は前に私が使っていた銃よりも銃身が細長く、軽い
感覚的に言えば4〜5キロといったところか

火薬式の機構が綺麗に無くなっているので引き金や撃鉄が無く、見た目で完全輝力式だとわかる
無くてもいいと言ったのにボルトアクション機構を付けてくれて複数装弾できるようになっている

私はその銃を肩に背負って、射撃場に向かった





射撃場・・・

射撃場、というより弓術の訓練場だから弓道場かな・・・
弓道場には短・中・長、それぞれの距離で的が設置されている
目測で、短距離は2〜30メートルくらい、中距離は50メートル前後、長距離は100メートルといったところか
とりあえず私はまず短距離の的の前に立つ。この距離なら膝立ての姿勢で当てれる

「・・・っと、最初の1発だからまずは・・・」

テスト射撃だということを思い出し、私はまず上空に向けて弾の込めた銃を向ける
真っ直ぐ腕を伸ばして銃を上に突き上げた状態・・・さらにフードも被って・・・これなら仮に暴発しても腕に怪我を負うだけで済む
工房の人達を信頼してないわけじゃないけど、工房の人達はテスト射撃をしたわけじゃないから、自分自身で最終確認をしないと安心はできない

込める輝力の量は前に使っていた銃で弾が飛ぶ最低の量。それを精確に銃に込めて・・・
前の銃と違って輝力の量の許容誤差はかなり少なくなっている
輝力の量を数値化はできないけど、無理矢理数値化して言うならば・・・

前の銃は10込めれば設計上の有効射程に弾が真っ直ぐ飛んでいく仕様で、30や40くらいまで込めても暴発しない強固な設計
それに対してこの銃は、15込めたら暴発するかもしれないという設計、いや、強度を上げているからもう少しは持つかな・・・その分、8込めるだけで前の銃の有効射程に、10込めるとそれよりさらに長いこの銃の有効射程に届くという仕様だ

つまり許される誤差はマイナス2以下、プラス5未満

少量の輝力をここまで精確に込めることができる人は恐らくガレットにはいない
銃砲隊の人は火薬式がメインだからあまり輝力式で打たないし、他の騎士の人も輝力は戦興行を盛り上げるための道具として、膨大な量を派手に使うことを目指しているから

「暴発しませんように・・・」

祈りながら私は圧縮室に込めた輝力を爆発させた

バァン

銃声と共に普通の発射の反動が腕にかかる
それを感じ私はホッと胸を撫で下ろす

銃を下げ、ボルトを操作して弾に嵌めていた転がり防止のリングを取り出す
そのときに銃の内部を目視で点検する・・・異常無し、と・・・

銃に異常が見当たらないので、今度は的を狙って打つ
的の真ん中を狙ったはずなのに弾は外れた

照準の調整もしないとなぁ・・・

私は数発打ちながら、照準の誤差を修正していく

短距離で合わせたものを中距離で確認しながらさらに修正、それをさらに長距離で確認しながら修正とかなり時間のかかる作業だ

「よし、調整完了っと・・・」

「早朝から精が出るの、ミサ」

「レ、レオ閣下?!ど、どうしてここへ?!」

長距離の照準調節をし終わった辺りで不意の後ろから声を掛けられ、声から誰かがわかった私は慌てて伏射の姿勢から起き上がる

「まぁワシもたまには弓でもと思おての、朝から銃声が鳴りやまんし・・・」

「すみません・・・」

弓矢を持ったレオ閣下がからかうような表情で言い、私は謝る

時間がないから仕方がないし我慢してもらおうと思っていたけど、まさかレオ閣下から直々に注意されるとは・・・

「よい、時間がないのはわかっておる・・・その銃、完全輝力式の新型か?」

「はい。以前の設計図を元に強度を上げたものを作ってもらいました」

「そうか・・・じゃがワシの隊の銃より強度は低かろう。気をつけるのじゃぞ」

「はい」

レオ閣下は会見の日の時とはまるで別人のような不安げな表情で言う
今の私のこと以外にも何か色んなことを心配しているような・・・

「あの、レオ閣下」

「なんじゃ?」

「明日の戦が終わったら、領主を辞めてしまうのですか?」

私は会見の日に言われたあの言葉の真意を尋ねる

宝剣を賭けるような大きな戦・・・そしてあのときのガウル様、次期領主を頼むぞ、という言葉・・・

「元々領主の席はガウルのものじゃ。ワシはガウルが大人になるまでの繋ぎ。お主が来てガウルも責任というものをより一層持ったようじゃし、周りのジェノワーズも良い方に変わった。もうそろそろよいじゃろうと思っての」

「・・・」

決心のついているような表情でそう語るレオ閣下に私はどう返していいかわからず、無言になってしまう

「あとは王妃の1人でも・・・とこれは心配要らぬか。王妃に愛人3人か、それとも第4王妃までキッチリ娶るか・・・さてどっちじゃろうの?」

レオ閣下が急にニヤニヤした表情で言う

王妃はわかるけど・・・愛人とか第4王妃って・・・

「勇者と王女の結婚、歴史書を開けばそのような記述は容易く見つかるじゃろうよ。もし帰れなんだらガウルに責任を取ってもらうがよいじゃろう」

「け、結婚?!」

「お主もジェノワーズもガウルを好いておろう。お主はともかくジェノワーズは城中にバレておるぞ?ま、今のガレットには別に政略結婚なぞ必要ないから好きにするがよい」

そんなものが必要になる前にな、とレオ閣下は言う

「しかし私は・・・勇者召喚で来ただけの、ただの一般人ですし・・・政治のことも国のことも全くわかりません・・・そんな私が王妃など・・・」

第一、ガウル様がどう思っているのかもわからないし・・・

「ま、そう深く考えるでない。もしもの話じゃ」

-23-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




DOG DAYS レオンミシェリ・ガレット・デ・ロワ (1/8スケール PVC塗装済み完成品)
新品 \8563
中古 \
(参考価格:\10800)