小説『DOG DAYS 勇者って私女の子なんですけど・・・』
作者:rockless()

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「お、おはようございます・・・」

「あ、あぁ・・・おはよう・・・」

次の日の朝、イズミ君に会いに行くというガウル様にジェノワーズと同行する私
昨日のレオ閣下の言葉で少し前向きにガウル様のプロポーズについて考えているけど、正直まだ顔を合わせるのは気まずい

「んじゃ、さっさと出発するか、今から出れば昼には着くだろう」





「おーい、シンクー!」

「あ、ガウル。それにみんな!」

ガウル様の言うとおり、お昼頃にビスコッティのフィリアンノ城近くに着き、セルクルに乗っているイズミ君を発見した

「イズミ君、こんなところでどうしたの?」

「うん、ちょっと風月庵にね。この間の土地神の子供の様子を見に来てたんだ」

私の質問にイズミ君が答える。イズミ君は私が帰れないことを少し気にしてる様子だ
大戦のときに出た魔物は土地神の子供が呪いで変化したものらしい

「ふーん・・・」

「あ、あの・・・今川さんはさ・・・帰れない、んだよね?」

「うん、そうだね。別にイズミ君が気にすることじゃないよ。あ、イズミ君、帰っても私がフロニャルドにいることは誰にも言ったらダメだよ」

心配するように尋ねるイズミ君に私は気楽に返す

「え、でも・・・」

「異世界で王子の親衛隊やってますなんて誰も信じないだろうし、行方不明者のことを知っているなんて下手したら警察に取り調べられるかもしれないからね」

「う、うん、わかった・・・」

私の言葉にイズミ君は戸惑いがちに頷いた

「家族に会えないのは、そりゃ悲しいけど、こっちでも私を大切に想ってくれる人がいるからね・・・大丈夫だよ」

「そっか・・・」

私はガウル様やジェノワーズを見ながらそう言い、イズミ君は安心したように言った





フィリアンノ城に着いた私はガウル様達と一旦別れ、エルマールさんのいる学院に・・・

「こんにちは、エルマールさん」

「あ、こ、こんにちはであります。ガレットの勇者様」

資料に夢中になっていたエルマールさんに声をかけると、エルマールさんが驚いたように返してくる

「凄いね、これ・・・全部勇者召喚に関する資料?」

「はいであります・・・申し訳ありません。まだガレットの勇者様が帰れる方法は見つかってないであります・・・」

机いっぱいに並べられた資料本を見て私が言うと、エルマールさんが申し訳無さそうに言う

「あぁ、その・・・別に急がなくていいですよ。私は帰る気ないですし・・・」

「はぇ?」

私の言葉にエルマールさんがポカンとする

「帰らないのでありますか・・・?」

「うん、私はこっちでやっていくって決めたの。一応送還できる期間が過ぎた場合の帰還方法も探しておくのは安心して勇者召喚できるようになるから調べておいて損は無いと思うけど、私はそれを使う気は無いかな・・・」

「どうしてでありますか?」

「誰にも内緒にしてね。実は・・・」

私はエルマールさんに耳打ちで自分の希望する未来を教える
それを聞いたエルマールさんはパァッと表情を明るくさせる

「だからね、エルマールさんにはちょっと協力してほしいことがあるんだ」

「なんでありますか?」

「今まで女性の勇者が来たことがあるか、それと元の世界に帰らなかった勇者がこっちでどんな風に一生を過ごしたか、そういうのが知りたいの。お願いできる?もちろん、誰にも内緒にね」

「もちろんであります!!学院研究員の誇りに懸けて!!」

エルマールさんはエヘンと胸を張って言った

「ありがとう、エルマールさん」

「リコでいいでありますよ」

お礼を言う私にエルマールさんはこそばゆそうな笑いながら言う

「じゃ、私もミサでいいよ。リコ、よろしくね」

「よろしくであります。ミサ様」

「様も付けなくていいよ。もっと気楽に呼んで」

「そうでありますか、ではミサさんとお呼びするであります。でも、すぐミサ様とお呼びするようになると思うでありますよ?」

私の言葉にリコは笑いながらそう言った





リコと話し終わり、イズミ君の泊まっている部屋で遊んでいるガウル様達のところへ行こうとする

「あ、ベール。ガウル様のところに戻るの?」

「うん、そうだよ」

お盆にジュースを入れたコップを載せて運んでいるベールを見つける

「持つよ」

「大丈夫ですよぅ・・・」

ベールからお盆を半ば奪うように取る・・・この子が持っていたら絶対こぼすから・・・
私自身はまだ被害に遭ったことが無いけど、この子はドジッ娘なんだよね・・・それも周りを巻き込むタイプの・・・

お盆を取られたベールは不満そうに頬を膨らませて、少し可愛かった

「じゃ、ベール、案内よろしく」

「はーい」

私の言葉にベールは少し拗ねたような声で返してきた

「ねぇ、ベール・・・」

「なぁに?」

少し歩いたところで私はベールに話しかける
ベールはもう機嫌も直っていた

「もし私がさ・・・あのときガウル様の、あの言葉を受けていたらさ・・・ベール達は怒った?」

「うーん・・・むしろ喜んだと思いますよ」

ベールは少し悩んでからそう答える

「どうして?ベール達だってガウル様のこと・・・」

「じゃあ私がミサの立場で、ミサが私の立場だったら喜んでくれないの?」

「・・・それは・・・」

喜んだかも・・・自分の好きな人がその人が好きな人と一緒になれるのだから・・・その人の好きな人は私の親友とも言える人で、2人が幸せなら・・・

「私達の想いは最初から叶わないものなの。それでも傍にいたくて、だから今も、これからも親衛隊を続けていくの」

そう話すベールの表情は慈愛に満ちていた

強いなぁ・・・私と同い年のはずなのに・・・

そんなベールを見て、私はそう思うのだった

「愛、だね」

「愛、です」

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