小説『DOG DAYS 勇者って私女の子なんですけど・・・』
作者:rockless()

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送別会のパーティーは立食形式で、みんな楽しく飲んだり食べたりをして、パーティーを楽しんでいる
私は基本ガウ様の傍にいて、時々レオ閣下やジェノワーズ、ミルヒオーレ姫様やビスコッティの人達と話したりしている

「そういえば、イズミ君はミルヒオーレ姫様に誓約の品として何を贈るつもりなのかな?」

イズミ君と話しているとき、私はふと思い、そう質問する

フロニャルドに再召喚されるための条件は・・・

1.最初の帰還から再召喚までは91日以上空ける
2.召喚主以外の3名以上に、また来るという誓約と共に勇者の身に着けていた物を預けておくこと
3.召喚主に対しては、勇者と召喚主の名前が書かれた約束の書と誓約の品を渡しておくこと

2や3の預ける物や誓約の品は内容は問わないが、勇者が元の世界から持ち込んだ物がいいらしい

イズミ君の召喚主はミルヒオーレ姫様なので、姫様に何か誓約の品を贈ることになる

「この時計にしようかなって思ってる」

イズミ君はそう言って懐中時計をポケットから出した

「懐中時計?携帯があるご時世に渋い趣味してるね・・・」

「あはは・・・そうだね。でもこれは僕の大切な宝物なんだ」

私の言葉にイズミ君は苦笑して返す

「大切な宝物?もしかして家族からの贈り物とかだった?だったらごめんなさい・・・」

「ううん、そういうのじゃないから、気にしなくていいよ。これはね、2年前にテレビ番組のアイアンアスレチックに出たときの準優勝の賞品なんだ」

あー・・・あったね、そんな番組・・・そういえば準優勝の子は金髪だったような気がする

「へぇ・・・イズミ君その番組出てたんだ。私も見てたよ。確か優勝は女の子だったよね。凄いよねぇ・・・」

「う、うん・・・その子は僕の師匠なんだ・・・」

私の言葉に急に落ち込みだすイズミ君・・・あれ?地雷踏んだ?何か・・・思い出せ、番組の内容を・・・えっと・・・金髪の子は最終ステージをクリア直後に確か・・・泣いてなかったっけ?悔し泣き?

「も、もしかして・・・その師匠に勝てなかったの、まだ引き摺ってたり、する?」

ピシッ

イズミ君が固まった

「ごめんなさい・・・」

「い、いや・・・大丈夫、こっちで色々経験してだいぶ吹っ切れたから・・・」

イズミ君はそう言いつつ、ホロリと涙を流した





「ふぅ〜〜疲れた〜〜」

パーティーも終わり、私はお風呂など諸々のことを済ませ、今自分に宛がわれた部屋でベッドにグタ〜と横になって休んでいる

ドレスは着易くデザインされてても、やっぱり普段着に比べると着てて疲れるね・・・

コンコン・・・

「!はーい」

部屋の戸をノックする音が聞こえ、私は寝転がったまま返事をする

『リコであります』

「リコ?」

戸の向こうからの声に私はベッドから起き上がって部屋の戸を開ける

「お休みのところ申し訳ないのであります」

「ううん、気にしないで、それでどうしたの?」

部屋に入ったリコは一通の大きな封筒を取り出す

「ミサさんは明日ガレットに帰ってしまわれるので、頼まれていた件の簡単な結果をお渡しに来たであります」

封筒を私に差し出しながらリコが言った

「ありがとうリコ。昨日の今日でもうこんなに調べてくれて」

封筒の厚みから中は結果は数枚にわたっていると思われる

「勇者様の帰還方法を探していて、勇者についての資料も集まっていたからであります」

封筒を開けて中身を読んでいく

「!これ、本当なの・・・?」

「確かな記録でありますから、信憑性は高いのであります」

調査結果を読み進めていき、私はある一文に目が留まり、リコに確認を取る
そこには、私が1番気になっていて、1番知りたかったことが、1番望んだ形で書かれていた

『輝暦1863年、記録上初の女性の勇者。帰還せず、召喚主である国王と結婚。3人の子に恵まれる』

「ありがとうリコ・・・これで最大の障害が無くなった」

私は安堵から涙を流してそう言った

いくら身体的特徴が似ていても私は異世界人。言ってしまえばフロニャルドの人達とは別の種類の生き物だ。どれだけ外見や生態が似ていようと、遺伝子の仕組みとかそういうのが違って子供ができないかもしれない。できても無事に産めるか、生まれてくる子に問題が起こらないか・・・

そういうのが怖かった。王家に嫁ぐのだから世継ぎは絶対必要、歴史の授業でも昔は健康な子を産めないなら妻としての価値は無いに等しいとか習ったような気がするし・・・もし前例が無くても挑戦することにはなるだろうけど、その場合私の命に関わる危険があるかもしれない。1000年以上前の記録だけど、前例があったのなら、安心ができる

ホントによかった・・・

私はリコに何度もお礼を言った

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