小説『DOG DAYS 勇者って私女の子なんですけど・・・』
作者:rockless()

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そんなこんなで着いた弓術の訓練場

「ベール」

弓術の訓練をしているベールさんにノワールさんが声をかける

「あらノワ、それに美紗も、どうしたの?」

声をかけられたベールさんは意外そうに返事をした
短剣を使った格闘を主体に戦うノワールさんは弓術の訓練場には滅多に来ないからだろう

「・・・なんで来たんだっけ?」

「私に聞かれても・・・」

ノワールさんがここに来た目的をすっかり忘れ、ベールさんが困った表情で返す

「紋章術の説明をしてくれていて、今ベールさんがやってると思うから実際見たほうがいいって来たんですよ」

「そうだった」

ノワールさんの代わりに私がここに来た目的を言うと、ノワールさんがポンッと手を打った

「紋章術をやって見せればいいの?」

「うん、説明は私がやるから」

ベールさんの確認にノワールさんが返すと、ベールさんが矢を番えて弓を構え、集中し始める

「まず集中して紋章を発動させる」

ノワールさんの説明に合わせてベールさんが紋章を起動してベールさんの右手の甲に緑色の紋章が浮かぶ

「紋章術により集めたフロニャ力を輝力に変えて矢に込める」

矢の先端から少し緑色の光が出始める

「そして放つ」

シュッ

ベールさんが矢を放った
飛んでいった矢が的に当たり・・・

ドーン

爆発を起こした
私は爆風でフードがズレそうになるのを手を押さえて止める

「これが基本的な紋章術、一般には紋章砲って言われているもの。他にも物を斬るための剣に乗せて使う方法や、徒手格闘時に身体能力を強くするために使う方法がある」

「え・・・この紋章術って戦興行で使われてるの?」

「もちろん、今のは一般兵に向けた威力だから、紋章もレベル1で込める輝力も少な目なくらい、同じ紋章持ちの騎士や戦士には、レベル2レベル3の紋章を使って輝力ももっとたくさん込めますよ」

「あれ以上に威力も出るの・・・?こんなの紋章の無い一般兵には対抗手段が無いんじゃ・・・」

私は唖然としながら2人に言う

「紋章術は基本、打つまでの溜めと打ち終わった後の隙が大きくなりますね。あとそれと使うと疲れるから安易に多用はできませんね〜」

「それに紋章持ちは紋章術を使えるから強力な分、倒されると大量にポイントを奪われて敗戦に繋がってしまうから敵に狙われやすい」

デメリットもちゃんとあるってことか・・・

「にしてもあんな爆発食らっても獣玉になったり、防具が壊れたり、衣服が破けるだけで怪我をしないってフロニャ力って凄いね・・・」

「守護の力ですからね」

守護の力がなんで爆発を起こすのかな・・・?

「言い忘れてたけど異世界人は紋章無くても獣玉になれないし、怪我もするらしい。だから気をつけて」

「え?」

ノワールさんの言葉に私は改めてとんでもないところに来たんだと実感した

気をつけてって言われてもなぁ・・・

「私達もフロニャ力が薄いところでは怪我もするし、獣玉にもなれない。だから死んだりもする」

「でもそういう場所では戦闘禁止で戦場にならないですけどね」

この2人は私は安心させたいのか怖がらせたいのか・・・

「戦興行での負傷の主な原因は、大規模な戦争時に戦場から戦場に移動する際に崖崩れとかの自然災害的な事故に巻き込まれること。敵の攻撃や人為的な事故で負傷することは無い」

「それはあなたたちがフロニャルドの人だから・・・」

「怖かったら追い詰められたときに早めに降参すればいいんですよ。それでルール上はそれ以上の攻撃はできないし、点数にもなりませんから引き上げてくれますよ。私も戦に出始めた頃はそうでしたからね」

「はぁ、なるほど・・・ってまるで私が戦興行に出るかのようなアドバイスですね・・・」

ベールさんの言葉に私は不安を覚え、そう問いかける

「たぶんそうなるんじゃないかな〜って」

それに対し、ベールさんはニッコリと笑って返してきた

「え?でもガウル様は私の希望を聞いてくれるって・・・」

「それでも異世界人だとバレる危険を考えるとガウ様の傍からは離れられない」

「ですね・・・ガウ様の傍で怪しまれないようにするなら、私達親衛隊に入るかビオレ姉さまのような側近として執務を手伝う人になるか」

バレる危険を考えるといつも傍にガウル様かジェノワーズの3人の誰かがいる親衛隊ってことか・・・
そもそも私は14歳の義務教育も終わってない普通の人間、この世界の文字すらわからないのに1国の政治に関わる仕事を手伝えるわけがない・・・いや、戦いなんかやったこと無いから親衛隊もできるかわからないけど・・・

なんて考えていると

「「どっちにしても戦闘訓練は必須(ですね)」」

2人が揃って私の予想外な理由を言った

え?執務を手伝う側近も戦興行に出るの?何この国・・・

さらに詳しく聞くと、この世界で王宮に従事している人は皆、何かしらの武器の扱いや戦闘技術を修めているらしい・・・何この世界・・・

「とりあえずガウ様のところに戻りしょうか」

「うん、美紗行くよ」

私はガックリ肩を落とし、2人の後についていった





「はぁ・・・結局こうなってしまうんですね・・・」

あの後ガウル様に話を聞いてみるとノワールさん達と同じことを言われ、親衛隊見習いになってしまう私だった・・・

まぁ、この世界でもお金が無いと生きていけなくて、お金を得るためには仕事しないといけないのはわかってたけど、まさか王子の親衛隊って・・・

「そう言うなって、普通なら一般兵からスタートなのがいきなり親衛隊なんだからな」

ガウル様に肩を叩かれながらそう言われる・・・あんま嬉しくない・・・

「じゃあ、手、出して」

「え、はい・・・」

ノワールさんに言われるがまま右手を差し出す

「ちょっと痛むよ」

そう言うと私の手に自身の手を重ねて紋章を起動させた

「痛っ・・・」

「ゴメン、もうちょっと耐えて」

手の甲に痛みが走り、反射的に腕を引っ込めようとするが、ノワールさんに手首をしっかりと掴まれてて動かせない

「もう少し・・・」

まるで針か何かで手の甲に絵を描いているような、そんな痛み

それが1分くらい続いた

「終わった」

ノワールさんがそう言って紋章を消し、私の手の上から手を退ける
はっきりと痛みを感じていたはずなのに不思議なことに私の手の甲は傷一つ無い

「集中して、紋章を起動って念じてみて」

「え、うん・・・」

私は言われたとおり、集中して紋章起動と念じてみる

すると・・・

「これでうちらとお揃いやな」

私の右手の甲にノワールさん達と同じ紋章が赤みの強い紫色で浮かんだ

-5-
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