小説『DOG DAYS 勇者って私女の子なんですけど・・・』
作者:rockless()

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あれから1週間、召喚から10日目・・・
なぜか誰も私を長期滞在を疑問に思わない。初めはガウル様がなにかやっているのかと思ったけど、そんな大事になってるような感じでも無い・・・というか・・・

「ミーサ様がいらしてから、ジェノワーズの方達も落ち着かれて大変助かっております」

「は、はぁ・・・」

受け入れられてるし、さらに感謝されている・・・

今話しているのはガウル様のお付の近衛メイドのルージュさん
ガウル様もジェノワーズの3人もそれぞれ事務的な仕事があって、同じ部屋にはいるけど私を気にかける余裕が無い状態。どうやら私の訓練に付き合うために事務仕事を後回しにしていたようだ

「私のせいで事務仕事を滞らせてしまってたのですね・・・色々と迷惑をかけてしまってすみません・・・」

「お気になさらないでください。ジェノワーズの方達はいつものことですので・・・それにミーサ様が来てからジェノワーズは悪戯が減ってメイド一同感謝しています」

謝る私にルージュさんはニコリと笑い、お礼を言いながら紅茶を注いでいる

まぁあなたの目の前に私という勇者召喚という名のイタズラの産物がいるんですけどね・・・

ルージュさんの話を聞くと、ジェノワーズは訓練に遅刻したり、城内でよく問題を起こしていたりする問題児だったようだ
でもガウル様の親衛隊として、歳の近い友達として、ある程度大目に見ているのだとか。戦の腕も立つし、容姿もいいから戦興行では目立つ存在になるだろう

しかしガウル様がこういう事務仕事もちゃんとこなしているのは意外だった。書類も片付けていく速さもガウル様が1番早いし、訓練中でも見れないガウル様の真剣な表情はジェノワーズの3人が惚れるのも無理はないな思えるほどだ

「ミーサ様は確か、ガレットの南東部のご出身とか。ジェノワーズの方達とはどのようのお知り合いになられたのでしょうか?」

「あ、えーっとですね・・・」

ルージュさんの質問に私はどう答えようか悩む
視界の端でガウル様とジェノワーズが事務仕事を止めてこっちを見ている

「旅行でここの街に来て知り合いました」

「旅行ですか?なら帰りが遅くなるとご両親がご心配になられるのでは・・・」

ルージュさんにそう指摘されて私はしまったと思う
ジェノワーズの誰かの昔からの友人と言って、変に勘ぐられてボロが出る可能性があるからと思い、これにしたんだけど失敗だったかも・・・親衛隊ならもしかしたら採用のときに身辺調査とかされてるかもしれないし・・・

「実は両親は昔に亡くなっていて・・・私を育ててくれた祖父も最近・・・」

私の身辺調査をされていないことを願いそう嘘をつく
視界の端で4人がホッと一安心している

「そうでしたか。申し訳ありませんでした」

「いえ、気にしないでください・・・旅行の目的も悲しさを紛らわす為でしたし、ここで皆さんと過ごしていると毎日楽しくて・・・故郷ではこの耳と尻尾のせいで人付き合いも薄かったので、帰りを待ってくれてる人もいませんし・・・」

謝るルージュさんに罪悪感を感じつつもさらに嘘を並べる

帰りを待ってくれてる人、元の世界で私の家族は今どうしてるのだろう・・・時間の流れが違ってこっちの1日が向こうの数分とかだったらまだ私が消えたことにも気づいてないだろうけど、そんな都合のいい話なんて無いだろうし・・・現代の神隠しとか騒がれているのかな・・・

召喚されてからあれこれやってて、なかなか思い出すことが無かった元の世界のことを思い出し、悲しさを感じた私は被っているフードをさらに深く被って目元を隠す

帰れない、か・・・

日にちが経つにつれて実感しだした『元の世界に帰れない』ということ

両親にも、友達にももう会えない・・・
学校に通って勉強してればよかった生活から、競技とはいえ戦争をする軍人に・・・

ホント、何もかも変わってしまったんだなぁ・・・





4日後

「そろそろ限界か・・・」

「そうやなぁ・・・」

「だいぶ城内の人に知られましたからね・・・」

「誰かに怪しまれてもおかしくない」

ガウル様とジェノワーズがそう言って頭を抱える

私がここに来てもう2週間、未だ周りからいつまでいるんだという視線は感じてないが、そろそろ誰か気付くかもしれない

「つーわけで・・・」

ガウル様が机の上に書類を置く
まだ文字が読めない私には何が書いてあるのかわからない

「ここはバレる前に逃げようかと思う」

次の日、ガウル様は私やジェノワーズを連れ、お忍びの国内の視察という名の逃亡の旅に出た





今、ガウル様とジェノワーズ、そして私は、それぞれセルクルという騎乗鳥に乗ってガレット南部の都市に向かっている

ここで簡単な地理説明を・・・ガレット領国は北部から東部にかけてと西部から南西部にかけてが山岳地帯になっていて、大きな都市は、ビスコッティ共和国に近い北西部、王宮がある中央部、今向かっている南部、最後に私の偽りの出身地とされている南東部の4つ

今回の視察は南部と南東部を回る行程となっているらしい

「ま、セルクル飛ばせば3,4日で終わるような行程だが、今回はそれを15日で行うって申請したからしばらくは大丈夫だな」

ガウル様が笑いながらそう言う・・・15日も城を空けて大丈夫なのかな・・・?

「しっかし寒いなぁ・・・」

「そうですねぇ・・・」

ジョーヌとベールが体を震えさせながら話す
フロニャルドの1年は元の世界と同じ12ヶ月365日で四季もある。今は元の世界で言う2月に当たる月で、暦が元の世界より1ヶ月近く進んでいる

「セルクルに乗るの慣れた?」

「うん、だいぶ慣れたかな。この子もちゃんと言うこと聞いてくれるし」

初めてセルクルに乗った私にノワールが気遣うように声をかけてくる
セルクルは・・・頭が大きなダチョウのような生き物かな?通常種だと鳥だけど飛べないし、走ると速いし・・・
通常種以外に飛翔種という輝力を与えることで空を飛べるようになる種類があるらしいけど希少なんだとか

「よろしくね」

「クァ〜」

私が声をかけてながら首を撫でると答えるように鳴いた

-8-
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