小説『約813の問題児が異世界からくるそうですよ?』
作者:tasogare2728()

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第十二章

熱風が頬を撫でた――視線の先には、色とりどりのステンドグラスなどで飾られた黄昏色の光景があった。

「はぁ〜ここが北か〜」
「そうね〜ここが北よ、北にきた〜ってね」
「(寒っ!!)」
ヒュルルルル〜
熱い風にもかかわらず龍嗣の体温が一気に下がった。

ここは、東と北の境界壁――四〇〇〇〇〇〇外門・三九九九九九九外門だ。そして、ここは赤壁と焔とガラスの街なのだ。昼間にもかかわらず、街全体が黄昏時を思わせる色味を放っていた。なぜここに居るか、それは数刻前に遡る。



「ん〜朝か…」
龍嗣はまどろみ中で目覚めた。ここはコミュニティの龍嗣の部屋――窓からは陽光が差し込んでいた。
そんな中
コンコン…
「ん?――誰だ」
「龍嗣、私」
「ん…あぁ、入っていいぞ」
声で聞き分ける龍嗣

ドガッ!!ガバッ!!
「おはよう、龍嗣〜」
「ちょ、待っ!!」
ドサッ!!
覆う形で倒れ込んで抱きかかえてくるスサノオ
それにしても、この刺激的な朝はなんとかならないのだろうかと思う龍嗣無理もない。隣には、黒ウサギと同等の豊満で肉付きのいい身体のスサノオが横で寝ているのだ。豊かな胸のやわらかさは勿論のこと、上質な生地のように手に吸い付く素肌は触れるだけで蠱惑的な甘さを感じられる。
「は、離れろって」
「い〜や〜だ〜」
「そう言われてもな・・・」
頬を指で掻きながら言う龍嗣――
「ねぇ〜なでなでして〜」
「えっ・・・まぁ、しょうがないな〜」
ゆっくりと抱きついているスサノオの髪を撫でてやるのだった。

それから、朝食――龍嗣はコミュニティのもと食堂のところを再び作り直して、そこに座っていた。

「お、おはようございます」
「「おはよう」」
食堂には、ガチガチに緊張しながらも割烹着に狐耳の少女がカートを押してやってきてくれた。それをテーブルに配膳してくれる。
「り、リリとおんもします」
「まぁ、落ち着いて落ち着いて」
なだめる龍嗣
パタパタと二本の尻尾と狐耳を動かす少女は、リリというらしい

「おや、ハーブティーとは中々」
龍嗣がゆっくりと口をつける。それにしても、龍嗣のその食べる姿は、揺るぎもなくきれいに丁寧に食べている。
「はい、菜園で取れるものも一式用意しました」
「おぉ、ありがとう」
そういいながら、食べていく龍嗣
「そういえば、菜園の調子はどうだい?」
「はい、すごいことだと、黒ウサギのお姉ちゃんが騒いでいます」
「そうか、まぁ、規模は小さいにせよ、まぁ、問題ないか――よろしくたのむよ」
「はい」
それから、食べ終え、龍嗣とスサノオはとあるところに向かった。

箱庭二一〇五八三〇外門居住区;ノーネーム;農園跡地
メイド服に身を包み、美麗な金髪を特注のリボンで結んでいるレティシアは、悲しげに頭を左右に振ってその場にしゃがみこんでいた。
「ひどいな・・・」
レティシアは一人つぶやいていた――そんな中


「あぁ、ひどいな」
「ッ!?主!」
レティシアは驚いたように後ろに飛び跳ねた
「お、おどろかさないでくれ」
「申し訳ない申し訳ない――さて、この農園はどうみる?」
「砂と砂利しかないな――土壌も死んでいる、復興までには時間がかかるだろう」
「そうだな――レティシア、もし、今からすることに文句があるなら、そいつらにこう伝えておけ、;私;が全てを成して甘やかせば、堕落するものは出るだろ、最後の一押しはやはりみんなの手で成さねばならない、とな」
「主?どういうことだ?」
「まぁ、見ておけ」
龍嗣は、森羅万象のスキル『全血全能(コンプリートジャングル)』、水を司るスキル『水肢体(ウォーターボディスラム)』、雷を司るスキル『千脚万雷(ボルトレッグ)』、風を司るスキル『風の吹くまま(ウィンドウショッキング)』、土を司るスキル『業苦楽情土(ヘヴンイズノットヘヴン)』それに、森を司るスキル『人肌の温もり(スキンフォーレスト)』、を使った。その光景は、まさに神の御業そのものだった。
瞬く間に地面が昔のように豊潤な土壌に生き返っていく――それから、あっという間に緑のねっころがるとちょうどいい雑草が生い茂る野原が一面に現れた。
「あ、主!?こ、これはどういうことなのだ!?」
「ま、こういうことだ――開拓は任せたぞ?」
「あぁ、任せろ」
胸をはるレティシアの顔は少し輝いていた。
こうして、農場区画の4分の一はものすごくよみがえったのであった。

それから、コミュニティの本館に戻ると
双女神の旗印の封蝋があった。
「白夜叉のところから・・・?」
龍嗣は、それを開け、内容を読んでいく
「(――何々、東と北の;階層支配者;による共同祭典、;火龍誕生祭ねぇ;)」
「ま、面倒だし、そうだな――黒ウサギに相談するのも面倒だし、行くか」
それから龍嗣は、スサノオを連れ、黒ウサギに一筆(路銀はいらぬと)書いて、北側に向かっていった。

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