小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”変わらないモノと変わりゆくモノ”



〜Side ナミ〜



「そう言えばよ、この量の黄金を換金してくれるとこなんてあるのか?」

「え!?……そう言えばそうね」


ルフィとウソップが(ちなみにサンジ君は再起不能だったわ)二台の即席巨大リアカーで引いている黄金は、目算で2tはあるのよね。

今の相場がグラム4000ベリー前後のハズだから……80億ベリー♪♪♪

確かにこんな額を出せる換金所は無いでしょうね。ウソップの言葉を聞くまで考えもしなかったわ。

コレなら歴史的価値がありそうなお宝は売り払わなくても平気よね♪

ルフィが寝ぼけてノラの中で見つけた品々らしいけど、コレは”一味の”へそくりにとっておきましょう♪

……断じて個人的なモノではないわ!!!」


「ナミ!!? 思考が駄々漏れだぞ!!?」


いけない、わたしったらついつい言葉に出してしまってたみたいね。


「でも、それなら何箇所か回ればイイだけでしょ? 一味のお金になるんだから気合入れて引きなさいよ」

「スルーかよッ!!? まぁ、開発費さえ確保できりゃ、おれはソレでイイけどよ……それにしても、重すぎるんだよコレ……お前もちょっとは「イ・ヤ!!!」少しくらい考える素振をみせろやコラァアア!!!」


だって一つのリアカーに1tも積載してるのよ? か弱いわたしが運べるわけないじゃない。


「根性ねェなァ、ウソップ。ナミならコレくらい片手でぶらがっぱぁ!!!?」

「ルフィーーーー!!!? 確りしろ!!! 夢の銅像はすぐそこなんだぞ!!?」


失礼なことを言ったルフィを殴り飛ばしたら痙攣してる……今さらなんだけど何でルフィに効くのかしら??


「アホなことやってないで早く運びなさいよ」

「お前なァ!!? 毎回毎回やりすぎなんだよ!!!」


「はァ、アンタ達には言ってなかったけど、換金したお金でメリー号を修理するつもりなのよ。一刻も早く仲間を、メリー号を”治して”あげたいっていうわたしの気持ちを、アンタは踏みにじるつもりなのね……」


わたしは視線を落として少し悲しげな表情で語ってみた。


「ま、まさかお前がそこまでメリーの事を考えてくれてただなんて!!? 見直したぜ!!! 流石”豪腕のナみげらぼっちゃ!!!?」


何か今、聞き捨てなら無い二つ名を聞いた気がするけど、スルーね。

最近お兄ちゃんのスルースキルを継承してるかもしれないわ。


「タクミとチョッパーが頑張ってるっていうのに、二人して気絶するだなんて……仕方ないわね」


わたしは動かなくなった二人を黄金の上に載せて、街の入り口に向かった。

考えてみれば、ワザワザ換金所まで運ばなくても、誰かを雇って業者を集めさせればイイのよね。


「二台は引きにくいわね。どうせならもっと大きいのを一台作ればよかったのに」


巨大リアカーを二台引きながら街に現れたわたしを見た通りすがりのおじさんに、換金業者を呼んで来て欲しいと可愛くお願いすると、快く無償で引き受けてくれたわ。

若干怯えてるようにも見えたけど……スルーね。



〜Side チョッパー〜



おれは今ナミから逃げて……じゃなくてロビンを探してる。


「チョッパー、スピードアップだ」

「のわッ!!!?……確かにこのほうが早ェな」


タクミはおれを抱えて街中を縦横無尽に走り始めた。

タクミよりおれの方が鼻が利くけど、おれはこんなに早く動けねェもんな。


「ココら辺にはいねェ。アッチに行ってみよう」

「俺はイマイチロビンの匂いってヤツがハッキリしないんだが、チョッパーは解るんだよな?」


走り始めてしばらくして訊ねてきたタクミは、ちょっと悔しそうで、おれは調子にノリそうだったけど、今はタクミを励ましてやらなくちゃな。


「タクミは慣れすぎてて解んねェだけだと思うぞ? ロビンの匂いはな……花の匂いだな」

「なるほど、確かにそんな感じだな……俺は?」


タクミはあんなに酒を呑んだり煙草を吸ったりしてるのに、体臭は殆どねェんだよな。

多分アレも「生命帰還」の応用なんだろうけど、最近は少しだけタクミを識別できる匂いがあるんだ。


「タクミは前まで無臭だったんだけど、最近は少しロビンの匂いがするな」

「マジか!!?……へぇー、そうか」


タクミは急にニヤニヤしだして、機嫌がよさそうだ……よくわかんねェけど、成功したみたいだな。

その後はイロイロな場所を回ったんだけど、微かな残り香はあっても、強い匂いは無かった。

どれだけ動き回ったかわかんなくなった頃……


「この辺は……!!!?……タクミ!!! ロビンの匂いがするぞ!!! 今までの残り香よりは強い匂いだ!!!」

「何処だ!!!?」


「……上?? 凄いスピードでコッチに向かってきてる様な……」

「はぁ!!? 上って何だよ!!?」


そんな事言われても匂うもんは匂うんだ。

匂いの強さからして本人じゃないと思うけど、タクミみたいに直前までロビンの近くにいた人間のハズ。

二人して上を眺めていると、空を飛ぶ男が目に入った。


「アイツだ!!! アイツからロビンの匂いがするぞ!!?」

「なんだとぉぉおお!!!? 殺してやる!!!!」


タクミは俺をおいて殺気立った様子で、謎の男を追いかけて行ってしまった。

殺したらロビンの居場所を聞けないと思うんだけど……大丈夫かな?

あの男が他に纏っていた匂いは木の匂い……!!!? そういえばアイツ、鼻が長くなかったか!!!?

もしかしてウソップ!!!? ヤベェェェエエエ!!!!

刺青彫ってたウソップなら、ロビンの匂いがしてもおかしくねェのに!!!

あの状態のタクミじゃ確認もしないで、後ろから撃ち殺しかねねェぞ!!!?


おれは急いで二人が消えた方角へと走り出した。
 

 
 
 
〜おまけ〜



「ゾロ、二人きりなんて久しぶりね」

「……カルーと、そこに転がってる瀕死のコックはカウントしねェのか?」


「カルーは動物じゃない……でも、確かにサンジさんが居たら二人きりじゃないわね……トドメを刺しましょう」

「はァ!!!?」


「……死体なら人間じゃないわ」

「アホかお前は!!!? そんなに二人きりがイイなら鍛錬所に移動すっから、サンジは寝かせといてやれよ」


「はぁーい♪」



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「”海賊狩りのゾロ”を狩りに来たってェのに、何で甲板に死体が転がってやがんだ!!!?」

「きっと返り討ちにあったんだ!!! 剣士のクセに殴り殺すだなんてムチャクチャだ!!! 引き上げようぜ!!!?」


「そうだな……”海賊狩り”おそろしい男だ」


…………コレは悪魔でおまけです。



〜Fin〜
 
 
 

-102-
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