小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”Blood”



〜Side ルフィ〜



タクミの『真の姿』ってヤツはハンパじゃなかった。

4mくらいの巨体にも驚いたけど、何より凄まじかったのはその威圧感。

全身から発せられる猛獣のオーラに、この場の全員が固まった。

タクミが声を上げた瞬間に、ナミなんか気絶しちまったくらいだ。

ウソップも一瞬ヤバかったみてェだけど、何とか持ち堪えたみてェで、おれとウソップはタクミの勝利を信じて疑わなかった。


……なのに……


「タクミ!!!!!」

「お前ェ!!!! 何やってんだァ!!!?」


さっきタクミに蹴り飛ばされたハズのカクってヤツが突然現れて、タクミの腹を腕で貫いた。


「う……あ……ァァァァああああああ!!!!!」

「騒ぐな、協定は生きている。殺しはしない」


タクミの元に駆け寄ろうとしたおれの前に、ハトのヤツが立ち塞がった。


「邪魔するなァァああああ!!!!」


直ぐにギア”2(セカンド)”を発動してコイツを倒さねェと、あの怪我じゃタクミがヤバイ!!


「……「指銃」」

「!!!?……うっ……あ……」


脚に力を入れた瞬間に、おれはタクミと同じ様に腹を貫かれた。

ヤベェ……肉喰わねェと動けねェな。


「ルフィ!!!? クソッ!!! タクミまでやられたって事は海楼石か!!!?」


海楼石?? 確か能力者の力を奪う石だってタクミが……それでタクミがあっさりカクにやられたのか?


「ふん、カクの力では、海楼石を使わないとあの銀獅子を止める事は出来なかっただろうが、おれは違う。その男がゴム人間だろうが関係ない体技といったところか。まぁ、どちらにせよコレだけ鋭い爪ならば、ゴムに有効なのも当然だ」

「……タクミの「六式」とはまた別の技って事だな……さっきから言ってる協定ってのは何の事だ?」


ウソップは『殺さない』ってコイツの言葉に賭けて、情報収集に切り替えたみてェだ。

……ソレでイイ。お前じゃコイツには勝てねェ。


「切り替えが早いな。懸命な判断だ。カク!!! ソイツは殺すなよ!!! どのみちその状態なら、今回の任務に支障はないだろう。お前も動ける体じゃないんだ。確り見張っておけ」

「…………仕方ないのう」


カクは渋々って感じでタクミから腕を引き抜いたけど、さっきよりスゲェ量の血が流れてる……おれよりタクミの方がよっぽどヤベェな。


「協定についてだったな。ニコ・ロビンは、我々に同行するにあたって一つの条件を出し、長官殿はソレを承諾した。自分の命と引き換えに”麦わらの一味”をこの島で見逃す事だ」

「な!!!? 何だって!!!?」


ロビンはおれ達に、タクミに迷惑を掛けない為に船を降りようとしたってェのに……あんまりじゃねェか!!!!


「そうか……その協定のおかげで……おれ達はこの場では見逃して貰えるって訳か……」


ウソップの様子がおかしい?……まさか!!!?


「ヤメロ……ウソップ……お前じゃ……勝てねェ」

「いくら船長命令でも聞けねェな。ココでロビンを見捨てるような一味なら!!! おれは一味を抜けてでもロビンを助ける!!!」


ウソップの気持ちは痛ェくらいに解る!!! でも、この場でそんな事を言っちまったら!!!


「……一味を抜けるんだな? ソレなら協定の対象外になる。お前の作り出す兵器も危険だと報告が上がっているからな……この場で死ぬか?」

「やってやら「ウソップに」ルフィ!!!? お前!!!?「手を出すな」動ける体じゃねェんだぞ!!!? 大人しくしてろよ「うるせェ!!!」……ルフィ……」


おれはフラつく体を何とか起こして、ルッチと向き合った。

倒れそうになるのを何とか堪えて、そのままウソップに話しかける。


「船長(キャプテン)はおれだ!!! お前もロビンも、一味を抜けるのはおれが認めねェ!!!」

「だからお前がまだ戦うって事でイイんだな? 麦わら……命の保障は出来んぞ?」


ルッチはおれを脅すみてェに言ってくるが、おれの決意は決まってる。


「構わねェ!!! 仲間はおれが守るんだ!!!」


ウソップはもう何も言わなかった。


「暑苦しいヤツらじゃの。見逃してやると言うとるんじゃから大人しくしとればイイじゃろうが」

「カク!!!? 銀獅子から目を離すなと言っただろうが!!!」


タクミから離れてコッチにやってきたカクを見て、ルッチは酷く慌てた様子だ……今、チャンスなんじゃねェか?


「どうせそこの長鼻も戦うつもりじゃろうて、2対2で丁度イイじゃろ? 土壇場で会得した「生命帰還」を、早く試してみたいんじゃ」

「その「生命帰還」が厄介なんだ!!! 銀獅子の「生命帰還」は異常だ!!! 海楼石の武器を突きつけておかない限り、あの男の危険度は…………何だアレは!!!?」


タクミが倒れていた辺りを見たルッチはスゲェ驚いてるけど、アレは……何だ??

あまりの光景に、不意打ちしようと構えていた拳を思わず降ろしちまった。

ソコには真っ赤な骸骨が、デッケェ鎌を持ってコッチを見てたんだ。


「バ、バケモノじゃ!!! アイツはバケモノじゃ!!!」

「タクミ!!? それ以上はヤメテくれ!!! ホントに死んじまう!!!!」


ウソップは状況が解ってるのか?? 何でアレをタクミって呼ぶんだよ??


「な、なるほど。傷を塞いで立ち上がるくらいは予想していたが、意識もないのに自らの血で戦おうとするとは…………カリファとブルーノが任務は達成してるハズだ。カク、引くぞ」

「流石に同意じゃ。あんなバケモノとは戦っておれんわい」


タクミの意志が宿ったみてェにユラユラと近づいてくる血の骸骨を見て、ルッチとカクは船大工達を皆殺しにするって言ってた事も忘れてこの場を去ろうとしたんだけど、ウソップがルッチの腕を掴んでソレを止めた。


「待てよ!!! 負けを認めるってんならロビンの居場所をぶッ!!!?「ウソップーーーーー!!!!」……チクショウ」


ルッチの指は、ウソップの胸の辺りを貫いていた!!! よく解んねェけど、ソコは心臓があるんじゃねェのか!!!?


「あの男に敬意を表して教えておく。ニコ・ロビンは”エニエスロビー”へと連行される事になっている。助けたければ追いかけて来てみせろ」

「待て!!! おれと勝負しろ!!!」


空を駆けていく二人を、おれは止める事が出来なかった。


「ウソップ!!! 確りしろ!!! 今チョッパーのとこに連れてってやるから!!! ナミ!!! いい加減起きろ!!!!「痛ッ!!!? 何事!!!?」……タクミ……」

「何アレ!!!? どうなってんの!!!? ってウソップ!!!? 何で血まみれに!!!?」


……タクミの血で出来た骸骨は、アレ以上タクミから離れる事が出来ねェみたいで、ルッチ達が飛んでいった方向に、必死になって鎌を振り回していた。


おれとナミは倒れているタクミのところへ向かう。ナミは骸骨にビビってて恐る恐るって感じだ。

人の格好に戻ってるタクミの顔は、血の気が無さ過ぎて青白く見えた。


「……もうイイから……お前はもう頑張らなくてイイから……おれに任せてくれよ」


おれの言葉が届いたのか解んねェけど、骸骨はゆっくりとタクミの中に戻っていく。少しだけ顔色がマシになったみてェだ。


「二人を直ぐにメリー号に運びましょう!!! 詳しい事情を説明する為に、アイスバーグさんも連れてったほうがイイわね」


そう言ってナミは、ウソップとアイスのおっさんを両肩に担いでメリー号へと走り出した。

おれもタクミを背負ってあとに続く。

……多分、タクミは今度の戦いでは全力で戦えねェ。


「ロビンは絶対に助けるからな」


血まみれのタクミは返事をしなかったけど、おれは誓った。


「ルッチはおれが倒す!!!」
 
 
 

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