小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”カリファの誘い”



〜Side ロビン〜



「チクショウ!!! 今週のスーパーなおれが、まさか女に負けちまうとは……」


深夜に船を出た私はCP9に捕まり、市長暗殺の手伝いと、世界政府の玄関口”エニエスロビー”への同行を強要されてしまった。

最初は逃げようかとも思ったんだけど、CP9の長官がバスターコールの権限を持っていると聞いて観念したわ。

いくらタクミがいても、アレは回避しようがないもの……私は麦わらの一味全員を無事にこの島から出航させる事を政府に確約させる代わりにその条件を呑んでしまった。

コレがどういう意味かは解っているけれど、私は後悔なんかしていない。

暗殺計画は今晩にでも決行されるハズだったのだけれど、急な予定変更があったらしくて、計画は立ち消えになったらしい。

その代わりという事で、政府への忠誠を示す為に、フランキーっていうサイボーグを捕縛するように命じられた私は、この男を難なく捕らえる事に成功したわ。

それにしても海水パンツが普段着だなんて……ヘンタイね。

目に悪いしあまり……いえ、近寄りたくないわ。

……二度と。

!!!? この島に『サイボーグの船大工』がいるってタクミが言ってたけど、まさかこのヘンタイ!!!?

サイボーグなんてそんなにいるとは思えないし、きっとこのヘンタイなんでしょうけど、マズいわね。

船長さんは『仲間にしよう!!』なんてかなり興味を示していたし、このヘンタイが攫われたら助けに来てしまうんじゃないかしら?

助けに来る事自体も問題だし、何よりこんなヘンタイを一味に加入させてしまったら、チョッパーに悪影響が出るわ!!


「任務は完了のハズよ。早くこの場を離れましょう」

「てめェー!! 丁重に扱え!!!」


縛り上げたヘンタイを床に転がしたら抗議の声を上げたけど、今の私にはどうでもイイ。

今は只、彼らにバスターコールをかけられないように最善を尽くすだけ。

そして、チョッパーに悪影響を及ぼしかねないこのヘンタイを、一刻も早くこの島から連れ出さなくちゃいけない。

その為なら私は、どんな犠牲も厭わない。


「便利な能力ね。自然系じゃないと防ぎようがなさそう。CP9として働いて欲しいくらいだわ」


私をココに連れてきた眼鏡が似合う知的そうな女性、確かカリファだったわね。 嫌味とかお世辞じゃなくて本心で言っているみたいだけど、CP9の紅一点って立場が辛いのかしら?

急いでいるっていうのに面倒ね。


「協定を守ってくれるなら構わないわ。私から情報を引き出した後は好きにすればイイ」


どうせそんな事は不可能なのだから、私は彼女に適当に返事をしたわ。


「ねェ、その能力があれば、私が声をかけた時に簡単に逃げ出せたハズでしょう? 何がアナタをそこまでさせるの?」


彼女は本当に解らないって様子で、まるで女友達に話しかけるみたいに気軽に訊いてきた。

少しイラッとくるけど、この質問にはちゃんと答えなくちゃいけない。

私にとって、とても大事な事だから。


「そうね……”愛”じゃないかしら?」


私の答えを聞いて彼女は固まってしまったわ。


「……ふふ、羨ましいわね。わたしは子供の頃から『CP9のエリートになる為に』って父様に厳しい稽古をつけられて育ってきたから、そんな経験した事ないわ。しかも、あんなに頑張ってCP9のNo.4まで登り詰めたのに、秘書なんかやってたせいできっと体が鈍ってるハズだし、イイ事なんて何もないわよ」


そう愚痴をこぼす彼女は……思ったより冷酷な人間じゃないのかしら?


「私も彼に会うまでは、暗い世界を一人で歩いてきたから、弱くなった自分を嘆く気持ちは少し解るわ。私ね、夜に熟睡するようになったのはつい最近の事なの。以前の私なら、警戒感が無くなってしまったって嘆いたんでしょうけど、彼の影響を受けて生まれた隙なら、私はそれで死んでも構わないって思ってるわ」


どうして私は敵にこんな話をしているのかしら? 平和ボケもココまでくると重症ね。


「……”愛”って怖いのね。でも、アナタの話は結構興味深いし、エニエスロビーまで話し相手になってくれる? 報酬はそうね……アナタのCP9加入を正式に長官に頼んでみるわ。わたしとコンビを組みましょうよ♪」


本当にそんな話が通るとでも思ってるのかしら?……どこか雨女さんと同じ匂いがしてきたわね。


「……本気なの? ”歴史の本文(ポーネグリフ)”を探すの手伝ってくれるのかしら?」


流石に断るだろうと思って少しからかってみたんだけど……


「わたしが手伝うの!!? アナタ、兵器復活なんて本当は画策してないわよね……考えておくわ」

「!!!? 確かに私は歴史を知りたいだけなんだけど、どうしてそう思ったのかしら?」


予想外の答えが返ってきたから思わず訊いてみたわ。


「勘よ……女の勘!!」


自身ありげに答える彼女の姿は、雨女さんにそっくりで、こんな状況なのに思わず笑ってしまった。


「フフ、おかしな人」

「アナタどうせ『出来るわけない』とか思ってるんでしょ? わたしの父様はCP9を引退してから、マリージョアで天竜人の警護主任をしているのよ? 地位で言ったら中将に相当するわ。わたしがお願いすれば、コレくらいの無理なら通してしまうんだから!!」


自慢げに話す彼女は、きっと父親を誇りに想ってるんでしょうね。


「ありがとう、話し相手くらいならお安い御用よ」

「本当に!!?」


私の言葉を聞いて、彼女はモノ凄く喜んでるみたい。

最初の印象とだいぶ違うわね。本当に雨女さんを見ているみたいだわ。


私はこのまま死ぬ運命なのだと思っていたけれど、もう一度だけ夢が見れるかもしれない。


そこに彼が居なくても、彼女と闇を生きながら夢を追うっていうのも悪くはない……死ぬよりはきっと……悪くはない。


世界の何処かで、彼も夢に向かって生きていくだろうから。
 
 

 
  
〜おまけ〜



「……おいブルーノ!!! アイツら行っちまったぞ!!? 何かおれ忘れられてねェか!?」

「お前はまだイイだろ……セリフあったんだし。おれなんかこの場にいたのに地の文にも出てない……」


「……お前何言ってんだ??」



〜Fin〜
 
 
 

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