小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”それぞれの海列車”



〜Side サンジ〜



「……何か拍子抜けだな」


海列車が出発してしばらくして、おれは潜んでいた最後尾の車両デッキから、扉を蹴破って突入した。

中には政府の人間がウジャウジャいやがるもんだと思い込んでいたんだが、その車両にいたのは海兵が一人だけで、しかも、扉ごと吹き飛ばしちまったみてェで……まぁ、要は窓から海に落としちまったって事だ。

各車両に控えているメンバーの事を聞きだしたかったんだが、コレじゃどうにも出来ねェな。


「取りあえず次の車両にでも行くか……!!!?」


無人の車両を素通りして、次の扉を開こうとした瞬間、嫌な予感がして跳び退くと、ドアノブを中心に10cm四方が消失していやがった!!

おれが警戒しながら扉を見ていると、ゆっくり扉が開き、海軍将校のコートを羽織った、ゾンビみてェな顔の大男が現れた……コイツ強ェな。

見たところヤツの得物は身の丈程もあるクレイモアだけだが、あんなモノでどうやってドアノブを消失させたんだ!?……何かトリックがあるとみて間違いねェな。


「私の任務は罪人2名の監視と、不足の事態における後部二車両の死守……この車両には私の部下が控えていたハズなのだが……気のせいかな、見当たらないようだが?」


おれがやったであろう事は確信してるだろうに、イチイチおれに問いかけてきやがって!!


「おれは知らねェな。急に海水浴でもしたくなったんじゃねェのか? 窓を突き破るくれェテンションが高かったみたいだな」

「白々しい事を!!! 部下の無念、晴らさせてもらおう!!!」


ゾンビフェイスはクレイモアを両手で構えておれを睨みつけてくる。

戦うには早い、ドアノブを消失させたトリックがまだ解ってねェからな……情報が足りねェ。


「名前くらい名乗ったらどうなんだ? おれはサンジ!! 麦わらの一味の戦う一流コックだ!! 武器は持たねェ!! 己の肉体のみで戦わせてもらう!!」

「イイだろう!! 私は『海軍本部』大佐!! ”船斬り”Tボーン!! 武器はこの大剣”サイズモア”だ!!!」


コチラから情報を渡せば乗ってくるかと思ったんだが……もう一押しか。


「まだ武器があるだろうが!!! そんな大剣でどうやってドアノブを一瞬で消せるってんだ!!! 隠し立てするのは男らしくないぜ?」

「黙れ!!! 貴様の常識で判断して、私を侮辱するな!!!」


そう言ってTボーンが大剣を壁に向けると、さっきみてェに壁の一部が10cm四方だけ消失しやがった!!!

どういう事だ!!? 大剣を持つ左手が、一瞬だけ霞んだようにも見えたが……まさか!!!?


「何をそんなに驚いている? 高速の連突で塵も残らんほどに消し飛ばしただけの事だ。名乗りも済んだ。貴様の疑問も解消してやった。さあ!! 貴様に正義を教えてやろうではないか!!!」



…………おれ死んだかも。



〜Side タクミ〜



「今回の戦略目的はロビン、チョッパー、ついでにフランキーの奪還だ!!!」


俺は今、今回の奪還作戦に参加する全員を集めて、突入前の最終確認をしているところなんだが……取りあえず五月蝿い。

原作と違って、ビビの大規模殲滅技がある以上、この人数は正直言うと邪魔なんだよな。

フランキー一家だけでも置いてくればよかったかもしれない。


「黙って聞け!!! 次に騒いだヤツは海に放り出すぞ!!!」


俺の剣幕にビビッたフランキー一家の連中と職長達は大人しくなったんだが……


「わたしはイマイチ状況が理解出来てないんだけど?」

「要はロビンとチョッパーを取り返せばイイんだろ?」

「誰がこようが叩ッ斬るだけだ!!!」

「フフ、滾るわ!! 漲ってきたわ!!! コンディションは万全ね!!!」


ウチの連中は静かにする事も出来んのか……またイライラしてきた。


「タクミ、戦いの前に渡しておきたいモノがあるんだ」


俺がそろそろビビに拳骨でも落とそうと考えていると、ウソップが何かの包みを差し出してきた。


「コレは!!!? 実現不可能じゃなかったのか!!!?」


包みの中では、白地に金の装飾が施されたオートマチック拳銃と、黒地に銀の装飾が施されたリボルバー拳銃が、圧倒的な存在感を放っていた。

相変わらずとんでもないサイズだ。リボルバー拳銃にいたっては、最早ツェリスカの大きさを超えている。


「今までの技術を纏め上げた最高傑作がその”アイボリー Sharp”と”エボニー Evolve”だ。使用者をお前に限定して言えば、アイボリーがエボニーに勝っているのは、残念ながら装弾数だけだな。エボニーは耐久性を向上させているから、今までよりさらに速撃ちしても大丈夫だし、グリップに秘密兵器を仕込んでおいた」


ウソップの渡してきた説明書きを読んで、俺は思わず顔がニヤけてしまった。


「ありがとうウソップ。お前は最高の開発者だ!!」


マジでコイツは天才だ!!!…………フランキー要らないんじゃないか?

義手もウソップに頼んだって問題ないだろうし、船だけ作ってくれれば構わないような気もする。

なんか今のメンバーの輪の中に異物が入るみたいで、イマイチ気が進まないんだよな。

まぁ、そこら辺は俺の考える事じゃないし、ルフィに任せよう。

正史とはかけ離れたこの現状で、俺が介入せずにフランキーが一味に加入するって事になるなら、それはもう運命だろ。


「ウソップのおかげで、タクミの機嫌がちょっとよくなったみてェだし、長ったらしい作戦は聞かずに済むんじゃねェか?」


……『長ったらしい』だと?……聞こえてるぞ?


「ルフィ?……何かタクミからイヤ〜なオーラが出てるんだけど」

「?? 何でだ??」

「おれは知らねェからな」

「じゃあわたしも知〜らない」


どいつもこいつも!!!……俺が何時もどれだけ苦労をしてるか解ってないみたいだな。


「タクミ? ちょっと落ち着けよ。アイツら全員バカなんだ」

「クェ〜〜〜……」


ウソップが俺を宥めようとしているが、別に俺はナニもするつもりもない。

カルーもビビリすぎだ……ていうかお前いたんだな。

俺はちょっと、今から戦う敵の巨大さと卑劣さを詳しく教えて、コイツらの危機感を煽ってやるだけのつもりだ。


「さあ、作戦を説明する前に、これから戦う敵の情報を、お前らの頭に叩き込んでやろう。ルフィとゾロは、寝たらぶん殴るからな」


何か皆の顔が引きつってるような気がするが、スルーして説明を開始する事にした。
 
 
 

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