小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”名探偵ナミ”



〜Side ナミ〜



「どうだ?……ぶっ壊してやりたくなっただろ?」

「ええ、何もかもね」


タクミから聞いた世界政府の悪行の数々、ロビンが生きてきた耐え難い闇の世界。

最初はガレーラの職人達とバカ話をしていたルフィも、途中からは拳を握り締めて聞き入っていたわ。


「タクミ、おれは世界政府に宣戦布告する」


呟くように決意を語るルフィに、タクミは満足気に頷いた。

いつもはルフィやビビの暴走を止める立場のゾロも、今回ばかりは異論は無いみたいで、さっそく刀に手を掛けている。


「それでこそ”ウラヌス”だ」

「うらぬす? 何だソレ??」


”ウラヌス”?……確か神話に出てくる天空の神の名前だったかしら?

タクミはルフィの破天荒っぷりを随分と高く評価してるのね。


「??……”ウラヌス”??……何だろうな?」

「は?? お前が言い出したんじゃねェか」


ルフィに質問されたタクミは、自分でも何を言ってるのか解らないって感じで、困惑した表情だった。


「解らないんだ。お前の言葉を聞いたら自然と浮かんできた単語なんだが……この戦いが、お前にとっての転機になるのは間違いないハズだ」

「そっか、まあ、おれのやる事は変わらねェよ」


”ウラヌス”が天空の神だって事は教えたほうがイイのかしら?

タクミはホントに理解せずに話してるみたいだし、例えとして話したんじゃないとしたら、”予言”の力が強まったって事かもしれないわね。


「タクミ、”ウラヌス”っていうのは……!!!?」

「何だナミ? 何か知ってるのか?」


ちょっと待って!!!? 確かアラバスタの古代兵器”プルトン”は、同じ神話の冥府の神の名前、随分前にタクミが探してるって言ってた古代兵器”ポセイドン”も同じ神話の海の神の名前。

……と言う事は……


「タクミ……」

「何だよ? さっきから深刻な表情で」


「古代兵器は何種類あるの?」

「ナミってそういう伝説に興味があったっけ?」


「イイから答えて!!!」

「……一般的な学説では三種類だって言われてるけど?」


この先を聞いてイイのか解らない。

わたしの推測が正しければ……


「古代兵器の名前を教えて」

「??……一つはお前らも知ってる”プルトン”。クロコダイルが狙ってた戦艦で、今回の騒ぎの原因だな。二つ目は”ポセイドン”。海王類を操る力を持った人魚姫って話だ。三つ目が…………すまん、ど忘れした。俺よりもロビンの方が詳しいと思うから、救出した後にでも聞いてみたらどうだ?」


……”ポセイドン”が人魚姫だっていうなら、三つ目の古代兵器が人間だって可能性は十分にあるし、その名前が”ウラヌス”だって可能性も……


「そ、じゃあロビンを助けたら聞いてみるわ」


未だ困惑気味のタクミに背を向け、わたしは戦闘服に着替える準備をする。


”ウラヌス”の事はしばらく黙っていようと思う……確証があるわけでもないし、ロビンにこんな事を聞いたらきっと訝しがるに決まってるもの。


でも……タクミはとんでもない事を”予言”してしまったのかもしれないわね……世界を、揺るがしかねない”予言”を。



〜Side タクミ〜



ナミは何で古代兵器の事なんか聞いたんだ?

最近は脳筋になりかけてきてるのかと思ってたけど、知的好奇心はちゃんとあるみたいだな。

……何か今、殺気を感じた気がする。ゾロか?

さっきまで覚醒一歩手前だった俺が言うのもアレだが、少しは自重して欲しいもんだな。

フランキー一家がビビッて使い物にならなくなりそうだ。


『『プルルルルルル……』』


ん? ああ、サンジか。最近は災難続きみたいだが、取りあえず無事みたいだな。


『『プルルルルルル……』』


フランキーが強化されてるのかは謎だが、本気のチョッパーとそれなりに頭の回るサンジがいるんだから、ひょっとしたら既にロビンを救出……それは無いか。

ちょっとCP9の強化レベルが異常だしな。全員まとめて捻り潰してやって『タクミ、素敵♪』って計画だったんだが、流石に無理だろう。


『『プルルルルルル……プルルルルルル……プルルルルルル……』』


…………スパンダム……とんでもない事になってんだろうな。

心底嫌いだし…………手強そうだな。


「タクミさん? 出ないの?」

「あぁ、ちょっと考え事しててな……あー、サンジか?」

『『散々待たせた挙句お前ェが出んのかよ!!!! ナミさんを出せや!!!!』』


声がデカイ、そんなに怒鳴らなくても聞こえてる。


「悪いな、ナミなら、俺の目の前で戦闘服に絶賛お着替え中だ。因みに遮るモノは何も無い」

『『ぬァァアアにィィィイイイ!!!? 貴様殺してやる!!!! CP9より先にだ!!!!』』


って事はやっぱり、そこまで期待してたわけではないが、ロビンの救出はまだなんだな。


「挑戦は何時でも受け付ける。そんな事はどうでもイイから、ソッチの状況を説明しろ。俺たちは最高速度で勝る海列車で、お前らを追いかけてる最中だ」

『『どうでもイイ事あるかァァアア!!!! この件は後でキッチリかたをつけるからな!!!!…………チョッパーと、ついでにフランキーとかいうチンピラは救出したが、ロビンちゃんにはまだ接触出来てねェ』』


「敵の戦力は把握してるか?」

『『海軍本部大佐のTボーンってヤツとソイツの部下は倒したんだが、情報を聞き出す余裕も無かった。今は第六車両の屋根でこの電伝虫をかけてる』』


Tボーンが乗ってたのか!!? 予定と違うから、護衛なんてコーギーの子飼いの部下くらいだと思っていたんだが……ラーメンとかも乗ってるのか?


「……問題無いな。サンジ、存分に暴れろ」

「ちょっとタクミさん!!? いくらなんでもソレはムチャクチャよ!!!」

「おれも同意だな。敵の戦力がハッキリしねェ以上、サンジ達は合流まで待たせるべきだ」


ゾロ&ビビか、息が合ってきたな。おめでとう。


「ロビンが捕らえられたままなんだぞ? サンジとチョッパーが止まるわけないだろ。それに、お前らならじっとしてるのか?」

「「…………」」

『『わかってるじゃねェか。チョッパーはとっくに戦闘態勢だぜ? さすが副船長とでも言った方がイイか?』』


「気持ち悪いからヤメロ。ロビンは先頭車両にいる。失敗したらフォローしてやるから、お前らは全力を尽くせ」

『『便利な占いだな。最初からそうしてりゃロビンちゃんが攫われる事もなかったんじゃねェのか?』』


俺の占いは半分……半分以上はインチキだからな。


「今回のは占いじゃない。愛の力”ロビンセンサー”だ」

「うわ〜……でも、タクミさんなら納得かも」

「コイツは最早人間じゃねェからな」


おいフランキー一家、一糸乱れぬ動きで同意してんじゃねぇ。


『『はッ、お前のセンサーなんぞに頼らんでも、おれの美女センサーで直に見つかってたんだよ!! お前が来る前に救出して、ロビンちゃんをお前から掻っ攫って「殺すぞ?」……お前といるとロビ「殺すぞ?」……冗談だ……後、チョッパーから、ロビンちゃんがアイツラに逆らわない理由も聞いたんだ』』

「バスターコールの事だろ? ロビンの過去も含めて、俺は最初から全部知ってる……サンジ、無理はするなよ」


『『煽っておいて最後に心配かよ……おれは、止まる気はねェからな!!!』』

「切っちゃった」

「あのバカは絶対に早死にするタイプだな」


ゾロとビビは通話終了を確認すると、皆の所に戻って行った。

確かココは、サンジのカッコイイシーンだったハズなんだが……そういえば俺は、アイツの活躍を一度もこの目で見た事が無い気がするな。

……悪い、サンジ。エニエスロビーでもお前の活躍を奪うかもしれない。

俺はジャブラと戦いたいんだ。「鉄塊 拳法」のコツとか吐かせたいし……


「アイツの初頭手配額、かなりショボイかもな」


俺の呟きを聞いていたら、さぞかしサンジは嘆いていただろう。

俺は、せめて”アタッちゃん”のカメラのレンズカバーは外してやろうと密かに誓った……見かけたらだけど。
 
 
 

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