小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”コーギーの受難”



〜Side フランキー〜



走行中の海列車の上で電伝虫で話をしている金髪マユゲ……マユゲでイイか。

まぁ、とにかくおれは、政府の連中に捕まってる所を、このマユゲに助けられたんだが、コイツはニコ・ロビンも助け出そうとしてるらしい。

マユゲに助け出されるまでの間に、チョッパーから事情を聞いたおれとしては、コイツらに手を貸すのは吝かじゃねェし、何よりニコ・ロビンが政府に引き渡されるのはおれも困る。

途切れ途切れに聞こえてくる会話の内容から察するに、マユゲは仲間と情報を共有してるみてェだが、どうも船長に対する口のきき方じゃなかった。

叩きつけるように電伝虫を切ると、マユゲはチョッパーにニヤリと笑いながら声を掛ける。


「チョッパー、タクミから伝言だ。『存分に暴れろ、直ぐに追いつく』だとよ」

「ホントか!!? うおーー!! やるぞー!! 今度こそカクを倒すんだ!!!……でも、タクミなら止めるかと思ってたぞ?」


チョッパーの疑問は最もだな。さっきの会話相手が、おれの強さを知らねェ以上、普通のヤツならこの状況は止めるハズだ。


「おれ達が止まるわけないって諦めてるみてェだったぜ? 追加の伝言で『無理はするな』って言ってやがったが、存分に暴れつつ無理すんなってムチャクチャな指示だよな」

「ムチャな指示でもおれはやる!! タクミの一番弟子だからな!!」


指示をだす立場って事は、やっぱさっきの会話の相手が船長か? チョッパーは尊敬してるみてェだし、忠誠はそれぞれだからな。


「おう、チョッパーから事情は聞いてるからな、アイツらとやるってんなら、おれも手を貸すぜ?」

「お前が? タクミからお前の事は何も聞いてねェんだが、お前強ェのか?」


あ? このおれを目の前にして『強ェのか?』だと?


「スーパー強ェぞバカヤ「そうだった!! 聞いてくれよサンジ!! コイツ、タクミがこの間言ってた”サイボーグ”だぞ!!!!」「何!!!? コイツが!!!?」……タクミってヤツは何者だ」


おれがサイボーグだって話した時のチョッパーは、証拠を見せたわけでもねェのにあっさり信じたから、気にはなってたんだが、事前に情報を掴んでたって事か。


「タクミは”ハンター”で”占い師”だ。自分の左手を失った時に、お前の存在を視たらしいぜ? 義手の製作を頼むつもりらしいから、5億ベリーくらいカモッてやれよ」

「5億!!? さすがのおれもソレは引くぞ!!? 占いで荒稼ぎでもしてんのか!?」


必要なヴィジョンが視える能力者だとすりゃ、それくらいの額を稼ぐのもわけねェ事だろうが、マユゲからは嫌われてるみてェだ。


「顧客抱えてるわけじゃねェけど、黄金郷の在り処を探し当てたのがアイツの最大の功績だな。あとアイツは単純にクソ強ェから、”ハンター”として狩った希少な獲物の毛皮とかで定期的な収入もあるから、ちょっとたかられたくれェじゃビクともしねェよ」

「タクミは完璧超人なんだぞ!! 何でも出来るんだ!!」


チョッパーもマユゲもそれなりに強ェのが解るが、コイツらが別格扱いする強さか……”スーパーな戦闘力の占い師”とは、とんでもねェヤツがいたもんだ。


「義手の事なら任せとけ。おれも要り様だしな。精々カモらせてもらうぞ?」

「おう頑張れ。アイツは良いモノは正当に評価するから、手抜きしなけりゃ全財産寄越すかもしれねェぞ。けどな、あの暴君に粗悪品なんか作ったら、消されるからな」

「タクミがそんな事するもんか!! いい加減な事を教えるな!!」


マユゲもタクミってヤツを評価はしてる……嫉妬か。コイツは小物だな。

チョッパーの方は妄信してるって感じだが、そういうヤツは教祖には絶対勝てねェかわりに、他のヤツに対しては無類の強さを発揮するっていうからな。

捕まってたとはいえ、実力はチョッパーが上と見て間違いなさそうだ。


「ソイツの話はもうイイ、おれは最終的には、自分の眼で見たモノを信じるからよ。それより、やるならさっさと行くぞ」

「何でてめェが仕切ろうとしてんだよ!!」


「あ? この中で一番スーパーなこのおれが仕切るのは当然じゃねェか」

「あっけなく捕まってたヤツがよく言うぜ……ちなみに誰に捕まったんだ? 見るからにヤバそうなあのハトの男か?」


!!!?……言わなきゃダメなのか?


「……ニコ・ロビンだ」

「「え!?」」


おれの発言にコイツら固まりやがった。

無理もねェか、まさかおれも女に捕まるとは思ってもいなかったからな。


「言いてェ事は解るが聞いて「ロビンが相手じゃなァ……元気だせよ」……あ?」

「ロビンちゃんが、実は一味最強だっていうおれの考えは、間違えじゃなかったみてェだな」


コイツらおれに同情してやがったのか!!?


「タクミがあんまり戦わせないようにしてるけど、ロビンの能力は応用力が抜群だもんな」

「ロビンちゃんが本気になれば、ビビちゃん以外には勝てるだろうな。でもビビちゃんは、タクミと……多分ナミさんには勝てないから、総合的なNo.1はロビンちゃんだろ」


意外と戦いってもんが解ってんだな。あの能力は逃れようが無ェ。

あのニコ・ロビンでも勝てないヤツが一味にいるって事は……


「ビビってヤツは自然系なのか?」

「よく解ったな、ビビちゃんは雨人間だ」


雨人間……ソイツ一人で十分アイツらを倒せそうだが、自然系に勝てるヤツが二人もいるってのが意味不明だ。

チョッパーの話じゃ、ニコ・ロビンを含めて10人の一味らしいが、少数精鋭部隊ってヤツらしいな。


「そんだけ戦力が残ってんなら、フォローは任せて問題ねェみてェだな。マユゲはニコ・ロビンの説得に専念しろ。戦うのはおれとチョッパーだ」

「だ・か・ら、何でてめェが仕切ってんだ!!?」


「お前チョッパーより弱ェだろ?」

「……自信があるんだな?」


愚問だな。事故で体が欠損して以来、改造を加え続けてきたおれの体は、もはや人を置き去りにした存在。


「おう!! スーパー任せとけェ!!」


コイツらに魅せてやろう!! おれの力を!! 技術力を!! 信頼を勝ち得たおれは、義手の製作代金でアダムを大量購入だ!!



〜Side コーギー〜



「それでね、そこで長官はこう言ったの!! 『必要ならば、おれを犠牲にしてでも任務を達成しろ』ってね……カッコイイでしょ!?」

「……そうね」


「アレは、わたし達の力を信頼してくれてるからこそ、出た言葉なんだと思うわ。指揮官なのに前線に出てばかりで、ルッチはよく苦い顔をしてたけど、長官が傍にいる時のルッチは見るからに張り切ってて、それが結局プラスになるのよね」

「……そう」


「情報が早く入るのと、”おとり”になるのが前線に出る理由だって言ってたけど、奇襲をしかけてきた敵を返り討ちにしたりしてたから、”おとり”っていうより”ジョーカー”って感じよ。座って指示を出してるだけの指揮官が強いだなんて、敵は思わないもの」

「……そ」


……元CP9最強……現マリージョア天竜人警護主任……”骨折りのラスキー”……アイツの娘だっていうから期待していたんだが、コイツには緊張感の欠片も無い。

ニコ・ロビンの監視役として、この車両に同伴していると聞いたが、この状況は、単に話し相手が欲しかったとしか思えん。

マシンガントークにつき合わされているニコ・ロビンは、海楼石の手錠を付けられてるわけでもないのに、段々と衰弱してきてる様にみえる。

正直アレはキツイだろう……罪人ながら同情を禁じえんな。


こうして定期的に様子を伺いに来ているというのに、ラスキーの娘はコチラを一瞥する事すらない。

周囲への警戒は大丈夫なのか?

いくら後ろの車両にCP9が三人も控えているとはいえ、敵はニコ・ロビンを含めて、総合賞金額(トータルバウンティ)が4億ベリーを超えている新設海賊団なんだぞ?

結成から数ヶ月でココまで駆け上がった海賊団……真の実力は海軍の評価より上だろう。

最大の問題は、復活した”熱愛のジキタリス”の息子が偽名で副船長を務めていて、しかも”予言者”の異名を持つ占い師だという事。

ジキタリスの生存を含めて、まだ政府高官しかこの事実は知らないが……考えただけで頭痛と胃痛がしてきた。


「コーギーさん」


私がそろそろこの車両を出ようとしていると、ラスキーの娘が話しかけてきた。


「なんだ? また紅茶のおかわりか?」

「セクハラです」


……小さい頃に何度か会った時は、利発的な美少女という印象だったんだが……そのまま成長したのは外見だけだな。


「そうかい。それじゃあ私は退出させてもらうぞ」


さっさと元の車両に戻ろう。

張り詰めた緊張感が漂ってはいるが、ココにいるよりはマシだ。


「ブルーノ!!!」


??……扉に手を掛けた瞬間に聞こえてきたカク氏の声に、私の動きは一瞬止まる。


「首肉(コリエ)!!!」

「ッ!!!?……」


何が起きたのかサッパリ解らなかったが、頭痛は消えた。
 
 
 

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