小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”VS クマドリ”



〜Side チョッパー〜



「……あいや……あいや天晴!!! げに美しき……桜ァ……吹雪ィ……」


 ダメだった。おれの渾身の攻撃も、コイツを倒す事は出来なかった。やっぱタクミ程のレベルじゃないにしても、「六式」を習得してるヤツは頑丈過ぎる。


「叶うなら……あ、叶うのォならァ……銀髪のォ獅子と戦いてェと……あ、ねが、願っちゃァいたが、おめェさんも……なかなかどォしてェ……つわ、兵(つわもの)で御座候!!!」

「つ、兵なんて言われたって嬉しくねェぞ!!!……コノヤロ〜が!!!」


 はっ!!? おれはこんな時に、何を喜んでるんだ!!!

 でも、攻撃自体は効果があったって考えてイイんだよな。さっきまでは劣化版「獅子鉄塊」で、全部ガードされてたんだし、それに比べれば上出来って事だ。

 コイツが、おれよりも遥かに上の「生命帰還」の使い手だってわかった時には、かなりビビッたけど、逃げ出さずに戦ってよかった。

「獅子 指銃」とかいう技も、よく考えたらタクミが使う「獅子 針銃(シシシンガン)」の劣化版だし、その上タクミは針だけじゃなくて刃や鈍器に変形させて攻撃出来る。

 普段タクミの絶技を見慣れてるおれからすれば、厄介なのは「鉄塊 剛」の硬度だけだったんだよな……ビビッて損した。

 でも、タクミと特訓してなかったら、おれはランブルボールの効果時間内にコイツを倒す事が出来なくて、今頃は化物(モンスター)にならなくちゃいけねェ状況だったかもしれねェ……

 やっぱランブルボール無しで戦えるっていうのは、かなり戦略が広がるな!!!

 良く見たら足元がふらついてるし、立ってるのがやっとって感じだ。よーし、このまま押し切って鍵を奪って、早くロビンを助けてやらねェと!!!


「ガルルルルルァア!!!!」

「!!? 何だよ!!? いきなり吼えだして!! そんな事したって、お前は獅子にはなれねェ。 ”百獣の王”はタクミ一人だけだ!!! このタコ野朗!!!」


 このタコ野朗は、戦いの初めに『”獅子”と呼んでェ〜〜!!! あっ、んもらっ!! んもらァ〜〜〜〜お〜〜〜〜かァ〜〜〜〜〜っ!!!!』とか言ってたけど、この広い海で、獅子の名前を名乗ってイイのは、正真正銘の百獣の王”銀獅子のタクミ”だけなんだ!!

 ……それにしても、コイツの鬱陶しい喋り方はなんとかならねェのかなぁ。二度と脳内で再生しないようにしよう。考えるだけで疲れる気がする。


「もはや……もはやこらゆる事ならぬゥ!!! 獅子吼 イガゴボッ!!!?……」

「だから、お前は獅子を名乗るなって言ってるだろ!!!」


 あくまで獅子に拘るタコに頭にきたおれは、口上の途中で全力の刻諦を下顎に刻んだ……もう動かねェみてェだな。

 突然髪が動き出したりしないように念には念を入れて、タコの頭を丸坊主にしてから、おれは鍵を探し始めた。



〜Side フランキー〜



 意識が戻った時、電伝虫が鳴り響く司令室で、おれは一人で冷たい床に倒れていた。

 ……体の芯に響くような……重たい斬撃だった。

 どんな改造を施したって、おそらくおれはヤツには敵わない。

 そう思わされる程の、あまりにも強烈な一撃。

 目が覚めて、当然の様にニコ・ロビン達がいなくなっているのを確認しても、おれは身体を動かす事が出来なかった。

 コーラは十分に満たされてる。おれが動けなかったのは、そんな事が理由じゃねェ。


 …………トムさんの仇の一人に、おれは……また何も出来なかった。

 どんなヤツにだって負けねェ身体を手に入れたと思ってた。生き延びる為ってのが一番だったが、いつかトムさんの仇を取りたくて、おれはこの身体を改造し続けてきたってェのに……


 ニコ・ロビンには、助けに来てくれる仲間がいた。ザンバイ達を責めるわけじゃねェが、W7に帰る気力がなくなっちまったのは確かだな。

 ニコ・ロビンが誘ってくれた事だし、タクミってヤツの義手を作って、そのまま海賊になっちまうか……資金力は豊富な一味みてェだし、”夢の船”だって作れるかもしれねェ。

 にしても、ニコ・ロビンから聞いた話じゃ、船長はタクミってヤツじゃねェらしいが、クルーが5億の金を自由に出来るってどんな一味なんだよ……


 そんな事を考えていたら、爆音と同時に塔が揺れて、鳴り続けていた電伝虫の送話器が落ちた。

 麦わらの一味が暴れてるわけだし、スパンダの野朗に指示でも仰ぐ為の通信かと思っていたおれの耳に、予想外の声が聞こえてきた。


『『アニキ!!! アニキー!!! 聞こえますか!!! そこにいるんですか!!! タマゴンです!!! 聞こえてるなら返事をして下さい!!!』』

「タマゴン!!!? 何でてめェがココに!!?」


『『アニキ!!? おいっ!!! 皆!!! アニキが応答したぞ!!! アニキ!! おれ達フランキー一家、銀獅子さんにココまで連れてきて貰ったんだ!!! アニキを助けに来たんだ!!!』』


 タマゴンだけじゃなくて、全員で来たってのか!!? さっきの通信で言ってた謎の集団ってのは、アイツらの事だったのか……


「て、てめェら……」


 政府の重要施設を守る衛兵相手に、アイツらが負った苦労を考えたら、おれは涙が溢れてきた。

 そんなアイツらを裏切って、おれは麦わらの一味に入ろうとしてただなんて……


「てめェらコノヤロー、誰が助けに来いなんて……来いな゛ん゛で……だドンダンダデョーーーーウ!!!!」


 クソッ、強がったって、コレじゃ泣いてんのがバレバレじゃねェか……


『『アニキ!!! まだ司法の塔にいるんですよね!!!』』

「うるせェーーー!!! バカヤロー、コノヤロー……泣いてねェぞーーーー」


『『すぐに助けに行きます!!! 待ってて下さい!!!』』


 力強いタマゴンの言葉を最後に、通信は切れた。アイツ、おれが泣いてる事には触れねェでくれたな……


「棟梁のおれが、こんなんでどうすんだ…………泣いてる場合かァ!!!!」


 決意を新たに、おれは立ち上がる。さっきまでおれを支配してやがった無力感はもう無ェ!!!

 アイツらの前では、頼もしいアニキでいなきゃならねェんだ!!!


「……ん? あのシルエットは……やけに早ェな。にしても、何であんなとこから来やがるんだ?」


 窓の外から見慣れたシルエットがコッチに向ってくるのが見えて、おれは涙を拭って、頬を思い切り叩いて気合を入れた。

 多分、おれを助ける為に、自分で”ナンデモ散弾砲(ショットキャノン)”の弾になって、ココまで飛んできてんだろう。

 全く……ムチャしやがるぜ……タマゴンは窓に向って回転しながら飛んできて、そのまま部屋の中に飛び込んで…………ん?


「麦わらかァ!!!……何だお前か。外からチラッと人影が見えたから来て見れば。チャパパパパ!!! ただの「”アルティメットハンマー”!!!」ゲボーーーー!!!?……」

「てめェかよ!!! 返せよ!!! おれの感動を!!!」


 飛び込んできたのは、タマゴンに似ちゃあいたが、CP9の構成員だった。確かフクロウとかいうヤツだったな。


「ったく……そういや鍵がどうとか言ってやがったな。ついでに届けてやるか………………”アルティメットハンマー”!!!!!「どべぼ!!!?……」持ってねェのかよ!!! 何なんだよお前は!!!」


 服を探ってみても鍵が見当たらなかったから、腹いせにもう一発殴ってやった。

『麦わら』とか叫んでやがったし、もう鍵を獲られた後だったんだろうな。


「お〜〜〜!!! フランキーも倒したんだな〜〜〜!!! やっぱサイボーグすげェ〜〜〜!!!」

「!!?……チョッパーか、てめェも無事だったんだな」


 突然後ろから声をかけられて振り向いたら、海列車で弟分にしてやったチョッパーがいた。

 大した怪我もなく鍵を握り締めてるとこを見るに、やっぱコイツも相当強ェみたいだな。


「ビームか!!? ビームで倒したのか!!?……って何だコイツか。ルフィにやられたのに、まだ動けたんだな」


 チョッパーは倒れたフクロウを興味深そうに観察していて、おれにはもう興味がねェみてェだ……

 ココでアイツらを待つつもりのおれは、取り合えず、送話器が落ちてる電伝虫を元に戻してやる事にしたんだが、その瞬間に電伝虫が着信を告げた。

 戻したばっかなのに着信が鳴るって事は、掛け続けてたって事か?


「おうっ、タマゴンか?」

『『アニキ!!! 直ぐに屋上に!!! 銀獅子さんのところに行ってください!!!』』


 電伝虫は、タマゴンの切羽詰った表情まで伝えてくる……何かあったんだな?


「てめェらはどうすんだ?」

『『銀獅子さんが、『直ぐに逃げろ』って言うんですよ!!! アニキの事は任せろって!!! もうおれ達はどうしたらイイのか……』』


 スーパーな占い師が、直ぐに逃げろって言ったって事は……アイツらがやべェって事か!!!?


「てめェらは、その指示に従え!!! おれの事はイイから逃げろ!!!」

『『でも!!! 「イイから早く行け!!!」…………わかりました……アニキ、W7で会いましょう!!!』』


 コレでイイんだ。アイツらは、ココまで助けに来てくれた。おれにとっちゃ、それだけで十分だ……やべェ、また泣きそうだ。


「フランキーもタクミのとこに行くのか? タクミは屋上に居ると思うから、一緒に行くか?」

「おぅ……行くか」


 おれの返事を確認して、チョッパーは、それが当然の流れだといわんばかりに、自然におれの肩に飛び乗った……??


「フランキー・ロボ……発進!!!」

「…………リョ・ウ・カ・イ・ロ・ボ」


「うおおおおお!!!! ロボ語だ!!! ロボ語を喋ったぞーーー!!!」


 取り合えずおふざけにノッてやったら、チョッパーは大喜びだった。

 泣くのがアホらしくなったおれは、なるべくロボっぽい動きで、屋上へと歩き出す。

 …………やっぱこの一味に入るのもおもしれェかもしれないな……
 
 
 


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後書き


 どうも、作者の羽毛蛇です。

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