”悪ガキの贈り物”
〜Side タクミ〜
「ねぇタクミ、そろそろ昼食にしない?」
「そうだな、昨日の宴会で脂っこいモノばっか食ったから、今日は軽めのモノにするか?」
ロビンと談笑しながらW7を歩く俺は、昨日の激闘なんか忘れてこの街を楽しんでいた。
日程がずれていたハズなのに結局襲ってきたアクアラグナの猛威を受けてなお、街は活気に満ちている。
まぁ、街中での大規模な戦闘がなかった分、アラバスタの復興よりは簡単だろうな。
昨日の宴会では青キジがロビンに接触してくる事も考えて、終始気を張っていたんだが、結局ヤツは現れなかった。
無警戒に訪問してきたら不意打ちで仕留めてやろうかと思っていたのに、まだこれからもヤツの事は気に掛ける必要がありそうだな。
「おれは何か甘いモノが食べたいぞ!!」
「昨日あれだけ食ったのに甘いモノなんか食ったら太るぞ? まぁ丸いチョッパーもかわいいかもしれんが」
俺とロビンのひと時を邪魔する事になっていても、チョッパーなら別にイイ。ていうか邪魔にはなっていないし。
そう……問題はコイツだけだ。
「で、アンタはいつまで俺たちについてくるんだ? ロボンキー?」
「誰がロボンキーだ!! 俺はフランキーだって言ってんだろ!!」
「ちゃんとロボ語を喋んなきゃダメだろ!!」
「フフ、チョッパーはすっかりロボンキーがお気に入りね♪」
フランキーめ!! 俺とロビンのデートを邪魔しやがって!! まずコイツはこの図体からして邪魔なんだよ!!
「お前はウチの船長から造船の依頼を受けてるだろうが!! こんなトコでフラフラしてないで働け!!」
「お前なァ、何度目だよこのやり取りは。材料の宝樹アダムがまだ届いてねェんだから、作りたくても作れねェって説明しただろ? 図面はもう出来てんだから、おれは今やることねェんだよ」
「この!! ヘリクツを言いやがって!! 図面なら見たけどな!! あの船を作るだけなら、予備の木材代金含めて二億ベリーもありゃ十分のハズだ!! 依頼料を含むにしても十億ベリーは取り過ぎなんじゃないか!!?」
「うっ!!? それは……」
「あら、ホントなの? アナタってホント知識の幅が広いのね」
「タクミはスゲェな!! 船の事もわかるのか!!」
ふんっ、ただの原作知識なんだが今のは中々のダメージをコイツに与えられたみたいだな。
ここを切り口にさっさと追い払ってしまおう。
「まぁ俺にとっては、確実に腐らせることになる金がちょっと多めに減るくらいの事はなんでもないが、ナミにこの事が知れたら……」
「死ぬわね。間違いなく。原型を留めないくらいにグチャグチャにされるわよ?」
「やっぱアイツは怖ェのか!!? そうだよな、宴会でちぃと触っただけで体の芯に響くような拳を貰ったからな……」
「ナミを騙したのか!!? お前命知らずだな!! ナミとビビには逆らっちゃいけないんだぞ? この一味の常識だ!!」
このロボ、目に見えてうろたえてやがる!! なんて愉快痛快なんだ!! 俺たちの邪魔をした報いをホントに受けさせてやろうか!!
「今ココをされば見逃してやってもイイんだけどなぁ……どうする?」
「いや、あの金額にはちゃんとした理由があってだな、サプライズってヤツで今は言えねェんだ。それに、お前らに同行してんのはチョッパーにねだられたからで」
「なんでフランキーを邪魔者扱いするんだ? こんなにオモシロい乗り物なのに」
「チョッパー、大人を乗り物扱いしちゃダメよ。それに彼は人間よ? ギリギリで」
チョッパー!! ココで俺の前に立ち塞がるというのか!!? お前は俺の味方じゃなかったのか!!?
「チョッパー、ロボ語はこの歳でやるには抵抗があるから無理だけどな、肩車なら俺がしてやるぞ? だからそのヘンタイから今すぐ離れるんだ。バカになるぞ?」
「この銀髪、どうしてそこまでおれが嫌いなんだ?」
「フフ、嫉妬よ、嫉妬。最近私にもわかるようになってきたわ♪」
「えー、タクミよりコッチのほうがデカくて見晴らしイイのに」
肩車はお父さんのポジションなんだよ!!! 俺より目立つこのロボがチョッパー乗せてロビンの近くを歩いてたら……ムカつくだろうが!!!
「要はソイツよりデカくなればイイわけだな?…………コレならどうだ!!!」
全力の人獣形態へと変化した俺はフランキーを軽々と見下ろしてやったんだが、周囲が騒がしいな。
「アナタ、それってちゃんと制御できてるの? 街のみんなが怯えているしヤメたら?」
「わ、わーい。やっほ〜〜ぃ。おれタクミに乗るよ。だからそれはヤメてくれ。な?」
「おれは誓ってニコ・ロビンに手出しをしたりはしねェ!!! だからそれはヤメてくれ!!!」
「……みんなして何なんだよ? 俺が悪いみたいな空気にしやが「「ぎゃーーーーーーーーーーー!!!! 化物ーーーーーーーーー!!!!」」って、お前らか」
喧騒の中から一際大きな叫び声を聞いて振り向くと、昨日の悪ガキ二人が腰を抜かして倒れていた。
「誰が化物だって? ウチの大事な息子の事を言ってんのか? あ?」
「タ、タクミさん冗談キツイですよーーー……ノリです!! あそこは叫ぶとこでしょ!!? 誰も本気で化物なんて思ってないっす!!!」
「む、息子!!? あの小さな狸が子供なんですか!!?」
「ホイケルバカ野郎!!! ありゃ狸じゃねェよ!!! 鹿だ!!! 角があんだろうが!!! 失礼な事抜かしやがって!!! あ、コイツの事は適当にシバきあげてくれてイイんで、おれは今日はこのへんで!!」
「マイケル!!? おれを売るつもりかよ!!?……マジで逃げやがった……あ、そうだ!!! 手配書!!! おれからはお詫びに新しい手配書をあげますよ!! いつか二人で狩ってやろうと思ってたんですけど、タクミさんにお譲りします!! 失礼しましたーーー!!!」
マイケルとホイケル?は嵐の様に去っていった……なんだったんだアイツらは?
「海賊に手配書なんか渡されてもどうしようもないわよね。賞金稼ぎかなにかと勘違いされてるんじゃないの?」
「まぁせっかくだからおれがもらっておくか。どれどれ……ほぉ、こりゃまた……大物だな」
投げ捨てられた手配書をロビンが拾い上げ、フランキーに手渡す。
もうその光景すらムカつくんだが、そんな俺のイラつきはロビンの次の一言で消えてしまった。
「……アナタに因縁のある人が多いわね。コレも前に話してた人でしょ?」
「前に? ロビンが仲間になる前にそんな大物と争った記憶は……は?」
ロビンに手渡されたのは一枚の手配書「”百計のクロ”懸賞金 1億6000万ベリー」…………は?
「いやいや何だコレ!!? アイツあの状況からどうやって逃げ出したんだよ!!? なんか記事になるような事やらかしたか!!? この金額はどう考えても”偉大なる航路”に入ってきてるって事だよな!!?」
「想像以上に驚いてるわね。コレは?」
……クロの手配書に驚いてる場合じゃなかったみたいだ「”ビックナイフ・サーキース”懸賞金 2億 1000万ベリー」……上がりすぎだよバカ野郎。”死の外科医”より上じゃねぇか。
普通は船長以下が手配増額されるときにはそれにともなう一味としての危険度増加を考慮されて船長の懸賞金も上がるって事は最後の一枚は……あぁ、また名前を忘れたけどたぶんあのバネ男の分か。
「コレは見ない方がイイかもしれないわね」
「そうも言ってられんだろ。どうせ俺たちも近日中に手配額が更新されるんだ。何を見ても驚きは……」
……「”魔術師”バジル・ホーキンス 懸賞金 3億3000万ベリー」…………あばばばばばばばばばばばばばば…………
「タクミが泡吹いて気絶した!!?」
「やっぱりお兄さんの手配書は刺激が強すぎたかしら?」
「な!!? コイツ、あの”魔術師”の弟だったのか!!!?」
……ロビンの件が片付いたら、兄貴に会いにいくつもりだったけど……また今度にしよう。
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〜後書き〜
どうも、羽毛蛇です。
今回は前サイトからの中毒読者「ネコスケ・バルサミコス・シ・モンド様」からのリクエストにお応えしてみました。短いですがコレで勘弁してください。
他の方も何かリクエストあったらコメント欄にどうぞ。本編遅れて構わないのなら出来る限り応えます。番外編をやるほど余裕はないので……って忘れてた!! 以前募集した番外編を、そのネタをやる時期が悪いって事で放置していたのでそれやります。たしか「もしもナミ√に進んでいたら?」ってヤツと「ヤンデレロビンが見てみたい」だったと思います。ありえない設定なので完全なIFストーリーとして読んでください。データがどこいったか不明なので二つの設定を混ぜて一つに作り直しますね。
ネタなので悩む事もないと思いますし、急いで書いて明日には投稿します。ではでは。