小説『百獣の王』
作者:羽毛蛇()

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”舞台裏”



〜Side タクミ〜



「はぁ〜」


 ようやくルフィを送り出すことに成功した。本当に疲れた。そりゃあ溜め息もでる。ルフィはなんであんなにごねてたんだ? 俺がいない間の飯の心配だろうか?

 食材は大量に積んだみたいだし、ナミがおいしい家庭料理を作ってくれるハズだから問題無いと思うんだが……あぁ、有料らしいからそのせいかもな。


 昨日ナミと別れた俺は、すっかり忘れていたクロたちの治療をおこなって、そのまま海岸沿いの洞窟に放り込んでおいた。

 ブチは結構危ない状態だったが、持ち前のタフネスで乗り切るだろう。万が一死んでしまったとしても、生かして引き渡せっていわれたのはクロだけだし、特に問題無いハズだ。

 その後は、俺が暴れたせいで嘘にすることがより困難になった海岸の戦場跡を修復(血が付いた土を掘り返して埋めたりとか)する作業を一人で始めた。

 原作でこの役目を担った誰かがいるだろうから、そのうち手伝いが来るんだろうと思っていたんだが、結果としては、終わって昼飯のバーベキューを用意してる時にウソップが来た。取り掛かるタイミングが早かったみたいだな。

 ウソップは原作にも出ていたあの特大リュックサックを買った後、小舟をここまで陸送で運んできたらしい、腹も減ってるだろうと思ってバーベキューに誘い、一緒に食事をした。

 ウソップは俺にさんざんいじり倒された後に海岸のお礼を言って去って行った。


 ウソップが帰ってからは、この島の生物調査をしてみたんだけど、殆どが家畜かペットで、野生動物は小動物しかいなかったな。

「剃刀」を使って結構見て回ったけど、この日の新生物発見は十六種類、そのうち珍獣島からの記録しかないからこの世界では新生物という定義に入る元の世界にもいたものが十四種類、結果厳密には二種類しか発見できなかった。

 高速回転する毒針ヤマアラシはちょっと食べれそうにもなかったから身体データを取りスケッチをして開放の後追跡、巣を特定してみると繁殖のシステムが卵だったのには驚いた。育児をしている固体が発見できず、回転している小さな子供を発見したから、カモノハシみたいな卵生哺乳類では無いようだ。

 草原をアグレッシブに駆け回っていたコアラの群れはハーレムの形態を取っていたようだが、はぐれのオスの数がかなり多く、調査対象のハーレムのボスは、調査中の一時間の間にボス交代の決闘を三回も申し込まれていた。

 食べてみた結果はウソップ宅のトイレに駆け込むという残念な結果だ。ユーカリ由来では無いにしろ毒をもっていたのだろう。数時間ベットで仮眠を取り調査再開。


 新しい発見も無くそろそろ出航の時間だろうとメリー号が停泊しているハズの北の海岸に向かうと、船の説明は終わっているようだがなにやらもめていたので、ナミを手招きして事情を聞いてみた。

 要はルフィが納得していなかったらしい。こうなれば強引に出航させてしまおうとナミに策を授けて、俺はブチが割った岩盤で即席のウソップ発射台を作り上げる。

 予定通り転がってきて、発射台から飛んでいったウソップを「剃刀」で起動補正しメリー号に乗せた。あの行動は誰にも見られていないハズだ。気分はト〇・クルーズ!!

 ウソップを追って船に乗ったルフィに間を置かず説得を続けるようにお願いしてゾロ投入。

 出航準備を整えていたナミによって、ルフィが気づかぬ間にメリー号は沖合いへと消えていった。



ミッション・コンプリート!!



 コレが俺の活動の記録。まぁ、コレだけ動き回れば疲れも貯まるって事で、今日は半壊してるハズのウソップ邸で昼寝でもしよう。

 明日はネズミが来るからな。



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 昨日はよく寝たなあ。昼寝のつもりが夜まで寝てしまったけど、お気に入りのシェリーを飲みまくってたら気がついたら朝だったしな。

 この島最後の生物調査は完全に空振りだ。途中で羽が生えたトカゲを見つけて超小型のドラゴンかと心躍ったのだが、よく見ると蝙蝠の羽を薄皮に縫い付けてあるだけだった。あの技術力からするとウソップの仕業だろう。

 ウソップ海賊団の面々で追いかけるドラゴンが現実味に乏しいからトカゲをデコレートしたんだろうけど、『ひどいことするな』俺は今、まだ見ぬロビンとシンクロした気がする。

 その後も目だった収穫は無く、ネズミとの約束に遅れないように早めに南の海岸へクロたちを樽に詰めて運んで行き、そこで酒盛りをしながら待つことにした。

 …………ネズミ大佐か。原作では小悪党といった描写しかなかったが、目立った功績もなく大佐なんて地位につけるとは思えない。

 腕っぷしが強い可能性はないだろうから、謀略で伸し上がった悪徳大佐ってとこだろう。

 俺は敵を過小評価はしない。さて、いったい素顔はどんな男なんだろうな。

 まだ見ぬ敵との邂逅を前に、俺は残り一本になったシェリーの栓を抜き、海を眺めて笑った。
 
 
 

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